記者の商売道具で何より欠かせないのはペンとノート。と言いたいところだが、最近は、取材先で話を聞きながら、ペンとノートの代わりにその場でパソコンのキーをたたいて打ち込んでいく若い記者も多いらしい▼駆け出し時代にはパソコンもなく、敏捷(びんしょう)性も衰えた中年記者にはとてもまねできない技。感嘆するほかない。もっともノートだって必ずしもきれいに取れるわけではない。いざ記事を書く段になってノートをめくったら、あまりの悪筆に自分でも判読不能という誠に情けない仕儀に立ち至ることも▼文芸春秋と旺文社が先日、「ノートを借りてみたい東大卒の小説家は?」との共同で行ったアンケートの結果を発表した。男女1014人の回答のうちダントツの276票を集めたのは夏目漱石▼作品の人気の影響も大きいようだが、「分かりやすく要点が書いてありそう」との意見が多かったという。東大合格生のノートが本になるくらいだから、きれいに整理されたノートに憧れる人は多いのだろう▼ノートは汚くても書いた記事で勝負。中年記者としては、とりあえずそう負け惜しみを言っておく。
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