木場駅の改良イメージ |
全国の鉄道の中でも混雑率がワーストクラスの東京メトロ東西線。特に開発事業が活発な臨海部の駅では利用者が急増し、ラッシュ時の混雑緩和が緊急課題になっている。東西線の輸送改善の一環で東京メトロは、木場駅で供用中のシールドトンネルの駅部を解体してホームの拡幅などを行う「世界初の工事」を計画。施工者の鹿島・鉄建・錢高組JVなどと施工計画の詳細を詰めている。今夏から道路上の支障物を撤去し、15年度中に駅上部の掘削作業を開始する見通しだ。
大規模マンションなどの開発事業が相次ぐ臨海部を走る東西線の混雑率は、千葉側から東京都心方面に向かう木場駅~門前仲町駅間で199%に達する。ここ数年は同駅間が東京メトロ線内で最も高い混雑率となり、全国の他社路線を見てもJR山手線上野駅~御徒町駅間(202%)、JR京浜東北線の同区間(200%)に次ぐ水準。3月に開業したJR上野東京ラインによって同区間の混雑緩和が進み、15年度は東西線の混雑率が全国で最悪になるとの見方も出ている。
2020年東京五輪までに、地下鉄の機能・サービス向上に重点的に取り組む東京メトロの「魅力発信プロジェクト」(14~20年度)では、約4000億円を投じて各種施策を展開。東西線の安定輸送には約530億円を投じ、駅舎の改良事業や折り返し線の整備を推進する。一連の施策により、東京メトロでは木場駅~門前仲町駅間の混雑率を180%以下に抑えたいとしている。
旧営団地下鉄時代に建設された最初の円形シールドトンネルが東西線の大手町駅~東陽町駅の延伸区間(1967年開業)。
沿線の木場駅(江東区木場5丁目)の開業当時の乗降人員は1日平均約1万7000人だったが、近年は00年度が5万4000人、04年度が6万4000人、13年度が7万5000人と右肩上がりで増えている。駅周辺の開発で人口が急増しているからだ。
木場駅改良工事を進める森谷課長㊧と奥村現場代理人 |
混雑解消と利便性向上を目的に行う今回の改良工事では、ホームを拡幅し、その直上に2層のコンコースを新設する。供用中のシールドトンネルを解体しながら駅構造物を再構築する工事は世界でも初めてとされ、総工費に200億円を見込む。完成後は約8万人の乗降人員に対応できる駅になる。
木場駅改良工事の施工範囲は、既存駅の西口が位置する永代通りと三ツ目通りの交差点付近から、永代通り沿いを反対の東口寄りに進んだ約70メートルの区間。工事では、既存駅の外側に鋼製連壁(施工数量3470平方メートル)を施工した後、ホーム上部とトンネル周囲の掘削作業(3万2034立方メートル)を行う。地盤改良や中間杭(748メートル)などにより既設トンネルへの影響を抑制。新設するコンコースの躯体構築を先行して進めることで仮設工を軽減し、工期とコストの縮減につなげる。
施工を担当する鹿島JVの奥村一正現場代理人は「掘削時の地圧の変化に伴うトンネルの挙動を事前に解析するが、仮定の域は抜けない。変位を常時計測しながら施工に反映させ、安全第一で作業を進める」と話す。
外壁のセグメントを撤去し拡幅するホーム西口側 |
東京メトロは、東西線の輸送改善策として、木場駅周辺の各駅でホームの拡幅・延伸や出入り口の新設、エレベーターの増設などを実施している。南砂町駅でも大規模な駅舎改良工事が進み、ホーム1面と線路1線を新設する計画。15年度からは九段下駅~飯田橋駅間に折り返し運転用の迂回(うかい)路の新設工事に着手する。
東西線は輸送人員の増加傾向が続き、従来の対策では混雑緩和や列車の遅延解消が思うように進んでいないのが実情。東京メトロは大規模なハード対策により、混雑率ワースト常連の汚名を返上したい考えだ。
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