チャンギ空港複合施設(シンガポール)の完成イメージ |
海外事業の強化に力を注ぐゼネコン各社。国内市場も足元は堅調に推移しているものの、2020年東京五輪後の事業環境を見据え、海外事業を成長戦略の柱の一つに据える企業は多い。経済発展に伴い建設需要が旺盛なアジア各国の拠点を強化し、受注活動に本腰を入れる社が増えており、受注実績も着実に伸び始めている。
◇主戦場はシンガポール◇
14年度はシンガポールで大型案件の受注が相次いだ。清水建設は、現地企業とのJVで同国厚生省が発注した「チャンギ総合病院メディカルセンター新築工事」を国際入札で受注した。同国での施工実績や日本からの技術支援体制などが評価された。東南アジアのハブ空港として機能しているチャンギ国際空港では拡張や新設計画が進んでおり、日本企業が多くの工事を受注した。竹中工務店は現在、第4ターミナルを建設中で、3月には第1ターミナルの拡張工事を受注。大林組は昨年11月、第1ターミナル隣接地に建設する複合商業施設と第1ターミナル拡張工事を現地企業とのJVで受注し、現在工事を進めている。
鹿島も、現地法人のカジマ・オーバーシーズ・アジア(KOA)が、14年6月に「シンガポール経営大学法学部棟新築工事」、15年2月に「国立伝染病センター新築工事」と連続受注に成功した。土木案件では、地下鉄トムソン線建設プロジェクトを、五洋建設と西松建設がそれぞれ現地企業とのJVで受注した。五洋建設は中心市街地に建設されるオーチャード駅舎とトンネル2本(延長各約860メートル)を担当する。西松建設は、トムソン線の最南端に位置するガーデンズバイザベイ駅の駅舎とトンネル2本(延長各700メートル)などを新設する。
五洋建設は昨年9月にセンカン総合病院の新築工事も単独受注した。RC造地下2階地上10階建て延べ約28万8000平方メートルの規模で1400床を備える。
五洋建設が施工するシンガポール大型病院の完成予想 |
◇インドネシア、ベトナムでも◇
アジア地域では、シンガポールに加えインドネシアやベトナムなどでも受注が続いた。昨年10月には、清水建設がインドネシアで最高層となる261・5メートルの超高層ビルの建設工事を現地企業とのJVで受注した。竹中工務店の現地法人インドネシア竹中は、1月に香港の大手不動産会社がインドネシアで計画する超高層ビルの新築工事を現地建設会社とのJVで受注した。CFT・S・RC造地下6階地上40階建て延べ約15万平方メートルの規模で高さ209メートル。
ベトナムでは、同国初の地下鉄工事を清水建設・前田建設JVが受注した。ホーチミン市人民委員会都市鉄道管理機構が発注した「ホーチミン地下鉄1号線地下工区(延長1・74キロ)」で、軌道トンネルの構築のほか2カ所の駅舎の建設も担当する。東亜建設工業は1月に、ベトナム政府から「ラックフェン港防波堤・防砂堤建設工事(パッケージ10)」を約120億円で受注した。同港の建設は日本、ベトナム両国による初のPPPプロジェクトとして進められており、同社が施工を担当するのは今回で2件目となる。
このほか香港では、五洋建設が地下鉄の海底トンネル区間の建設工事をJVで受注した。受注金額は約663億円で、うち同社分は約338億円。フィリピンでは、東洋建設が首都マニラの都心を流れる河川の改修工事2件を受注した。1月にベトナム・ノイバイ国際空港第2ターミナルを完成させた大成建設。現在、ミャンマーで日本政府の無償資金協力案件となる気象観測装置を整備中で、マレーシアでは石炭火力発電所建設に伴う土木工事を受注している。アジア各国に目を向け、受注と工事の実績を着実に重ねている。
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