2016年3月28日月曜日

【駆け出しのころ】東鉄工業常務執行役員・須賀克巳氏

 ◇緻密な計画と思い切った実行を◇

 大学3年の夏、就業体験でお世話になったのが、当社高崎支店の現場でした。いろいろと親切にしてもらい、現場が和気あいあいとしていてとても居心地が良かったんです。就業体験の期間が終わってからも遊びに行きましたし、できればこの会社に入りたいと思っていました。

 そうして入社でき、現場デビューは横浜の保土ケ谷駅改良工事でした。横須賀線と東海道線を別線にすることを目的にした工事です。先輩に付いていくだけでなく、職人さんと一緒に仕事しながらいろいろなことを覚えていきました。最初は職人さんから何を言われているかが分からず、よく手帳に書き留めては先輩に聞いていたものです。それと土木というのは昼の作業で、太陽の下で汗をかきながら仕事をするというイメージでしたが、夜間作業の多さには正直驚きました。

 日中もホームの点検や測量をやっていたのですが、最初のころはホーム上で若い女性の前に座って仕事するのが非常に恥ずかしかったのを思い出します。私も若かったので意識していたのでしょうが、2、3カ月すると何も気にならなくなっていました。この現場では、今で言うPDCAをしっかりと身に付けることができました。

 次に担当したのは千葉駅の改良工事です。最初の現場は仮設工事が多く、東北新幹線の現場などで構造物を造っている同期の話を聞くたびにうらやましく感じていました。次はそういう現場に行きたいと言っていたので、それを聞いていた上司が千葉駅改良工事の担当となるよう手配してくれたのだと思います。

 ここでは駅部の高架化工事を担当でき、同僚と測量を間違えないよう毎日必死でした。竣工検査の日は雪で、検査が終わってから雪の上を皆ではしゃぎ回った思い出があります。それほどうれしく、達成感もありました。

 これまでの現場経験を振り返ると、以前の現場は個人の裁量でそれぞれ仕事を進めていく傾向が強かったと思います。今はチーム力や組織力を求められる時代です。従って、すべての関係者間のコミュニケーションを良くし、個々の現場が最適な状態で工事に入っていく環境づくりが大切です。土木は自然が相手の仕事でもあり、個人よりもチームとしての総合力を生かした方が、想定外のことやさまざまな変化に迅速に対応できます。後輩たちにはぜひこうした環境づくりをしてほしいと考えます。

 また現場は事前にいろんな角度から緻密に計画を立てることも必要です。そして施工する時はそれを信じて思い切って実行し、施工段階の適度な緊張を楽しむとともに、完成時の達成感と喜びをぜひ味わってほしいと思います。

学生時代の就業体験がきっかけで入社を決めた
(新入社員当時に現場事務所で)
(すが・かつみ)1977年東洋大工学部土木科卒、東鉄工業入社。土木本部土木部長、東鉄メンテナンス工事社長、東鉄工業執行役員千葉支店長、高崎支店長などを経て、2103年常務執行役員東京土木支店御茶ノ水防災JV工事所統括所長(現職)。群馬県出身、62歳。

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