女性技術者の関連イベントは急増中… |
◇女性活躍に新たな意志を◇
「女性活躍」という言葉が建設業界でもあふれ返っているが、こうした現象も女性を特別視する行動の表れの一つ-。
建設関連の団体に勤める江本祐子さん(仮名)は、日々の仕事を通じてゼネコンや専門工事業などで働く女性たちと接する機会が多い。職場で出会った人たちとは定期的に食事会などを開いて交流を深め、仕事やプライベートなど、建設業界で働く女性たちの本音を聞いてきた。
国や団体・企業などが取り組む女性の活躍の場を広げるためのキャンペーンに対し、当事者の女性側には賛否両論ある。それぞれの職場でも対応や事情は異なる。
第三者的な立場の江本さんは「団体・企業が認めた特定の活動や制度だけがもてはやされ、職場での日常的な行動にまで意識が行き届いていないのが実情。声なき声を拾い上げながら、無理強いされることなく、女性の働く環境を改善する動きが広がっていけばいいのではないか」と考える。
建設産業の振興・発展に向けた取り組みのうち、女性活躍の推進をうたったイベントの開催件数はここ数年で急増。現場見学会からセミナー、シンポジウムなど、建設業で働く女性への関心は一気に高まっている。
一方で、こうした過熱気味の反応を素直に受け止められない女性たちも多い。「女性というだけでよく分からないままスポットを浴び、周囲の目を引き付ける客寄せパンダ的な役割と感じてしまう人もいる。一連のイベントに違和感を覚えるといった意見も目立つ」。団体や企業の枠に縛られず、個々の女性たちがもっと自由に参加できる集まりがあってもいいと感じている。
職場を通じて知り合った建設業界で働く女性の技術者や事務職の気の合う仲間との食事会でも、みんなで何かできないかとよく話題になる。しかし、イベント開催などに乗り気な人ばかりではない。女性の地位向上や職場環境の改善を前面に出し、会の規約を作り、会費を集めて組織的に活動することに拒否反応を示す人も。異なる価値観を押し付け合うことになれば、せっかく広がった仲間の輪も壊れてしまう。
いくつもある個々の意思を十把ひとからげで集約するには限界がある。押し付け合わず、緩い雰囲気の集まりだからこそ、気兼ねなく参加してくれる人もいる。それでも何か事をなすには、大きな意志に寄り添うことも必要だ。うまくベクトルを合わせられれば、それだけ発信力も高まる。
「会に集まる女性一人一人の仕事へのモチベーションは高く、熱い気持ちを持っている仲間だからこそ、それぞれの思いを一つの形にまとめていければ」と考える。
技術者など建設業をなりわいとする本職の人たちと違い、団体職員の江本さんは建設業に側面から関わる立場にある。それでも建設産業をより良くしたいという思いは、誰よりも強く持っているつもりだ。
「いろんな立場の人たちの声を聞いてきた自分だからこそ、自分でなければできないことがあるはず」。そんな思いを抱きつつ、女性活躍推進の流れに新たな意志が加わることを願っている。
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