被災地の復興が着実に進展する中、新たなステージとなる復興・創生期間に向けて石井啓一国土交通相は、引き続き「実感できる復興」に取り組みながら、東北の未来を見据えた「観光による復興」に意欲を示す。これまでの5年間に及ぶ足取りの中で建設業が復旧・復興に果たしてきた役割にも言及。全国で多発する自然災害に対応して、安心・安全を担う建設業の役割が「ますます重要になってきている」と指摘する。
--被災地の現状をどう見る。
「就任以来、機会あるごとに被災地を訪れているが、復興への確かな足取りが見られる。基幹的なインフラの復旧・復興は着実に進んだ。常磐自動車道が昨年3月1日に全線開通し、地域で大変喜ばれている。復興のシンボルである復興道路・復興支援道路は、延長584キロの7割で開通済みまたは開通の見通しが公表された。復興の基盤となる道路の整備は目に見えて進んだ。鉄道も、JR石巻線とJR仙石線が昨年、全線開通し、JR常磐線も全線復旧の方針が決定した。遅れが心配されていた住宅再建やまちづくりも、県や市町村の計画に沿って着実に進んでいる。この春には災害公営住宅が約1万7000戸、高台移転が約9000戸完成する見込みだ」
「公共工事設計労務単価を機動的に見直し、施工実態を踏まえた適切な積算などきめ細かな対策に取り組んできた。これにより、入札不調も改善され、復興事業が加速した。不調が発生しても再入札でほぼ受注できている」
--4月に復興・創生期間がスタートする。
「被災地では依然として17万人あまりの避難者が不自由な生活を強いられている。新たなステージとなる復興・創生期間の名前にふさわしい実感できる復興を目指す。そのために国土交通省は特に次の3点に力を入れる。1点目が、基幹的インフラの復旧・復興を確実に仕上げることだ。復興支援道路は、18年度に釜石から東北道の花巻インターチェンジまでが接続する。これにより、19年のラグビーワールドカップに間に合うようにする。福島の復興支援道路である相馬福島道路は、全体の45キロのうち、福島市の東側の霊山から相馬までの34キロが18年度に開通する。縦ラインの復興道路の三陸沿岸道路では、19年度に仙台から釜石までの約9割が開通する見込みだ。地域の足となるJR常磐線も、全線復旧に向けて取り組む」
「2点目は災害公営住宅。来年春までに計画の85%に当たる2万5000戸、高台移転も7割で宅地が完成する見込みだ。住まいの確保は何より重要で、地域の実情に応じてきめ細やかに支援していく。3点目は、いまだに残る風評被害を払しょくし、観光による復興を加速させたい。昨年1年間で訪日外国人旅行者数は1974万人と2000万人の目標に手が届くところまで来た。ただ、東北地域だけ見ると非常に厳しい。大震災前の状況に至っていない地域もある。昨年6月に観光庁がいわゆるゴールデンルートの東京、富士山、京都、大阪を巡るルートだけでなく、地方にも誘客しようと、全国で七つの広域観光周遊ルートを認定した。東北もその一つだ。具体的な周遊ルート形成に向けた支援や東北の魅力を海外に発信する取り組みなど、地域の観光資源を生かした振興を図る。これら3点について、復興の加速化を第一に機動的に対応するよう職員に指示した。現場の声を聞き、実感できる復興に向け、関係省庁とも連携しながら、国土交通省の総力を挙げて取り組む」
--5年間に建設業が果たした役割をどう捉えている。
「建設業は社会資本整備を支える不可欠な存在で、災害時に最前線で安全・安心を確保する守り手として地域に無くてはならない。東日本大震災では、建設業界の方々は自ら被災していたにもかかわらず、発災直後から避難所の緊急の耐震診断や道路啓開作業に当たっていただいた。これが復旧の第一歩となり、避難や支援の体制の基礎が整った。その後もしっかり役割を果たしていただき、基幹インフラの復旧・復興や住宅再建、復興まちづくりが進展し、復興・創生期間という新しいステージに進むこととなった。多くの被災地で、復興事業での建設業の活躍について感謝の言葉を聞く。次の5年間もしっかり役割を担ってくれることを期待したい」
--各地で自然災害が多発している。防災・減災の担い手となる建設業に何を期待する。
「昨年の関東・東北豪雨では、鬼怒川、渋井川が決壊して大きな被害が生じ、一昨年の8月豪雨でも広島で土砂災害が発生するなど、各地で大きな被害をもたらしている。雨の降り方が局地化、集中化し、被害が激甚化している。そういう状況の下で、安全・安心を担う建設業の役割はますます重要になってきている」
「建設業は、都市再生や地方創生など、日本の活力、未来を切り開く上で、経済成長をけん引する大きな役割も担っている。長年にわたって公共投資が削減され、苦境に置かれてきたが、第2次安倍政権発足以降、建設投資の回復により、若年入職者も堅調に増加するなど、明るさと活気を取り戻しつつある。2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会への対応、ストック効果を最大化するインフラ整備、国交省が重点を置く老朽化対策、耐震化対策、戦略的メンテナンスでも、多くの使命が控えている」
「建設業が果たす役割の重要性が再認識され、取り巻く環境も少しずつ好転している。震災を契機に建設業に対するイメージが相当変わったように感じる。将来を見据え、産業としての力を高めるチャンスだ。この好機をしっかり捉え、国民生活の安全・安心と経済活動の基礎を支える使命感と誇りを持って働くことができる産業となるよう取り組むことを期待している」。
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