2016年3月31日木曜日

【回転窓】東北の思い出の一杯

とてもおいしいコーヒーに出会った。福島県南相馬市小高区で地元商工会が開いている「ひまわりカフェ」の一杯▼同地区では福島第1原発事故の影響で避難指示が続く。帰還を準備する人たちの交流の場を設けようと喫茶コーナーを始めたという。5年前の春はここに入ることすらできなかった▼すぐ近くに知人の実家がある。知人は当時、父親から「今は帰ってくるな」と言われていた。たまたま同市での取材が入り、父親の様子を見てきてほしいと頼まれた。「故郷を失わせてしまって娘に本当に申し訳ない」。被害者であるはずの彼から聞いたその言葉を今も忘れられない▼同地区では除染や復旧作業が進み、避難指示解除へ最終段階に入った。建設産業の仕事を経たからこそ今がある。東日本大震災の集中復興期間はきょうで終了。16年度から次のステージに移る▼2年ほど東北で取材をさせていただいた。被災地には依然多くの課題がある。だが、困難の中で奮闘する多くの方々の力も感じた。4月からは東京に戻って新たな取材が始まるが、10年後も20年後も、その姿を見つめ、描いていこうと思う。

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