熊本地震の発生から5年を迎えた。熊本県と県内市町村の公共土木施設の災害復旧工事はほぼ完了。大規模斜面崩壊により被災した南阿蘇村の道路や鉄道は開通し、阿蘇地域へのアクセスは回復・強化された。熊本城は天守閣の復旧工事が終わり、より強靱で魅力ある施設に生まれ変わった。「創造的復興」の実現に向け、将来の発展を見据えたプロジェクトも動きだしている。
県によると熊本地震とその後の梅雨前線豪雨などで被災した公共土木施設の16年発生災害復旧事業の県・市町村発注工事は2月末現在で4897件のうち4893件(99・9%)が契約を終え、4837件(98・8%)が完了した。
被災した市町の庁舎は20年度までにすべて建て替えに向けた工事が始まり、県は新たな防災拠点「(仮称)県央広域本部・防災センター合築庁舎」の整備に1月着工した。復興のシンボルである熊本城は天守閣の復旧工事が完了。耐震性能強化と併せてエレベーターを新設し、展示内容も熊本地震の被災を加えて刷新された。26日から一般公開される。
阿蘇地域では南阿蘇村立野地区の斜面対策工事が完了し、JR豊肥本線が20年8月に全線運転を再開した。同10月には国道57号の現道部、災害復旧事業として現道北側で整備が進められていた「国道57号北側復旧ルート」が同時開通した。
架け替え工事が進められていた国道325号の新たな阿蘇大橋も3月に開通。九州を代表する観光地の一つである阿蘇地域へのアクセスルートの待望の復活に、蒲島郁夫熊本県知事は「観光や産業の復活・再生に大きな効果をもたらす」と期待する。
同村では崩落した阿蘇大橋を震災遺構として保存する工事が21年度に計画されるなど、被災の記憶を伝承する取り組みも始まっている。大きな被害を受けた益城町では県道熊本高森線の4車線化や復興土地区画整理事業が順調に進む。町内では20年12月から1月にかけて東海大学の新キャンパス、民営化された阿蘇くまもと空港の新旅客ターミナルビル、菓子メーカーの新工場などが相次いで着工した。
県は空港周辺地域に大学の学術機関や企業の研究開発部門などを集積し新産業創出拠点を形成するプロジェクトを始動。コロナ禍の東京一極集中から地方分散への転換を好機と捉え、米国のシリコンバレーの熊本版を目指す。
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