プロ野球の2021シーズンが開幕し、西武ライオンズ(埼玉県所沢市、居郷肇社長)は改修工事が完了した新たな「メットライフドーム」(埼玉県所沢市)に観客を迎え入れた。2018年のチーム誕生40周年を記念し、周辺施設を含めた大幅なリニューアルを実施。工事期間約3年、総工費約180億円を投じた。
改修のコンセプトは「チームと育成の強化」と「ボールパーク化」。練習環境の改善を目的に、12球団最大規模となる新たな室内練習場を建設した。ドーム外周には大型遊戯施設などを設置し、来場客が野球観戦以外も楽しめる場所を目指した。改修の設計は鹿島、施工は鹿島・西武建設JVが手掛けた。
□臨場感を味わえる球場へ□
ドーム内では、球場中堅後方の大型ビジョン「Lビジョン」を大幅にリニューアルした。新たなビジョンはパナソニック製で、従来の2倍の大きさとなる高さ13メートル、面積約600平方メートルの規模。試合中のライブ映像や選手の詳細な成績、試合を盛り上げるCG映像などを放映する。屋根には分散型スピーカーを77台設置した。外周や屋内施設にも増設し、スピーカーの設置台数は18年当時の約37倍となる223台となった。ドームのどこにいても聞き取りやすく、迫力を感じられる音響演出が可能になった。
観戦環境も改善した。開業以来芝生だった外野席には椅子席を設置。折り畳み時に前後幅250ミリとなる超薄型シートを採用し、立って応援しても、窮屈さを感じない前後スペースを確保した。内野スタンドの最前列には「ブルペンかぶりつきシート」を新たに設けた。計54席がブルペンに沿うように配置され、登板前の投手が投球練習する姿を間近に見ることができる。
チーム力の強化に向けて、選手に関連する施設も整備した。試合中に選手や監督らが控えるダッグアウトには空調設備を新たに設けた。屋根とスタンドの間に壁がない「半屋外型」構造のドームは、季節に応じた気温調整が課題になっており、少しでも快適な試合環境を提供する。ドームに隣接する室内練習場は約40年ぶりに更新した。内寸50メートル×50メートルの内野フィールドエリアを備え、12球団で最大規模の広さとなった。人工芝にはドームと同じものを採用しており、本番の試合と同環境で練習することが可能となっている。
□エリア全体の魅力を向上□
ドーム外周部分には、新たな球団オフィス棟やチームストアなどを建設した。チームストアは2階建て延べ約600平方メートルの規模。壁面に透過性LEDガラスを採用し、ドーム内の試合展開に応じたデジタル演出ができる。オフィス棟に隣接する約1000平方メートルの敷地には大型遊戯施設を整備。迷路やクライミング、ローラースライダーなどを備え、観戦以外にも子どもが楽しめる環境を整えた。
ドーム正面には、最寄りの西武鉄道狭山線・山口線・西武球場前駅から来場する観戦客を迎える新たなメインゲートを設置。1・3塁側に分散していた入場口をバックスクリーン側の1カ所に集約し、エリア全体の回遊性を高めた。
3月に開いた内覧会で、埼玉西武ライオンズの辻発彦監督は「野球を楽しめる素晴らしい場所だと思う。ぜひたくさんの人に足を運んでいただきたい」と期待を込める。「ドームの新たな歴史の幕開けとなるシーズン。日本一という大きな目標に向かって戦う」と意気込みを見せた。
「いろいろな視点で楽しんでもらえる施設になった」と話したのは西武ライオンズの後藤高志オーナー。西武グループは西武園ゆうえんちのリニューアルや所沢駅西口の大規模再開発など、所沢エリア全体の街づくりを進めている。「東京のベッドタウンから、生活・学び・仕事・遊びを担う『リビングタウン』へ変貌させたい」と語り、手綱を緩めずさまざまなプロジェクトを展開していく。
□各球団で球場整備活発化□
各球団は球場の整備に力を入れている。巨人が本拠地にしている東京ドームでは、2023年の開幕に向けて外野のメインビジョンの面積を約3・6倍にする拡張工事を計画している。工事は2期に分け、1期はビッグボードと呼ばれる外野大型看板と、下部にあるサブビジョンを一体化する。2期はスコアボードの演出強化や、デジタルネットワーク技術を駆使した情報発信の機能の向上を視野に入れる。
北海道日本ハムファイターズは23年3月の開業を目指し、新たな球場を建設している。新球場は延べ約10万平方メートル、収容人数3・5万人の規模を想定。総工費は約600億円。大林組・岩田地崎建設JVが施工している。敷地面積32ヘクタールのうち、球場の建築面積は5ヘクタール。JR北海道は新球場隣接地に新駅の建設を予定しており、駅開業を契機とした敷地内の街づくりも検討されている。
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