2021年4月21日水曜日

【中堅世代】それぞれの建設業・285

建コン各社で経験者を採用するケースも多い

 ◇自分の可能性を信じて◇

  人材不足に陥る建設関連業界で、専門知識を持った経験者を採用するケースは少なくない。大手建設コンサルタントで広報・投資家向け情報提供(IR)業務に従事する海崎響さん(仮名)もその一人。自分に合った仕事が何かを悩むうち、気付けばIT関係や金融機関など複数企業を渡り歩いてきた。転職の多い自分を迎え入れてくれた今の会社に貢献したい一心で仕事に励む。

 自然豊かな地方都市で生まれ育った。学生時代から化学が得意で、地元の大学で繊維工学を専攻した。就職氷河期の真っただ中にあった当時、大学院への進学も考えた。大学の恩師からIT関連企業でシステムエンジニア(SE)の仕事を紹介された。大学で学んだ知識が役に立つのかという迷いもあったが、「これも何かの縁だ」と割り切り、SEの世界に飛び込んだ。

 入社後は主に会計管理用ソフトウエアの開発に携わった。責任ある仕事を任されるようになったある時、大手証券会社が人材募集を行っているとの情報を目にした。これまでの経験を生かし、「関心のあった証券の仕事に携わりたい」と感じ転職を決意。技術営業がメインの部署に配属されたものの、実際に働いてみると「自分の肌に合わない」と思うように。

 証券や金融機関にばかり固執していたが、SE時代に培った予算管理やファイナンスの知識を他業界にも生かせるはずだ。漠然とした不安は日増しに強くなり転職が頭をよぎる。人材派遣会社に相談するうち、紹介されたのは建設コンサルという未知の領域だった。生活を支える社会インフラの役割を知れば知るほど、興味がわくようになった。自分の知識と経験が生かせると確信し、思い切って採用試験を受けた。

 「うちの職場には社会に貢献したいと思う社員が多い」。配属された広報・IR部の上司は笑顔でこう話していた。技術力と知的生産性が会社を支える建設コンサル。事務職は技術職に比べて「弱い立場」と捉えていた。上司の話を聞いたり、投資家に自社の役割や魅力をアピールしたりしているうちに、「現在のセクションはさまざまな部署を橋渡しする役割を担っている」と実感。意識がガラッと変わった瞬間だった。

 最も力を入れているのは新会社の立ち上げに向けた準備。2022年4月に東証が現在の上場区分を見直す予定で、新会社は最上位に当たる「プライム市場」への移行を目指している。ガバナンス(企業統治)強化や開示情報の英文化などクリアすべき課題は山積する。同時に自分がステップアップを図る千載一遇のチャンスと捉え、「必死に食らいついていく」覚悟だ。

 自分の可能性を信じる。今の心の支えであり「好きと思えるようになれば、いつかは報われるはずだ」。そんな自分の能力に賭けてくれた会社には感謝の気持ちしかない。今後を左右しかねない新会社の発足という最重要案件に気を引き締めて臨む。

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