◇愛着ある庁舎と前へ◇
地域特性を生かした建築を理想に大学院で熱環境の研究に取り組んだ。街が形成されていく現場に関心を持つようになり、さまざまな街の顔を持つ世田谷区の採用試験を受けた。建築家・前川國男(1905~86年)が設計した思想あるたたずまいの庁舎も魅力だった。
業務に対する考え方が変わったのは国土交通省への出向がきっかけ。国の立場で見ると地方の実態はどうしても見えにくい。基礎自治体の現場で感じる問題意識の大切さを痛感。区役所に戻ってから密集市街地の改善事業を担当し、その思いはさらに強くなった。
例えば道路の拡幅工事は多様な背景を持つ住民との調整が必要になる。土木工事などハード対策に目が向きがちだが、沿道にある一軒一軒と対面しながら「福祉や環境、産業、さまざまな視点を持って行う総合的な仕事」だと実感した。
現在は庁舎の建て替え事業を担う部署で陣頭指揮を執る。区への就職を決めた際の原点の改築を任され、「まさか自分が担当することになるとは…」と巡り合わせに思いをはせる。東日本大震災から10年。現庁舎に愛着はあるが「大きな転換期」として整備の必要性を説く。
新庁舎は災害対策拠点としての耐震性、多様化する働き方や区民ニーズに対応する柔軟性を備える。7月に着工を控え、区民自治の拠点を目指して新庁舎の仕事に全力を注ぐ。
(さとう・えり)
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