2021年4月5日月曜日

【中堅世代】それぞれの建設業・283

イベントや会議などの準備、運営も重要な業務になる

 ◇魅力を発信し続けることが使命◇

  首都圏の建設業団体で働く滝口浩一さん(仮名)は、建設業界が変革期を迎えていると感じている。これまでもバブル崩壊やリーマンショックなどの経済危機、入札契約制度改革などを要因に建設業界は幾多の試練にさらされてきた。だが今回ばかりはICT(情報通信技術)導入推進やウィズコロナの働き方見直しなど、構造的な改変を迫られていると感じるという。地域建設業者のために建設業団体は何ができるのかを模索する日々だ。

 「国が主導するICTや建設キャリアアップシステム(CCUS)などの趣旨は理解できるが、地方の中小建設企業にとって導入や対応のハードルは高い」

 国際標準規格のISO9000シリーズを導入した時も、会員各社が大きな苦労を強いられた。当時の様子は今も鮮明に覚えている。「新たな制度や技術を導入するたび対応に苦慮する地域建設業者の姿に接してきた。その生の声をくみ上げ、行政に伝えたり広報活動で社会に発信したりすることが使命のひとつ」と話す。

 建設業界は自己PRが足りないとも思っている。担い手確保も同様で「業界の必要性や社会的意義などを積極的に発信していかなければいけない」。県などの自治体も積極的に施策を展開しているが、まだまだ足りないのが現状だ。

 「建設業界のマイナスイメージを払拭(ふっしょく)するには時間がかかる。少しずつ災害対応や除雪などの、縁の下の力持ち的地域貢献が知られ始めているが、まだ十分とはいえない」無力感を抱くこともあるが、今後もイベントやSNS(インターネット交流サイト)などを駆使し、地道なイメージアップを続ける。

 滝口さんが社会人になった時、世の中は不景気のまっただ中だった。就職氷河期に直面し知り合いの紹介で求人を知り、建設団体の入職試験を受けた。「家族や周りに建設業界で働く人はいなかった。建設業の印象は3Kなど、マスコミで流されるネガティブなものばかりだった」。

 入職してからは先輩職員の指導を受け、地域建設会社の役員らと接するうち、「都市基盤の整備や防災・減災への貢献など、地域の安全・安心に直結した必要不可欠な産業。何もないところから構造物を生み出す創造性など魅力にあふれている」と考え方が180度変わった。

 自分と同じようにネガティブな先入観にとらわれて建設業を誤解している人が多いことは十分理解できる。その意味でも業界団体が今まで以上に積極的なPR活動を展開しなければならないが、「地域の清掃や美化活動などを企画し記者クラブに情報提供しても、ほぼ取り上げてもらえない」のが悩みの種。一方で談合や事故などのネガティブなニュースは執拗(しつよう)に報道されてしまう。

 それでも業界からの発信を止めることはない。「会員企業の声を集約し、行政や一般の方々に伝え続けたい」と意欲を示す。

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