2015年6月30日火曜日

【回転窓】山も工事も安全第一で

北アルプスの杓子岳・白馬鑓ケ岳(左から) 写真撮影=M.S
きょうで6月は終わり。列島各地は梅雨のさなかですっきりしない空模様だが、本格的な夏空も間近である。あす7月1日は、富士山をはじめ多くの山が山開きを迎えることだろう▼山開きとは本来、特定の日に一般人に入山や登山を認めること。山岳信仰が盛んだった時代に、普段は修験者や僧以外に立ち入りが許されない神聖な霊山を、日を決めて俗人に開放することだったという▼現代の山開きはこれとはだいぶ意味が違う。山小屋や登山口までの交通機関が本格的に営業を始め、気候も安定して一年のうちでも最も快適に登山ができるようになる日とでもいったらよいだろうか。いよいよ夏山シーズン本番というわけだが、ここは要注意▼警察庁が先日発表した昨年の山岳遭難は全国で2293件、遭難者は2794人に上った。件数、人数とも3年連続で増え、統計が残る1961年以降では最多。死者・行方不明者は計311人で過去3位だった。ちなみに御嶽山噴火による死者・不明者計63人は自然災害なのでこの数字には含まれていないそうだ▼あすからはまた全国安全週間。山も工事も安全第一で。

【さあ、海開きだ!!】建設各社が全国で砂浜の清掃活動

 海開きが相次ぐ7月1日を前に各地の海水浴場で清掃活動が行われた先週末、ゼネコン各社も社員らが参加して砂浜のゴミを拾うボランティア活動に従事した。

吉里吉里海岸での清掃活動の様子
 岩手県大槌町の吉里吉里(きりきり)海岸で清掃活動を行ったのは前田建設東北支店(青木敏久支店長)。復興CM事業を手掛ける大槌復興CMR(前田建設・日本国土開発・日特建設、パスコ・応用地質JV)の伊藤明所長が呼び掛け、三陸沿岸で工事を受け持つ千徳小山田道路作業所、大槌トンネル作業所、大槌町町方復興CMr、鵜住居川作業所、五葉山メガソーラー作業所、新鍬台トンネル作業所、小友作業所の8現場と青木支店長ら東北支店の有志を合わせて、総勢100人が参加した。青木支店長は「大槌町屈指の景色を持つ海水浴場だけに、子どもたちや町の人々が楽しく過ごせるような環境整備をしたい。普段は各地で仕事をしている社員たちが、これだけ集まってくれたことを頼もしく思う」と話しながら、ごみが残っていないか先頭を切って砂浜を点検していた。

関屋浜の清掃では、本間組の社員と園児が「エイエイオー!!」
 新潟市中央区に広がる海水浴場「関屋浜」の海岸清掃には本間組とグループ会社の社員とその家族約90人が参加した。本間達郎社長は「今日は関屋浜の海開き。楽しく過ごせる快適な浜になるようごみを拾いましょう」とあいさつ。近くにある新潟青陵幼稚園の園児による「みんなで関屋浜をきれいにしましょう。頑張るぞエイエイオー」というかけ声を合図に、参加者は関屋浜に立つ海の家の前に広がる約1キロの砂浜に出て流木や空き缶、空き瓶などのごみを拾い集めた。終了後には、本間組から参加者にミネラルウオーター、アイスキャンディ、スナック菓子が振る舞われた。

【駅ナカの次は道ナカ】常磐道・守谷SA(下り)に商業施設、7月1日オープンなり

 
パサール守谷の外観
 東日本高速道路会社が常磐自動車道・下り線の守谷サービスエリア(SA)で整備を進めていた道ナカ商業施設「Pasar(パサール)守谷」(茨城県守谷市野木崎)が7月1日に開業する。「憩いの森」を施設コンセプトに掲げ、東京など都心部から北関東・東北方面の目的地に向かう最初の休憩ポイントとして整備した。10年前の民営化以降、SAやパーキングエリア(PA)で進めてきたリニューアル事業のノウハウを集め、道路利用者の癒しと、地域の魅力向上につながる空間を創出した。

 ◇民営化10年のノウハウ結集◇

 開業を前に29日、内部が報道機関に公開された。同社事業開発本部の前川潤エリア事業部長は「10月に民営化10周年を迎えるのを前に、SA・PAリニューアルでは基本的なサービス向上を目指す『礎づくり』と、個性的・魅力的な店舗などを集めた『華づくり』といった二つの方向性でレベルアップに取り組んできた」と説明。民営化10年の間にSA・PA事業による売上高が約180億円増加するなど、リニューアルの成果が着実に表れていることを強調した。
 今後の事業展望として、多様化するニーズに応えるため、多店舗型のパサールのほか、物語などの世界観を表現したテーマ型エリア、地域の風土的特色などを生かしたドラマチックエリアを核にSA・PAのブランド化を推進。「地域の魅力をSA・PAから積極的に発信していく」と意気込みを語った。
 パサール守谷の運営管理を担当する伊藤竜太郎館長は「パサールとして6カ所目の守谷(下り線)では、旅の始まりを感じさせるプロローグゲートとして、訪れる人にわくわく感を与える施設づくりを心掛けた」と説明。一般道からも施設を利用できるように専用の駐車スペースを設けるなど、「多くの方々に永く愛され、利用される施設を目指す」と抱負を述べた。

楕円形のレイアウト店舗の見やすさを追求
 パサール守谷(下り)の商業施設の規模はS造2階建て延べ約2700平方メートル。曲線を多用した施設の外・内観や木のぬくもりを感じさせる意匠などにより、安らぎの空間を演出。施設内には東京近郊の立地を踏まえ、都内を中心に話題の飲食店の食事が楽しめるフードコート、東京や地元・守谷の銘菓などを取りそろえた土産店などが入る。
 楕円(だえん)形の室内外周部に店舗を配置するレイアウトにより、入り口から店内全体を見渡せ、利用者が目的のものをすぐ見つけられるように工夫した。トイレも改築し、清掃が容易な壁掛け式便器や子ども用トイレ、女性トイレへのパウダーコーナーの設置など設備を拡充。外観デザインも商業施設と同様のデザインにすることで統一感を持たせた。
 施設前面の駐車場(大型約100台、小型約240台)は、歩道との段差を解消するバリアフリー化をはじめ、障害者利用の駐車スペースの増設、バス優先駐車スペースの設置など駐車場のレイアウトを変更。利用者の使いやすさと安全に配慮した。

【建設業の実態はまだまだ厳しい】若手・女性採用、企業規模で大きな差/日刊建設工業新聞・KDDI共同調査

 

 日刊建設工業新聞社とKDDIは共同で、全国建設業協会(全建)傘下の1万8000社余りを対象に「建設業の高齢化に伴う人材確保とICT(情報通信技術)の導入」についてアンケートを実施した。それによると、企業規模が小さくなるほど女性技術者や若年技術者の採用が少なくなる傾向が強まることが分かった。規模の小さい企業ではICTの導入が遅れている現状も浮き彫りになった。
 調査は、5~6月に1万8373社を対象に郵送方式で実施、4198社から回答(回収率22・8%)を得た。回答企業を規模(従業員数)別に30人以下、31人以上100人以下、101人以上の3カテゴリーに分けて集計した。
 従業員の年齢構成では全従業員に占める50歳以上の割合が「3割以上」と回答した企業が4分の3以上を占めた。企業規模別に見ると、30人以下の企業では「5割以上」と回答した企業が44・1%に上った。101人以上の企業でも66・6%が「3割以上」と回答。高齢化が建設業全体で進行している様子がうかがえる。



 一方、10~20代の若年技術者が占める割合は、企業規模が小さくなるほど低くなり、101人以上の企業でも3割未満にとどまった。過去3年間の採用実績を聞いたところ、30人以下の企業では47・4%が「採用の実績がない」と回答した。一方で101人以上の企業では「6人以上」と回答した企業が86・5%にのぼり、企業規模によって採用動向に大きな差がある実態が分かった。
 女性技術者については、30人以下の企業の58・8%が「全くいない」と回答したが、101人以上の企業では4分の3以上が女性技術者を活用していた。
 現在の従業員数について全体的に不足感を抱いていることも分かり、101人以上の企業の55・9%は新規雇用や業務の効率化を実践・検討していた。新規採用では、「予定通りに選考できている」と回答した企業は、30人以下の企業では5・6%にとどまった。101人以上の企業でも4分の1程度と少なく、「募集人数に及ばない」「人材が少なく選考が難しい」などと答えた企業が大半を占めた。
 地域別では、東京や大阪、名古屋など大都市圏では比較的人材が確保できているが、四国や九州などで苦戦していることも分かった。
 人材を雇用するために必要な条件としては、30人以下の企業では「受注量を増やす」との回答が最多。101人以上の企業では「職員の処遇改善」が3分の1を超えた。人材不足への対応策として、再雇用や定年延長での対応や即戦力となるキャリア採用を挙げる企業がどのカテゴリーでも大半を占めた。



 女性や外国人労働者の雇用については、101人以上の企業の4分の1が既に採用していたが、30人以下の企業の半数以上は「予定がない」と答えた。
 後継者については30人以下の企業の44・1%が「いない」と回答。101人以上の企業では、世襲によらない「後継者と成り得る社員がいる」と回答した企業が43・6%と最も多かった。
 ICTの導入状況については、101人以上の企業の多くがスマートフォンやタブレット端末を使ったICTシステムを活用していたが、100人以下の企業では7割超が未導入で、企業規模によりICTの導入に大きな差があることが鮮明になった。
 ICTを活用している業務としては、写真撮影・管理、図面確認、施工管理などを挙げる企業が多かった。ICTの導入を進める上での課題を聞いたところ、「ICTシステム自体を理解できない」「新人や年長者が使用方法を理解するのが難しい」などを挙げる回答が多く寄せられた。

【ダム・ウィズ・ナイト!!】ダム工学会がダムの魅力満載のイベント開催(短い見出しで「ダム」を4回連呼してみた)



 ダム工学会(濱口達男会長)の設立25周年を記念した一般公開シンポジウム「With Dam☆Night’15」が26日、東京都中央区の日本橋社会教育会館で開かれた=写真。日本大ダム会議が共催した今回のシンポジウムは「世界のダム」がテーマで、集まった多くの人たちを楽しませていた。
 濱口会長は「ダムの歩みは人類の歩みだ。文明の誕生と共にダムはできている。ダムの魅力を発信していきたい」とあいさつ。日本大ダム会議の松本徳久専務理事が古いダムをいかに安全にしているかといった視点から「世界のダムいろいろ」、ダムをデザインした紙幣の収集家のTAKANE氏が「ダム紙幣と経済」、ダムマイスターの中村靖治氏が経済的に造られた「タスマニアのダム」、ダムライター・写真家の萩原雅紀氏が魅力のある「世界のすごいダム」についてそれぞれ講演した。
 トークショーには土木学会の勝濱良博氏、水資源機構の染谷健司設計事業課長らが登壇。勝濱氏は、日本が第2次大戦前に造り今も稼働している北朝鮮の水豊ダムを世界遺産にふさわしいダムとして挙げた。染谷氏は、最も活躍しているダムについて、日本のゼネコンが「5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)」を現地の作業員に教育しながら建設したインドネシアのチラタダムを紹介した。

2015年6月29日月曜日

【ロゴマークシールをペタッ!!】日建連がヘルメット用「けんせつ小町シール」作成


 日本建設業連合会(日建連)は、女性技術者・技能者の愛称「けんせつ小町」のロゴマークを用いたヘルメット用のシールを作成し、会員会社に配布した。愛称を検討した会員会社の女性職員の意見を参考に、直径30ミリと50ミリ、それぞれ透明と白色を用意。色付きのヘルメットを採用していたり、ヘルメットに複数のシールなどを張っている社に配慮した。
 1万枚弱を作成したが、既に配布を終えており、追加でシールを希望する場合には、幅広い利用を求めているロゴマークを使って自主的に作成するよう呼び掛ける。

【回転窓】職人の心意気と聖火台

 1964年の東京五輪で使用された聖火台が、東日本大震災の被災地、宮城県石巻市の総合運動公園に移設された。聖火台があった国立競技場の建て替えに伴い、「復興のシンボル」として貸し出された▼聖火台は鋳鉄製で直径と高さが約2・1メートル、重さが約2・6トン。前例のない規模だったので大手企業にも引き受け手がなく、埼玉県川口市の鋳物師、鈴木萬之助、文吾親子が製作した▼製作期間3カ月という切羽詰まった状況に採算を度外視して引き受けたという。親子を支えたのは職人の心意気。昼夜兼行で作業に没頭したが、最初は鉄を鋳型に流し込む作業がうまくいかず、精根尽きた萬之助さんが他界。文吾さんが志を引き継いで納期に間に合わせた。五輪の開会式では、全世界が見守る中、聖火が無事ともされた▼新国立競技場の建設で多くの課題が浮上している。技術的難しさもあり、期限までの完成を危ぶむ声もあるが、かつての聖火台のように日本の建設業の技術と心意気で完成させてほしい▼石巻市では週末、「復興マラソン」が開かれ、職人の心意気が詰まった聖火台が市民にお披露目された。

【凛】日立建機マイニング本部販売戦略部・加納千寿さん


◇海外の何もない所に事業育てたい◇

 日立建機製の鉱山用機械(マイニング)を海外で販売する現地担当者と日本の本社とのパイプ役を担う。見積もり作成や工場からの輸出調整、現地の要望への対応など業務は多岐にわたる。「寄せられた要望を皆で議論し合い、自分の考えを出して課題が解決できた時にやりがいを感じる」と目を輝かせる。
 スウェーデンの大学院に在学中、英語が堪能だったことから海外で働きたいと考えていた。そんな時に日立建機の就職説明会に参加。人事担当者の人柄に引かれたことが入社のきっかけになった。マイニング本部に配属されて3年目、現在はオーストラリアを担当。「海外とのやりとりでは日本語も英語も使うので楽しく仕事ができている」。
 入社して強く感じたのは、横のつながりはもちろん、縦の人間関係が良かったこと。「風通しの良さに驚いた」という。配属後しばらくは淡々とした事務作業が続くと思っていたが、「スピードが速く、いろいろと任されることも多い。挑戦させてもらっている」。
 しかし、顔が直接見えない現地担当者とのコミュニケーションはやはり難しい。マイニングは非常に高価な商品だけに責任も重い。円滑なやりとりを模索し、海外とのネットワークを構築するのが目標。「将来は海外で何もない所に事業を育て、会社に貢献したい」。(かのう・ちず)

【中堅世代】それぞれの建設業・100

確かなプランニングと施工管理で取引先と信頼を築いていった
◇おやじの功罪、借金を知ったあの日から◇

 小さいころはいつもボロボロの靴を履き、学校の給食費も払えないほどの貧しい家に育った。「なぜうちは貧乏なんだろう」。細川幸一さん(仮名)はずっと不思議に思っていた。
 高校を卒業し、最初に就職した会社で大工道具の営業を担当した。数年後、エクステリアの会社に再就職したころ、父親が20社近い金融業者から借りた金を返せないでいるのを初めて知った。
 ショックだったのは、父親が多額の借金を抱えていたことだけではなく、三つ上の姉が毎月の給料のほとんどを返済に当てていたことだった。でも、膨らんだ借金は母と姉が働いても返せる額ではなかった。「長男の俺はなぜ何も知らなかったのか」。自分が無性に恥ずかしかった。
 父親は、働き者の大工職人だった。だが、一緒に飲んだ人の勘定も金を借りてまで払うなど、稼いだ以上の金を使ってしまう性分だったという。働き盛りの30代で大きな事故に見舞われ、体に障害を抱えてからは酒とギャンブルにのめり込んだ。
 「そのころの姉さんは同じ会社に結婚したい人がいた。でも、家のことを調べられたら結婚なんてできない。だから、俺が返していくので『絶対に隠しておけ』と言ったんだ」
 借金を返すにはどうすればいいか。細川さんは独立するしかないと心に決め、施工管理や設計など会社経営に必要なノウハウを得ようと必死に働いた。だが、細川さんが返済を始めても、父親は相変わらず借金を重ねていく。「今ある借金は返すので、おやじにもう金を貸さないでほしい」。悔しくて情けない思いを抑え、金融業者にそう頭を下げて回った。
 会社を辞めて独立する役員に誘われ、細川さんは2度目の転職を果たした。ところが、かつて仕事ができ、信頼のおける人だったその上司は、経営者になると考え方が大きく変わってしまったようだった。腕のいい職人たちがいなくなり、仕事の出来栄えは目に見えて変わっていった。「これほど職人によって違うものかとあらためて勉強になった」。細川さんはこの会社を離れ、同じエクステリア関連の会社で働き始めたが、以前から考えていた独立に踏み切る。当時27歳だった。
 「エクステリア業界というのは、すぐに独立できる。でも、ほとんどが会社を継続していけない。そんな中で約20年にわたり会社を続けていられるのは、本当に周りの人のおかげだよ」
 40代半ばになった今、つくづくそう思う時がある。親の借金に苦しんでいる男と知りつつ一緒になり、現在も夫が経営する会社を陰で支えている奥さんもその一人だ。
 7年前、細川さんの父親は亡くなった。あれだけ好きだった酒も晩年はだんだんと飲めない体になっていた。
 「俺もおやじと同じで根っこは遊び人なんだ。真面目にしていると息が詰まってくる。だけど、こうして家族を持って仕事していられるのは、常におやじのようになってはいけないと考えているからかもしれない。散々苦労させられたけど、おやじがいたから俺がいるんだと思う」
 父親が眠る細川家の墓石には「家族」の2文字が刻まれている。借金が無くなってから、もう10年以上がたつ。

【駆け出しのころ】奥村組執行役員西日本支社関西支店長・原田治氏


 ◇専門を極めれば分野が広がる◇

 入社して2年目のことです。埼玉県内にある東北新幹線の建設工事現場に勤務していたところ、急に東京本社の土木設計グループに応援に行くよう指示されました。大学で計画系の研究室に所属し、コンピューターを使っていた(当時は珍しいことだった)私なら、土木設計の業務を手伝えるだろうと会社が判断したようです。これには驚き、不安な面もありましたが、会社の期待に応えることだけを考えて挑戦することにしました。
 このグループは若い社員で構成されていたこともあり、私が学生時代に所属していた体育会系のテニス部をほうふつさせるかのように皆で切磋琢磨(せっさたくま)して業務に励みました。しばらくは応援の立場でしたが、耐震解析などを中心に勉強していたところ、上司から突然、現場に戻らずグループに残れと言われ、正式に配属されることになりました。一技術者として認められたことに喜びを感じ、にわかに自信が増して向上心が高まりました。
 1983年から東京本社の原子力室に配属されましたが、原子力施設の知識がなかったので、一からの勉強となり、大学の原子力工学科にも聴講生として1年間通いました。仕事をしながらで大変でしたが、原子力に関する専門知識を得たのは貴重でした。
 茨城県つくば市に新設した技術研究所では、大型振動台を備えた耐震実験施設の建設に企画段階から携わり、日本初の実用免震ビルを実際に揺らして建物の免震性能を確認する前例のない実験にも関わりました。このような仕事を無事完遂できたのは、持ち前の努力はもちろん、同じ目的意識を持った頼もしい仲間がいたからだと思っています。
 当時は設計部門で働くことにやりがいを感じていましたが、このまま現場経験を積まずに過ごしてよいのか不安になり、入社16年目に施工部門への異動を志願して施工管理力を磨くことにしました。3年後には営業部門に異動することになりましたが、それまでに培ってきた知識や経験は技術営業を展開する上で大いに役立ち、今も私を大きく支えてくれています。
 振り返れば、もともと与えられた仕事がきっかけで、その専門分野を極めるようになり、さらに次の分野へと関心が広がっていったと思っています。今はどのような分野にもある程度対応できると自負しており、この仕事を「一生の仕事」にして間違いないと確信しています。
 私から次代を担う若い皆さんに伝えたいことは、まずは自身の専門分野を極めることに専念していただきたいということです。そうすることによって、自然に専門とする分野も広がり、自信も増してくると思われます。労力や時間を惜しまず、ぜひ頑張ってください。
 (はらだ・おさむ)1978年京大工学部交通土木工学科卒、奥村組入社。関西支社土木部、西日本支社関西支店土木営業第2部長、同支店土木営業統括部長、東日本支社名古屋支店長などを経て14年4月から現職。大阪府出身、61歳。
入社2年目に会社でテニス同好会を創設。
プレースタイルは「攻撃一本」


【サークル】大林組 バレーボール部



 ◇「NO バレー! NO LIFE!!」◇

 大林組の公認部活動の一つであるバレーボール部。5月末時点の部員数は男女合わせて約25人で、部員の所属先は本社や現場、技術研究所などさまざまだ。経験者が大半を占め、年2回開かれる建設業のバレーボール大会「建設業リーグ」で男子、女子チームとも優勝経験のある強豪だ。
 男子チーム前キャプテンの柄澤千尋さん(経理部東京経理第二課)は、「発足年や経緯に関する詳細な記録は残っていませんが、ベテラン社員に聞くと30年以上前から活動しているようです」と話す。
 モットーは「NO バレー! NO LIFE!」。練習は月2回。平日夜に東京・品川の本社近くにある体育館に集まり、汗を流す。男女合同で練習することもあるという。交流は社内にとどまらず、社外のバレーボール仲間ともコミュニケーションを図っている。
 大会出場は年6回程度。「建設業リーグでは過去に1度、男女アベック優勝を果たしました。現在は、もう一度アベック優勝を目指し、猛練習中です」と柄澤さん。
 人事異動で勤務地が変わり、部員が離れ離れになることもあるが、「バレーボールを通じて生まれた絆と練習で培った精神力で、どんなことがあってもお互い支え合い、何事も全力で頑張っていきたい」という。

2015年6月28日日曜日

【首都圏Look at】JR大崎駅周辺で再開発活発

大崎駅周辺で進む再開発事業の位置図
 東京都品川区のJR大崎駅周辺で、組合施行の第1種市街地再開発事業を目指す取り組みが活発化している。駅西側の2地区で、地権者らでつくる準備組合が相次ぎ計画を具体化。駅南側の1地区でも、まちづくり協議会が準備組合への移行に向けた動きを始動させる見通しだ。周辺では先行して進んだ再開発事業で高層ビルが集積。かつての工場街は大きく変貌しており、新しい街全体を適正に維持管理したり、さらに価値を高めたりする取り組みも動きだしている。

 ◇相次ぐ再開発計画◇

 駅の西側では、大崎西口駅前地区(品川区大崎3の6ほか、敷地面積約1・4ヘクタール)で既存建物を共同で建て替え、住宅や業務・商業が入る再開発ビルの建設が計画されている。準備組合は6月中に事業協力者を選定。ビルの規模や機能などの検討に入る。
 同地区の東隣の大崎三丁目地区(品川区大崎3の7ほか、敷地面積0・5ヘクタール)では、07年9月に発足した準備組合が、事業協力者の住友不動産と施設の規模や機能を検討中だ。
 「もともと大崎駅周辺は目黒川を主な運搬ルートとして活用した工場が集積していた。昭和50年代から工場移転が増え、跡地で再開発事業の計画が立ち上がり始めた」。品川区都市開発課の溝口雅之課長は、この地域に再開発事業が集中する理由をそう分析する。
 再開発を活発化させる要因がもう一つある。それが「都市再生緊急整備地域」だ。02年7月に駅を中心とした約60ヘクタールの地域が、緊急・重点的に市街地整備を推進する地域として国に指定された。地域内で行われる都市開発事業には税制上の優遇措置などが講じられる。
 指定を受けて駅周辺の開発が加速。駅北側で07年1月に大崎駅東口第3地区、駅西側で同8月に大崎駅西口E東地区、09年9月に同中区、11年3月に同C地区などで組合施行の第1種市街地再開発事業で高層ビルが竣工した。

 ◇エリア一帯の維持管理検討へ◇

 駅西側で新たに計画が具体化する2地区は、都市再生緊急整備地域の外側に位置しており、緊急整備地域の開発機運が周辺地域にも波及した格好だ。
 駅東側では、同様に緊急整備地域内にある北品川五丁目第1地区の施設群「パークシティ大崎」が完成したのを受け、外側に位置する大崎駅東口第4地区(品川区大崎1の16の1ほか)で、地権者らで構成するまちづくり協議会が準備組合への移行に向けた活動を本格化させる方針だ。
 3地区の再開発事業が竣工すれば、「駅周辺で進む街づくりで一定の成果が出てくる」と溝口課長。「今後は街全体を適正に維持管理する手法も重要になる」と指摘する。
 街全体の維持管理に向け、地権者の企業や管理組合などで組織する一般社団法人の大崎エリアマネジメントは、「大崎駅周辺まち運営プラン」を策定し、▽公開空地の活用推進▽防災・防犯対策の強化▽区や町会、商店会との連携強化―などを打ち出した。
 5月30日に開かれたパークシティ大崎の完成式典で、濱野健品川区長は「(大崎駅周辺では)遊べる場所が少ない」と指摘し、「今後は映画館など娯楽施設の誘致を検討したい」との意向を示した。溝口課長も「働く、住む以外で街全体の価値を高める必要がある。駅周辺に来た人が楽しめるような要素を盛り込みたい」と話している。

2015年6月27日土曜日

【ストレスチェック制度ってなに?】12月から一定規模以上の事業所に義務付け/Q&Aでポイント紹介

ストレスチェック制度の流れ
うつ病などメンタル面の不調を未然に防ぐため、企業など50人以上を雇用するすべての事業者に対し、従業員の心理的負担の調査を義務付ける「ストレスチェック制度」が、施行まで半年を切った。影響が大きいとされる新制度だが、企業はどのような準備をすればよいのか。建設業での留意点を含め、中央労働災害防止協会(中災防)の専門家にポイントを聞き、Q&A形式でまとめた。

 ◇対策は「重要な経営課題」◇

  ストレスチェック制度とはそもそもどういうものか。
  14年6月に公布された改正労働安全衛生法で、常時50人以上を雇用する事業者に義務付けられた。今年12月1日に施行される。50人未満の事業者は努力義務となっている。所管する厚生労働省は、対象事業所のすべての労働者が受けることが望ましいとしている。費用は企業が負担する。
 事業者は医師や保健師などに依頼し、調査票を使って実施する。結果は本人の同意がない限り、事業者に伝えることは禁止されている。
 ストレスチェックで「高ストレス者」と評価された労働者から申し出があった場合、事業者は医師による面接指導を実施しなければならない。
 ストレスチェックは年1回以上行う。施行日から計算すると、1回目は16年11月末までに実施する必要がある。複雑な制度で、慎重な運用が必要なため、「企業の担当者は厚労省が5月にまとめた実施マニュアルを手元に置いた方がよい」と中災防の担当者はアドバイスしている。
  企業は何を準備すればよいのか。
  まず急いだ方がよいのは、ストレスチェックを実施してもらう医師や保健師などの確保だ。事業の実態を理解している産業医が適しているが、建設業の産業医には外科や整形外科の医師が多く、対応できるかどうか、早めに相談した方がよいだろう。精神科医はそもそも数が少なく、いない地域もある。
 制度を就業規則に反映させたり、実施体制の整備に向けて労使で作る労働衛生委員会で協議したりする必要もある。
 健康診断と同時に実施することもできるが、中災防の担当者は「健康診断とストレスチェックが重なると事務処理の負担も大きくなるので、そうした点を考慮して実施時期を決めた方がよい」と言っている。
  ストレスチェックと面接指導を終えた後の対応は。
  面接指導での医師の意見を踏まえ、就労場所の変更や就労時間の短縮など必要に応じた措置を講じる。
 さらに、部門や支店など組織ごとにストレス状況を分析し、ストレス軽減に向けた職場環境を改善することも必要だ。
 今の制度では努力義務だが、昨年12月に厚労省の検討会がまとめた報告書は、組織分析に基づく職場改善について将来の義務化の必要性に言及しており、近い将来、義務化される公算が大きい。

 ◇医師・保健師確保を◇

  ストレスチェックを実施しなかったらどうなるのか。
  罰則はない。ただし、例えば従業員のメンタル不調を放置した結果、重大な事態を招き、本人や遺族から訴訟を起こされた場合、裁判で不利に働く可能性がある。
  建設業での留意点は。
  義務化の対象は厳密には「事業場」であり、従業員が50人未満の支店・営業所は対象にならない。ただ、50人以上いる本社や支店の従業員との間で差が生じてよいか、慎重に検討する必要があるだろう。
 メンタル不調から集中力が散漫になり、現場でのヒューマンエラーにつながる懸念もある。「ストレスチェックは現場の災害防止にもつながる」との見方がある。
 元請業者は下請業者の従業員に対する義務はないものの、下請業者がストレス軽減のため現場の就労改善を図ろうとすれば、元請業者の協力が不可欠になる。中災防の担当者は「メンタル不調対策について、元請と下請で話し合ってほしい」と呼び掛けている。
  ストレスチェックが義務化された背景は。
  メンタル不調による疾患は、早期発見による早期治療がカギを握る。ただ、個人ベースでの対応には限界がある。精神障害の労災請求件数は右肩上がりで、業種別の支給決定件数を見ると、総合工事業が5位、設備工事業が11位に入っている。
 企業にとっての損失も大きい。メンタル不調になると、長期にわたる休職の末、退職に追い込まれる従業員が多いからだ。労働政策研究・研修機構の調査によると、メンタル不調になった人のうち、最終的に退職したのは34%。休職や復職を繰り返すなど通常のように働けなくなった人を合わせると50%弱に上る。
 
 ◇メンタル不調は未然防止が重要◇

 中災防の担当者は「メンタル不調はいかに未然に防ぐかが重要。上司が不調に気付いてからでは遅い」とし、「仕事への影響が減ってくれば、企業の活性化につながる。企業の重要な経営上の課題と捉えてほしい」と強調している。

2015年6月26日金曜日

【回転窓】霞が関の働き方改革

不夜城の明かりは消えるのか・・・
7月1日から東京・霞が関の官庁街で夏の生活スタイル変革を目指す取り組みが始まる。7~8月の2カ月間を対象に実施する「霞が関ゆう活」。早朝に仕事を始めることで早く退庁し、「夕方を楽しく生かす働き方」を実践するという▼深夜でもこうこうと明かりがともる役所で官僚たちが仕事を続ける様子から「不夜城」とも呼ばれるこの街。若い職員が多忙のあまり自宅に帰れず、そのまま事務所に寝泊まりして仕事を続ける姿も見かける。ゆう活など果たしてうまくいくのか、と人ごとながら心配にもなる▼担い手を確保・育成するために、建設産業界では現場の土日閉所などの働き方改革を実践しようとしている。十分な休みも取れない産業には若者たちも入りたいとは思わない。短時間で仕事をこなす生産性の向上も問われよう▼早朝出勤で定時に退社する取り組みを先行的に実践する企業の方々から見れば、「霞が関ゆう活なんぞ、何を今さら」という思いもあろう▼それでも何とか取り組もうとする姿勢は評価してもよさそうだ。霞が関の実践が官民挙げた働き方改革につながっていくと期待したい。

【直接見て、聞くことがなにより】竹中工務店九州支店が女性技能者と現場で意見交換

現場のことは現場に、女性のことは女性に聞くのが一番
 竹中工務店九州支店と協力会社で構成する九州竹和会は23日、福岡市東区の超高層分譲住宅「アイタワー」建設工事作業所で女性技能者と初の意見交換会を開いた=写真。建設業界で女性の活躍が進む中、女性技能者の就業環境改善と新たな女性技能者の確保を図るのが目的。
 今回は、牧旨之支店次長や中村政博九州竹和会会長らが同工事に従事する協力会社の女性技能者4人、竹中工務店の女性社員ら9人の計13人と現場の作業環境などについて自由に意見交換した。
 中村会長は「女性が建設現場で働きやすい環境づくりをしていくためにはどうしたらよいか、技能者、事務職も含めた女性の方々に意見を伺いたい」とあいさつ。参加者からは「トイレの施設整備は非常に進んでいる」「更衣室やシャワー室などの施設があれば、仕事が終わってからショッピングにも出掛けやすい」といった意見が聞かれた。
 同支店と九州竹和会では今後も継続して女性技能者との意見交換会を開催し、得られた意見を基に女性が建設現場で働きやすい環境づくりを積極的に進めていく考えだ。

【鉄道トンネルの魅力がいっぱい】写真家・徳川弘樹氏が個展「軌道回廊」

東京会場は6月29日まで、ご用とお急ぎでない方はぜひ!!
 写真家・徳川弘樹氏の写真展「軌道回廊」が29日まで、東京都新宿区のニコンサロンbis新宿(新宿エルタワー28階)で開かれている。時間は午前10時30分~午後6時30分(最終日は午後3時まで)。入場無料。
 徳川氏は、日本トンネル技術協会が14年に設立40周年記念事業の一環として募集した「トンネル・地下空間フォトコンテスト」で、最優秀賞に輝いた写真家。今回の写真展では、各所の鉄道トンネルを独特の手法で表現した作品20~30点を展示している。27日には同サロンで徳川氏のギャラリートーク(午後1~2時)が催される。
 同展は9月17~23日、大阪市北区のニコンサロンbis大阪(ヒルトンプラザウエスト・オフィスタワー13階)でも開かれる。

【レッズサポのみなさん、楽しみに待ってて下さい】埼玉スタジアム大規模改修が始動!!

改修に入る埼玉スタジアム
埼玉県は、2020年開催の東京五輪でサッカーの試合会場として使用される埼玉スタジアム(さいたま市緑区中野田500)の大規模改修事業に着手する。初弾の設計業務について、18日に一般競争入札を開札した「埼玉スタジアム2002コンコースほか改修工事設計業務」の委託先を537万円で宇田川太郎建築設計研究所、「埼玉スタジアム2002外壁ほか改修工事設計業務」を449万1000円で井上建築工学設計事務所にそれぞれ決めた。改修工事は分割発注し、本年度は外壁の修繕やスタンド改修などを行う。
 同スタジアムは、▽スタジアム本体(RC造6階建て延べ6万0867平方メートル)▽クラブハウス(S造2階建て延べ782平方メートル)▽チームハウス(RC造平屋597平方メートル)▽入場ゲート(S造平屋90平方メートル)6棟▽総合案内所(RC造平屋191平方メートル)2棟▽トイレ兼倉庫(RC造平屋240平方メートル)―などで構成する。
 コンコースほか改修工事設計業務の予定価格は685万1000円、最低制限価格は527万5000円。スタジアム本体の2階コンコース(B、D両セクター)、ペデストリアンデッキ(A―2、B、C、D各セクター)、スロープBの床防水塗装や、VIP席の改修工事の実施設計をまとめる。クラブハウスなど他の付随施設の外部と内部の改修設計も行う。
 外壁ほか改修工事設計業務の予定価格は511万9000円、最低制限価格は394万6000円。スタジアム本体のA―2セクター外壁改修工事と、大屋根部シーリング工事の実施設計を委託する。2件とも履行期限は9月30日。
 各設計に基づき今後発注する工事の工期は11月~16年3月を見込む。大規模改修に必要な設計と工事を16年度以降も順次発注し、19年度の事業完了を予定している。

【人材不足、やはり深刻】群馬建協が専門工事団体の担い手対策調査結果


時代が変わっても建設工事を支えるのはやはり「人」
◇人材不足「5年以上前から」8割◇

 群馬県建設業協会(青柳剛会長)は、県内の専門工事業団体を対象に今年3月に行った「群馬県内建設産業団体の担い手対策に関する基礎調査」の報告書をまとめた。設備、型枠、造園、とび・土工、塗装、板金、板金関係など15の団体が回答。「若年者(15~24歳を想定)の担い手確保の状況」については、不足しているが10団体、大変不足しているが5団体と、回答団体すべてで若年者の担い手が不足しているという傾向が示された。
 調査は、建設業振興基金の「建設産業担い手確保・育成コンソーシアム14年度地域連携ネットワーク等構築支援」予備調査の指定を受けて実施した。
 担い手の「不足を感じ始めた時期」については、「10年以上前から」が47%、「5年前ごろから」33%、「最近になってから」20%で、5年以上前から不足し始めたとの回答が8割を占めた。
 団体として若年者担い手対策(入職促進、退職者防止、技能の伝承など)に取り組んでいるかについては、67%(10団体)が取り組んでいると回答。団体としては取り組んでいないが33%(5団体)だった。
 具体的な取り組みは、職業体験(小中高校などに熟練技能者を派遣して出前講座など行うなど)が7団体、「中学・高校などに対して会員の求人をまとめてPRする」が2団体。若年者の早期退職防止では「技能・資格取得支援対策」が10団体で、うち9団体が各種技能・資格準備講座を開催していた。
 「若年者の担い手対策を進めるに当たっての課題はあるか」との問いには、9団体が「ある」、3団体が「大いにある」と答えた。課題は▽建設需要が不安定で、受注量の先の見通しがつかない(9団体)▽夏や冬の作業環境が厳しい(8団体)▽他産業の雇用条件や給与水準に追いつかない(7団体)▽求人しても採用したい人材が集まらない(6団体)-などだった。
 学校や職業訓練機関に望むことは、現場見学や職業訓練の導入促進・拡大が多かった。

【あなたならどのデザイン?】宮城県南三陸町「復興の橋」デザインコンペ、5者が7月の公開審査に

 宮城県南三陸町は、志津川地区に架ける橋梁を対象とした「復興の橋デザインコンペ」の第1次審査の結果を発表した。通過したのは、▽並木千香氏、大松俊紀氏(桑沢デザイン研究所)、鈴木啓氏(ASA)▽森創太氏、蜷川結氏(nmstudio)▽田中亮平氏(G architects studio)、田村尚土氏(ディックス)、涌田純樹氏(涌田純樹事務所)▽茅岡彰人氏、箕浦浩樹氏、藁科誠氏、山口温弘氏、宮脇和紀氏、菅澤和真氏(大林組大阪本店)▽堀越一希氏(東京理科大大学院)-の5者。7月19日に同町のベイサイドアリーナで、公開2次審査が開かれる。計画地は志津川。八幡川の河口付近に新たに設置する人道橋が対象。1次審査には215点の応募があった。

図①
 選定された5作品の特徴を見ると、並木氏らは「祈りの杉」をコンセプトに、橋の中央に祈りの象徴として杉丸太をつり下げる案とした。=図①


図②
 森氏らの提案は、海に張り出すような円弧形状にし、中心部に劇場のようなスペースを設ける。=図②

図③
 田中氏らは、曲率が異なる円弧を組み合わせた有機的な形を提案。=図③

図④
 茅岡氏らは「Origami」をコンセプトに、さまざまな活動を誘発するよう、海側の一部に傾斜を設けた。=図④

図⑤
 堀越氏は、橋上端を津波到達ラインと同じ高さにすることで、津波の脅威を記憶させる案とした。=図⑤

 1次審査通過者は、模型や詳細図を提出する。2次審査は公開し、5者がプレゼンテーションを行う。審査委員会の委員長は同町のグランドデザインを担当している建築家の隈研吾氏が担当している。事務局は新建築社。最終結果は9月1日に発表する。橋の完成は17年を予定している。
 公開審査会の観覧申し込みは、ホームページへ。

2015年6月25日木曜日

【回転窓】伝統行事も担い手不足

 「受け手も担い手も減っていて、存続が心配」。秋田県男鹿半島を旅して「なまはげ」の風習について聞くとそんな答えが返ってきた▼なはまげは、怠け心を戒め、無病息災や豊作・豊漁をもたらす来訪神とされる。大みそかに、「泣く子はいねが!」と家々を回るのだが、「泣く子どころか、子ども自体がなかなかいない」と地元の方も苦笑い▼担い手不足も深刻だ。本来、なまはげ役は未婚の男性が務めることになっているが、若者も減っているため、後継者の確保が困難という。仕事がないため、若者は都会に出て行き、いったん離れるとなかなか戻ってこない。多くの過疎地に共通する構図だ▼男鹿の温泉街も厳しいようで、閉館して放置された旅館を目にした。廃屋も多いそうだ。ある集落では、駐在所が廃止となり、土地と建物が売りに出されるありさまに▼とはいえ、住んでいる人たちから不幸な印象を受けたわけではない。むしろ、自然と共に生きる豊かさのようなものを感じた。地域が存続していくには、地場産業が踏ん張るしかない。地域の一角を担う建設産業の働きが、今こそ問われていよう。

【ベトナムで頑張る】三井住友建設が越の高速道路工事を連続受注


 三井住友建設は24日、ベトナム高速道路公社から、ホーチミン市郊外で計画されている総延長約3・2キロの長大橋梁建設工事を現地の建設会社シエンコ4との共同企業体(JV)で受注したと発表した。同市とカイメップ・チーバイ港を結ぶ南北高速道路(58キロ)の1工区で、日本の政府開発援助(ODA)によって建設する。同社は昨年7月に隣接工区を受注しており、今回の受注によって、ODA工事区間11キロのうち2工区合わせて7・9キロを担当することになる。
 三井住友建設・シエンコ4JVとして受注した。JVの受注総額は約201億円。JVの出資比率は三井住友建設65%、シエンコ435%。工期は42カ月。  工事名は「南北高速道路建設工事(ベン・ルックーロン・タイン区間)パッケージJ3」。設計は、片平エンジニアリング・インターナショナル、大日本コンサルタント、オリエンタルコンサルタンツグローバル、トランスポート・エンジニアリング・デザインの4社JVが担当している。
 工事規模は、橋梁延長2982メートル、土工事(道路工)204メートルの総延長3186メートル。主橋梁は橋長599メートル、最大支間長300メートルの3径間PC(プレストレストコンクリート)斜張橋で、主塔の高さは140メートルに達する。主橋梁へのアプローチ部は、東西両側にそれぞれ橋長852メートルの13径間連続PCラーメン橋と、橋長679メートルの5~6径間連結スーパーT桁橋を整備する。
 三井住友建設は14年5月から、ベトナム北部のラックフェン国際港建設プロジェクトで総延長約15・6キロのアクセス道路・橋梁の建設を施工してきた。同国でのインフラ整備工事のリーディングカンパニーとして、日本の先端技術や同社の施工ノウハウなどを活用し、南北高速道路の建設工事にも力を入れる。

【一歩一歩着実に】JICAがトンガの埠頭整備に無償資金協力

ファウア埠頭に整備する護岸や旅客ターミナルビルの完成イメージ
 国際協力機構(JICA)は、トンガ政府が進める「国内輸送船用埠頭(ふとう)改善計画」を対象に33億2000万円を限度とする無償資金協力を行う。同国政府と贈与契約を締結した。
 埠頭改善計画では、首都ヌクアロファにあるヌクアロファ港で、小型国内輸送船が使用しているファウア埠頭に旅客ターミナルと岸壁、泊地などを新設し、船舶の大型化に対応する。旅客の乗降時の安全確保と、荷役作業の分離による貨物輸送の効率化を図る。
 実施機関は社会インフラ省。支援内容は岸壁の新設、旅客ターミナルビルの建設、航路と泊地(浚渫含む)整備のほか、太陽光パネルや航路標識などの機材供与。コンサルティングサービスとして詳細設計、施工監理も行う。詳細設計を含めた工期は33カ月を見込む。

【東北の現場から】市民文化会館建設工事(福島県白河市)

 
16年3月の完成へ工事は佳境を迎えている

 ◇遮音性確保に最大限配慮◇

 福島県白河市のJR白河駅前で、大規模なコンサートや演劇を行える「(仮称)市民文化会館」の建設工事がピークを迎えている。現施設が老朽化したことから、駅前の線路沿いに最新の防音設備、音響設備を備える多機能ホールを移転・新設する。施工は大成建設・兼子組JVが担当。昨年3月に本格着工し、これまでに建て方を7割以上終えた。全体の進ちょくは5割超。来年3月の完成を目指し、工事が後半戦に入る。
 建設地は同市会津町1の17ほか。JRの操車場跡地を市が買い取り、市民が文化・芸術に触れられる新たなホールの建設に着手した。事業には社会資本整備総合交付金を充当。16年度内の開業を目指している。
 新施設は、大きく分けて1104席の大ホールと321席の小ホールで構成する。規模は地下1階地上4階建て延べ9783平方メートル。構造はS・RC・SRC造。基本・実施設計は日本設計が手掛けた。現市民会館(手代町22の1)の座席数は1336席で、福島県南部では最大級。移転後は1425席と規模がさらに拡大する。敷地の西側に大ホール、東側に小ホールを配置し、それらの中間に中庭や楽屋を置く。建屋の南側には正面玄関のほか、店舗や楽屋、練習室などを設ける。

 ◇鉄道線路沿い、地中壁で振動対策◇

 敷地のすぐ北側をJR東北本線の線路が走り、建物とは最も近いところで10メートル程度しか離れていない。このため防音・振動対策を徹底し、遮音性を最大限に高めたことが施設の最大の特長だ。線路を貨物列車が頻繁に走行するため、列車の振動を最小限に抑えられるよう建物北側に防振地中壁を巡らせた。
 二つのホールの内装床と壁、天井には防振ゴムを挟み込む浮き構造を採用し、コンサートと音楽の練習を同時に行っても相互に干渉しない防音性を確保した。空調の配管内にも消音装置を施し、管を通って余計な音が伝わらないようにする。ホールの音響性能にも徹底的にこだわった。コンピューターで何度もシミュレーションを行い、音の響き方を計算。楽器などの反射音が室内にまんべんなく広がるよう、壁・天井の最適な角度と材料を割り出した。大ホールは、2階の客席両脇を前方に張り出させる「もみあげ式」の配置とし、聴衆が演奏者と一体となりライブを鑑賞できるようにした。
 建設地の東側には、11年に完成した図書館がある。図書館も建設中のホールも、城下町のイメージに合うよう勾配屋根と白壁を採用。周辺への圧迫感を減らすため低層の建物としている。新たなホールが完成すれば、白河駅周辺が市民の学習や芸術鑑賞の意欲を満たす文化・芸術の集積地として生まれ変わる。駅を挟み反対側にある白河小峰城跡地などとともに、観光交流を促す効果も期待される。

【橋梁って、本当に美しい・・・】米土木学会がフォトコンの結果発表

全体部門で1位となったAhmad Rosyadi さんの
「バリトー橋」(ASCE・FaceBookより)
 米国土木学会(The American Society of Civil EngineersASCE)が「橋梁フォトコンテスト」の入賞作品を発表した。すべての橋梁が対象の部門で1位となったのは、インドネシア・ボルネオ島のバリトー橋を写した1枚(撮影はAhmad Rosyadiさん)。インドネシア最大級の橋梁で、メーンスパンが230メートルの吊り橋だ。
  ほかにも海外の橋を写した作品が多く見られた。学生部門の次点作品は、インド・ムンバイのラジブ・ガンジー・シーリンク。主橋は最長支間250メートルの3径間斜張橋で、全長は5.6キロにも及ぶ巨大な海上橋だ。
  どの写真も絵のようで美しいが、目を引くのは新設橋部門の1位となった米テキサス州ダラスのマーガレット・ハント・ヒル橋。著名なスペイン人建築家で橋も数多く手掛けるサンティアゴ・カラトラバ氏が設計した。高さ120メートルのアーチ型主塔と、そこから伸びるケーブルが芸術的な造形を生みだしている。
  現在、ASCEのFaceBookページで「ビューワーズチョイス賞」の一般投票を受け付けている。「ほんとに写真なの?!」とびっくりする作品もあるのでぜひ見てください。



2015年6月24日水曜日

【じいじに頑張ってもらおう】日建協・女性技術者会議がゼネコン保育所整備など提案


 日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、植村芳輝議長)は22日、傘下組合の女性技術者が働き方の「ロールモデル」を議論する女性技術者会議を東京都内で開いた。13人の参加者が3班に分かれ、それぞれモデルを検討=写真。複数のゼネコンが連携した「ゼネコン保育所」や、子育て世代が交流する「ゼネコンママ会」の設置に加え、退職した男性らの「ゼネじじ」による子育てや若手技術者の支援体制の構築などを提案した。介護と向き合う体制の整備も課題に挙げた。
 女性技術者会議は、女性の視点から建設産業のワークライフバランス(仕事と家庭の調和)を議論するため09年度に設置した。女性技術者を増やす方策などを検討し、14年は建設産業に女性を増やすために、女性に合う作業着の導入や、女性のロールモデルの提示などを提案した。この日は「誰にとっても働きやすい建設産業を実現するために必要なこと」と題し、仕事と生活の両面から、22歳から定年までのロールモデルをあらためて検討してもらった。

 ◇ゼネコン保育所、「ゼネじじ」活躍を提案◇

 1班は、生活時間の確保や休日増が必要と指摘し、効率の高い業務手法の確立と併せ、「いつ業務から抜けてもいい状態が必要」と提案。子育てを産業として支援するために、複数の企業でゼネコン保育所を設置し、駅や自宅までの送迎も行う仕組みが効果的という案をまとめた。
 2班は、現場に余裕をもたらすために要員増加を求めると同時に、子どもが急病になった際の対応を同僚だけでなく同業者にも託せるような「ゼネコンマンション」への居住を提案。仕事を優先する人の中に結婚や出産の年齢が高くなるケースがあるため、「プライベートを話し合った上で進む道を決めるべき」という現実的な意見も提示した。併せて工事長などを経験して退職する55歳以上の「ゼネじじ」が、子育て支援など業界全体の問題に関与し、建設の楽しさを周囲の子どもに伝えるような仕組みが「入職の好循環になる」とした。
 3班は、女性技術者としての実績、能力の向上に取り組みながら、管理職の打診があった際には「自分、後輩にとってのプラスを考え、引き受けるか判断すべき」と主張。子育て支援と同様に、介護支援の必要性も指摘した。
 会合を締めくくった時枝将雄政策企画局次長は「働く者の目線で考えることができるのは労働組合だけ。ネットワークを活用し、よりよい産業にしていきたい」と述べた。

【日々刻々と進化中】三菱電機がリアルタイムレーザー点群生成技術開発

3D空間位置データのリアルタイム表示例

 三菱電機は23日、測量調査などの際の車両走行中に、3次元空間位置データをリアルタイムで作成できる「リアルタイムレーザー点群生成技術」を開発したと発表した。保有技術の高精度GPS(衛星利用測位システム)移動計測システム「モービルマッピングシステム(MMS)」を活用。計測後に必要だったデータ処理を行わずに、その場で3次元空間位置データを作れるようにした。今後、測量に加え災害対策、警備・監視など多分野への展開を目指し製品化を進める。

 ◇現場で3次元位置データ作成◇

 MMSは、GPSアンテナやレーザースキャナー、カメラなどの機器を車両に搭載し、走行しながら道路周辺の計測データを取得するシステム。測量や路面調査、トンネルの調査点検などに活用されてきたが、3次元空間位置データを作成する際は、取得データをGPS位置補正情報と組み合わせる事後処理が必要で、計測結果を現場ですぐに確認できない点が課題だった。
 そこで同社は、リアルタイムでデータを作成できるリアルタイムレーザー点群生成技術をMMSに付加し、計測結果を現場で確認できるようにした。事後処理にかかっていた8時間程度の作業を省くことができ、測量業務の効率化が実現する。災害時には、被害状況を即座に判断することで救助・復旧活動の早期展開を支援することもできる。計測結果は、無線により遠隔地での同時モニタリングが可能だ。
 短時間での計測データ比較を利用し、イベント会場での不審物の早期発見など警備・監視分野での活用も期待。新たな分野でのニーズ獲得に向けて、順次製品化を進めていく方針だ。

【Woman】鹿島東北支店土木部技術設計グループ・近藤奈津子さん


 ◇フィールドで仕事がしたい◇

 仙台市に生まれ、岩手県の大学で農業土木を学んだ。学生時代から野外での活動や体を動かすことが好きで、「フィールドに出て仕事をしたい」との思いが強く、建設業を志望。最初に採用面接を受けた鹿島にとんとん拍子で入社が決まり、土木技術者の道に進んだ。
 大学3年生の時、鹿島が施工を担当していた胆沢ダムを見学し、土木工事のスケールの大きさに魅了された。その数年後、自らが鹿島の社員として胆沢ダムに配属されることになるとは思ってもみなかったという。
 入社後、胆沢ダムの現場事務所に4年勤め、施工監理の基礎を身に付けた。工事が円滑に進むよう準備や調整を行い、作業員に指示を出す日々。ダム現場に配属され4年目に試験湛水を迎え、大きな達成感を覚えるとともに土木工事の面白さを知った。
 約700人いる支店職員のうち女性技術者は3人と少ないが、女性だから苦労したということは特にないという。初めて現場に出た時は「むしろ周囲がとまどっているようにも見えたが、すぐに溶け込むことができた」。
 現在は東北支店で東北6県の土木現場の設計支援などを担当している。この先、再び現場に配属されることを視野に入れながら「設計的な知見を現場管理に生かすことができるよう」、日々の業務に取り組んでいる。(こんどう・なつこ)

【働き方を変えてみよう】建設技術研究所が朝型勤務制度を試行

 建設技術研究所は、働き方改革の一環として、7月1日から「朝型勤務制度」を試行する。対象は約1400人(契約社員を含む)。午前5~8時に出勤して働いた社員の時間外手当を割り増しする。朝型勤務は生産効率の向上、午後5時以降の残業時間の減少、家族と過ごす余暇時間の確保、社員の健康維持・増進につながるとみている。試行期間は9月30日まで。
 日本経団連からの朝型勤務を奨励する要請文を踏まえ、同社は夕方以降の社員の余暇時間を充実させる生活スタイルへの変革を目指す朝型勤務制度の試行を決めた。
 現在は午前8~9時に働いた社員のうち、月給制の社員に時間外手当として通常の130%分を支払っている。年俸制の社員には手当の割り増しはなかった。
 朝型勤務制度では、午前8~9時は従来と同様の仕組みを継続。午前5~8時に出勤して始業した場合、月給制の社員は時間外手当割増率を130%から160%に引き上げる。年俸制の社員は早朝勤務手当(1時間当たりの基準内給与に0・25を乗じた額)を支給する。
 同社は試行期間終了後に社員にアンケートを行い、改善点についての意見を収集。本制度化に向けた検討を進める。

【女性目線で環境づくり】日測協が「女性の技術力向上委員会」設置

委員会のメンバーになった8人(右から4人目が杉森委員長)
 日本測量協会(日測協、村井俊治会長)は23日、「女性の技術力向上委員会」を設置した。技術力の向上や最新技術の習得に向けた方策を検討するとともに、測量業界への女性の入職促進策、女性が働き続けられる職場環境の改善策を議論し、来年5月に「アクションプラン」をまとめる。
 日測協は、プランに盛り込まれた施策を来年度から実行に移す。
 設立時のメンバーは朝日航洋、国際航業、パスコ、アジア航測4社に勤務する8人。委員長には朝日航洋の杉森純子さんが就いた。今後、約10人のメンバーの増員を行う。7月に初会合を開く。
 同協会は、技術者不足が深刻化する中、女性技術者の入職促進と働きやすい職場づくり、結婚や出産で退職した女性技術者が職場復帰できる環境の整備が急務と判断。多岐にわたる業務分野(実測、航測、製図、設計、データ作成など)の知識や最新技術の習得が、家庭や育児などの事情に応じた部署異動による雇用継続や、職場復帰をしやすくするとみて、専門の委員会を設置して方策を検討することにした。
 当面の検討事項には、▽月刊「測量」などの媒体での情報発信といった入職促進策▽基礎から学べる講習会(多技能習得向け)▽さまざまな業務分野の女性との交流の場づくり▽場所も時間も自由なeラーニングで学ぶ方策-などが挙がっている。
 23日に東大弥生講堂で行われたイノベーション大会で同委員会の設立を発表した村井会長は「測量業界で働く女性測量士は全体の2%弱と少ないが、女性が活躍する企業では男女協働の相乗効果があるとの報告も受けている。当協会は世界に例のないレベルの男女協働型測量界を創生したい」と述べた。

【ガンバ大阪の新拠点】吹田市立スタジアムの屋根免震建て方が完了

屋根架構パース
◇3Dトラス構造採用、鉄骨重量削減と工期短縮を実現◇

 竹中工務店は、大阪府吹田市で進めている「(仮称)吹田市立スタジアム」の建設工事で、屋根の鉄骨建て方工事を完了した。大規模スタジアムでは国内初となる屋根だけを免震装置で支える構造を採用。縦・横・斜めの3方向に鉄骨トラスの梁を架ける「3Dトラス構造」も適用した。二つの技術の導入によって、従来方式と比べ、屋根に使用する鉄骨重量を約3割削減し、屋根の鉄骨建て方工程を2カ月短縮。最大3センチの屋根の熱伸縮も屋根免震で水平方向に逃がすことも可能にした。
 同スタジアムは、募金で建設費を賄い、サッカーJリーグの「ガンバ大阪」のホームスタジアムとして使用される。同社は、スタジアム建設募金団体(吹田市)が行った設計・施工者を決める指名プロポーザルに参加。限られた建設費でプロサッカーの試合が行える質の高いスタジアムを施工するため、屋根の施工計画に二つの技術の導入を提案し、受注を決めた。
 スタンドを覆う屋根の面積は約2万3000平方メートル、総重量は約3500トン。免震装置はスタンド外周に16基(高減衰積層ゴム8基、直動転がり支承8基)設けた。
 免震装置で支えることで、地震時の屋根の揺れを約1割低減でき、損傷も防止できる。構造部材の断面寸法も小さくできるため、視認性の向上や軽量化とコスト削減につながる。直射日光を受ける鉄骨トラスの熱伸縮にも対応できる。屋根免震構造は特許を出願中だ。
 3Dトラス構造は、スタンド外周部の柱に向け鉄骨トラスを3方向に架ける仕組みで、ロの字形状の屋根を形成する。
 このスタジアムの場合、長辺と短辺の2方向にトラス構造の梁を設ける従来方式を採用すると、柱スパンが最大200メートルにも及ぶが、3Dトラス構造なら半分の約100メートルに抑えられる。部材断面も縮小でき、屋根に使う鉄骨重量も約3割軽くできた。
 トラスの弦材も既製品の角形鋼管を使い、工期の短縮や仮設工事費、鉄骨工事費の削減に貢献した。3Dトラス構造は特許登録済み。
 同スタジアムは13年12月1日に着工。規模はRC・S造6階建て延べ6万6355平方メートルで4万人を収容する。スタンド部分には制震構法を採用している。完成は15年9月30日の予定。コンストラクション・マネジメント(CM)業務を安井建築設計事務所が担当している。

2015年6月23日火曜日

【5年ぶりのお目見え】下久保ダム(埼玉県神川町)が4門放流するぞー


 埼玉県神川町にあり水資源機構が管理する下久保ダムが6月28日、クレストゲート(非常用洪水吐)と常用洪水吐の点検放流を実施する。この放流、ただの放流とは訳が違う。それはクレストゲート2門と常用洪水吐2門から同時に水を流す、4門一斉放流が見られるのだー。
 4門一斉放流の実施は10年6月以来5年ぶり。水資源機構が同ダムの管理を開始した1969年以降で見ても3回目という、レア中のレアな出来事。管理事務所は、今回の点検放流に合わせて管理用エレベーターの開放、テレビドラマのロケに使われた場所の案内、地元の名産品が手に入る臨時売店などを行うほか、群馬県坂東発電事務所の協力を得て、水力発電所の見学会も開催するという。
 天候次第でスケジュールの変更はあるそうだが、現時点では午前10時に放流を開始し、午後2時まで見ることができる。ロケ地見学は全部で5回行う予定で、先着順で午前10時から整理券を配布するそう。所要時間は約1時間。車でお越しの際は120台収容可能な「三波峡終車場をご利用下さい」とのこと。
 下久保ダムの点検放流は、5月の降雨量が少なく、貯留水位が低下していたため、開催できるかどうか微妙なところだったが、ここ数日まとまった雨が降り、放流可能な水位に達したそうだ。4門一斉放流、きっと大迫力なんだろーなーと思いつつ、当日見学に行かれる方は、くれぐれも安全運転で。ダムカレーやダム氷を食べたい方は「近傍に召し上がれる店舗があります」とのことなので、そちらもぜひぜひ。

【震災復興を強力後押し】JICAがネパールで耐震住宅のモデル紹介

 

 国際協力機構(JICA)は、大地震に見舞われたネパールの復興支援として災害に強い住宅を紹介するイベントをカトマンズ市で開催する。住宅再建が喫緊の課題になっている状況を踏まえ、現地で調達可能な資材を使い、簡易で安価に住宅が建設できる施工事例を紹介するという。
 展示するのは、都市向けモデルとして鉄筋コンクリート(RC)構造住宅2棟と、3~5階建て民間住宅の耐震補強法に加え、地方山間部・農村部向けモデル。避難所などが設けられない山岳地域の農村エリアでは、被災場所に公共の支援でテントシェルターなどを支給し、その資材をそのまま活用して耐震性を持たせた石積み住宅を建設するという、対応方法を提案する。
 イベント会場はカトマンズ市内にあるトリブバン大学工学部キャンパス内。6月24日と25日の2日間に渡って開催する。JICAは、ネパールの震災復興支援を本格化させており、インフラ復旧などの調査業務を発注するなど取り組みを着々と進めている。

【記者手帖】男性技術者の朝の参拝


 出勤途中に通り掛かる神社の前で、作業服の初老の男性をよく見掛ける。ヘルメットを抱え、左腕には「監理技術者」の黄色い腕章。参道には入らない。安全靴のかかとをそろえ、いつも鳥居の前で境内に向かって頭を下げている。現場が動きだす前のひととき、引き締まった表情を見ると、こちらも背筋が伸びる思いがする◆全国安全週間を前に建設会社の安全大会の取材が続いている。これまでの取材を振り返ると、労働災害を防ぐための対策は作業手順の順守や指差し呼称、リスクアセスメントなどさまざまだが、結局はお互いへの思いやりや気配り、優しさに尽きるように思う◆今朝も例の男性技術者を見掛けた。真剣な面持ちで頭を下げる姿から、現場の全員が一日を安全に過ごし、無事に家に帰れるようにと願う思いが伝わってくるようだった◆男性技術者の家族や仲間は、毎朝の参拝のことを知らないかもしれない。でもきっと、そんな見えない思いのようなものがものづくりの現場や社会を支えているのだろう。現場へ向かう技術者に心の中で「ご安全に」と声を掛けた。

【見ることで学べることがある】首都高速会社が土木系大学生招き都内で点検・補修実演


 首都高速道路は、高速湾岸線高架下の辰巳補修基地内(東京都江東区)に大学で土木工学を専攻する学生56人を招き、点検・補修モンストレーションを行った。今年で15回目の「首都高施設安全月間」の取り組みの一環。首都高速道路の事故防止や安全性向上につながる技術・システムなどを公開した。  学生らは複数の班に分かれ、点検車両や点検機器、補修技術などを見て回った=写真。実際に使われている高所作業車のデッキに乗り、鋼橋の亀裂調査や点検業務を体験。超音波を利用して鋼構造物に入った亀裂を確認する非破壊検査・磁粉探傷試験など、さまざまな点検・補修技術を間近で見学しながら、担当者の説明に熱心に耳を傾けていた。

【スタジアム整備、本当に多いなー】栃木県が総合スポーツゾーン再整備構想/宇都宮市に2・5万人収容新スタジアム


新スタジアムの完成イメージ
 栃木県は、宇都宮市西川田に各種のスポーツ施設を再整備する「総合スポーツゾーン構想」のうち、中心的施設となる新スタジアムと新武道館の基本設計の概要を公表した。新スタジアムは延べ約4万平方メートルの規模で工事費は約173億円(税抜き)、新武道館は延べ約9000平方メートルの規模で、工事費は約58億円(同)を見込む。

 新スタジアムの基本・実施設計は久米設計・AIS総合設計(宇都宮市)・本澤建築設計事務所(同)JV、新武道館の基本・実施設計はAIS総合設計・フケタ設計(宇都宮市)・田村忠設計事務所(同)JVが担当している。新スタジアムの構造は、躯体がRC造4階建て、屋根は膜構造で鉄骨架構を採用する。観客席は車いす席を含め約2万5000席を確保する。第1種公認陸上競技場(全天候型舗装、9レーンの400メートルトラック)と、Jリーグの施設基準に準拠したサッカー場(天然芝105メートル×68メートル)を兼用する。

 ◇新武道館は延べ9000平米規模、17年度着工めざす◇ 

 16年度上半期に実施設計を完了。16年度末の工事契約、17年度上半期の着工、19年度の完成を目指す。19年度内に確実に完成させるため、躯体のプレキャスト化を推進。内装材は石材・木材・陶器など県産品を積極活用する。
 新武道館は武道場と弓道場で構成し、構造はRC造2階建て(一部木造+鋼ハイブリッド構造)。武道にふさわしい重厚な構えを持った大屋根を採用。県産木材を可能な限り活用する。
 メーン武道場は柔剣道場の兼用で6面を確保する。観客席は約1500席(車いす席含む)。サブ武道場も柔剣道場を兼用し、4面を確保。2階に観覧スペースを設ける。弓道場は近的12人立ち、遠的6人立ちを確保し、観客席約200席(車いす席含む)を設ける。このほかに中会議室2室、小会議室2室を設ける。
 16年度上半期に実施設計を完了。同下半期に既存プールの解体工事に着手(飛び込みプールを除く)し、17年度下半期に着工(弓道場の遠的的場を除く)する。19年度末に第1期工事を完了。20年度下半期に第2期工事(既存飛び込みプール解体と遠的的場新築)に着手。21年度早期の完成を目指す。

【回転窓】安全追求は特別なことではない


 7月1日に始まる全国安全週間に向けて建設業界ではこの時期、安全大会の開催が相次ぐ。本紙も連日、ほぼすべてのページに各社の安全大会開催を伝える記事が載り、「死亡災害ゼロ目指す」「初心に帰ってゼロ災継続」といった見出しが躍る▼労働災害の発生件数が工事需要の増減と相関関係にあることは、過去の統計を見ても明らか。09年以降、死傷者数は横ばい状態が続いていたが、震災復興や景気回復による需要増が鮮明になった昨年からは増加傾向に転じている▼数多く掲載される安全大会の記事の一つに目が留まった。22日付5面にあった小俣組(横浜市南区、小俣務社長)の記事。同社は大正11(1922)年の創業以来、死亡事故ゼロを続けているという。東京五輪後にやってくる100周年を死亡ゼロで迎えることを当面の目標に掲げる▼「安全第一」という言葉が生まれたのは20世紀初頭の米国。ある鉄鋼メーカーが掲げた経営方針は、結果的に働きやすい職場と効率的な人材育成につながった▼安全の追求は決して特別なことではない。小俣組の記事に、この言葉の重みをあらためて感じた。

2015年6月22日月曜日

【習うより慣れろ!?】高校生が鉄筋組み立てに挑戦

慣れない作業に高校生達は四苦八苦
千葉県立京葉工業高校(千葉市稲毛区、關敏昭校長)は19日、鉄筋組み立ての講習会を開いた。千葉県鉄筋業協同組合(池田愼二理事長)が協力し、講師として会員企業から10人を派遣。講習会には建設科の3年生32人が参加し、講師の指導を受けながら鉄筋の組み立てに取り組んだ。施工現場の専門的で実践的な技能・技術の習得と建設業への理解を促し、生徒の職業観を養うのが狙い。同校では今回が5回目の開催となる。
 冒頭、關校長は「きょうは皆さんのためにたくさんの人が集まった。この講習会が有意義なものになるようにして下さい」とあいさつした。
 続いて池田理事長は「あいにくの雨だが、雨をよけて講習ができるよう準備をしていただき、この講習会にかける学校側の熱い思いを感じている。先生方の思いに負けないようにわれわれも頑張りたい。きょうの講習を将来に役立て、業界に入ってもらって一緒に仕事ができたらうれしい」と述べた。
 参加した32人(建設、土木コースそれぞれ16人)は、鉄筋工事の歴史や組み立ての現場について、同協会青年部の池田洋一氏から講義を受けた後、6班に分かれて鉄筋の結束など基礎的な作業に取り組んだ。講師が各班に1~2人付き、熱心に指導。その後、2級鉄筋組立技能士試験の課題実習に挑戦した。

【水中ロボでダムの健康チェック】五洋建設が大水深構造物調査ロボ開発

開発した水中調査ロボ「CETUS-V」
 五洋建設は、大水深構造物の点検用に遠隔操作無人探査機(ROV)を用いた水中調査ロボットを開発した。計測用の光学カメラや音響カメラによる画像取得機能に加え、調査箇所を清掃(ケレン)した上で鋼材の肉厚測定やコンクリートの打音検査を行える機能も搭載し、高精度の点検を実現する。国土交通省の公募事業として、最深部約140メートルの宮ケ瀬ダム(神奈川県)で実証試験を行い、性能を確認した。濁り対策などの改良を加え、海洋・港湾構造物にも展開していく。
 開発した「CETUS―V」は、長さ80センチ、幅50センチ、高さ48センチ。検査面をケレンする清掃装置、コンクリートの健全度を把握する打音検査装置、鋼材の肉厚を計測する肉厚計測装置を備える。
 前後、左右、上下の移動は6個のスラスターで行う。計測用光学カメラで対象構造物のクラックの長さや幅を把握し、音響カメラは濁った水中での画像取得に使う。最深150メートルまで対応できる。
 汎地球測位航法衛星システム(GNSS)によるブイを水面に浮かべ、超音波測位と合わせて機体の位置を検出する。遠隔操作は1人で行い、通常3~5人のチームで調査に当たる。計測データはリアルタイムでパソコンに取り込み、画面で確認。調査後に詳細な解析をし、構造物の健全性を評価することも可能だ。

宮ヶ瀬ダム堤体面を清掃後に撮影した画像
 昨年11月に宮ケ瀬ダムで行った実証実験では、国交省が設置した試験体や堤体の鮮明な画像を取得。高位、低位の洪水吐きや水深127メートルの水底付近まで潜航した。試験体のクラックの大きさなどを正確に把握でき、高い評価を得たという。
 15年度の国土交通省の公募事業「次世代社会インフラ用ロボット 現場対象技術(水中維持管理技術)」に参加を予定。ダムの堤体やゲート設備などをターゲットに技術の改良を検討する。将来的にはROVに搭載する検査装置の高度化や自律航行技術の開発も進め、さまざまな大水深域の構造物に適用していく。
 水深40メートル以深になると、潜水士による調査は安全性や効率の面で難しいとされる。従来の水中調査ロボは、点検用の機能として、構造物の状態を把握するための画像取得に特化したものが大半で、効率的でより高度な点検技術が求められている。

【回転窓】「山」を知る

 「鏡をツブすな」。主人公(石原裕次郎)の父・源三がトンネルの切羽が崩れる中、危険を顧みず、丸太を持って崩壊を止めようと切羽に向かっていく。映画「黒部の太陽」の1シーンだ▼トンネル工事は今、NATMが全盛で、在来の「矢板工法」に比べると、安全性が格段に高まっている。それでも自然が相手なだけに、油断をすれば、「湧水」や「肌落ち」「盤ぶくれ」などのトラブルが襲い掛かる▼日本トンネル専門工事業協会(野崎正和会長)が、技術の伝承を目的に矢板工法の施工法やその経験談をまとめた冊子「トンネル技術・技能の伝承その2/トンネル掘削技術」を作成した▼ロックボルトや吹き付けコンクリートがない時代に、先達が複雑な日本の地山を掘削するためにどのような技術や技能を駆使したのかが記載されている。その中には、鍛冶や木材加工の技術を駆使して支保工をつくる「斧指(よきさし)」という職種も紹介されている。今はもうない職種という▼「黒部の太陽」では、切羽が崩れる前に誰かが「山が鳴いている」と叫ぶ。この冊子を通じて、若い技術者に「山」をもっと知ってほしい。

【凛】経済産業省商務情報政策局製品安全課係長・鎌田いづみさん


 ◇出向で奮闘、建設業の魅力知る◇

  国土交通省に2年間勤務し、6月1日付で後ろ髪を引かれるように古巣の経済産業省へ戻った。  国交省では、土地・建設産業局建設市場整備課労働資材対策室の労働係長として、主に技能労働者育成に関連する施策を担当した。業界の会合に出席する機会も多く、持ち前のキャラクターで場を明るくすることもしばしば。だが、出向当初は「建設業の勝手が分からず、なじめないことに悩んだ」と振り返る。  13年7月に太田昭宏国交相が、初めて富士教育訓練センター(静岡県富士宮市)を視察。そのための事務や調整を託された。悩む暇もなく、仕事に没頭した。視察を終えた太田国交相は、センターの機能を拡充する方針を表明。老朽化した施設の建て替え計画が大きく動きだすきっかけになったことが特に印象深いという。  9月16日に予定されている建て替え工事の起工式には出席できそうにないが、「施設が新しく生まれ変わるのは今から楽しみ」と笑顔を見せる。  経産省に戻る内示があった後、ある専門工事業団体のパーティーで「中締めのあいさつ」という大役を任されたのも、業界の発展に心を尽くした証しだ。「建設の『け』の字も知らなかった自分を受け入れてくれた建設業界の魅力を知るにつれ、『皆さんに笑顔でいてほしい』と心底思えるようになった」。(かまた・いづみ)

【中堅世代】それぞれの建設業・99

技術革新で現場管理のあり方も激変する
 ◇道具に使われる野ではなく、使いこなせ◇

 現場で新しいことをやろうとすると、昔は職人たちから嫌な顔をされた。情報化施工などでIT関連の技術を導入するのにも、理解してもらうのに一苦労だったが、最近は職人側の拒否反応が薄れてきた。ゼネコンの建築技術者として長年、数多くの現場を見てきた近藤太一さん(仮名)はそう実感する。
 現場管理の効率化の一環でiPadなどのタブレット型携帯端末を職長に持たせても、すぐに慣れて日常作業で活用している。現場管理システムの高度化が急速に進む中で、職人側の順応性も高まっていると感じる。
 「アラフィフ(50歳前後)のわれわれガラケー世代と違い、20~30代の職人はほとんどがスマートフォンを使いこなす。パソコンなどITツールが幼いころから身近にあるため、最新のシステムなども違和感なく受け入れるのでは」
 IT分野の技術革新は目覚ましい。携帯端末も多機能・高性能化が進み、オフィスのパソコンと同じようなことを手元でできるようになっている。現場を離れて本社の会議などに出ていても、携帯端末から現場の様子を見て容易に指示を出せる。現場の技能者だけでなく、管理するゼネコン側の技術者不足も深刻化する中で、施工管理のIT化が今後さらに加速することは間違いない。
 近藤さんは所長として工事現場のかじ取りを任されるようになった。最近の人手不足には悩まされる。担当する現場からかなり遠方の業者にも声を掛け、人をかき集めている。
 「昔は同業他社の色が濃い協力会社を使うことには多少なりとも抵抗感があったが、今はそんなことを言っている余裕はない。この先、少子高齢化がさらに進めば、工事量が減ったとしても、この人材不足感が当たり前になるかもしれない」
 危機意識を強めるゼネコン各社にとっては、現場の省力化が共通の課題だ。ITツールをさまざまな場面に組み込み、いかに効果的に使いこなすか。近藤さんも、従来の管理手法にとらわれず、新技術を積極的に取り込みながら次世代の管理システムを模索する毎日だが、従来のシステムを一気に変革することには不安も感じる。
 便利なITツールが次々と開発される一方で、情報セキュリティーなどの安全対策が後手に回っていると思うからだ。
 最新の情報管理システムを導入しているはずの国家機関や、一流企業でも、不正アクセスや情報漏えいなどの事故が目立つ。こうした状況を目の当たりにすると、発注者から職人まで、多種多様な人たちが関わり、さまざまな情報が集まる現場をインターネットを通じて一元管理することには大きなリスクを感じる。
 必要な所に適切に使えば、ITツールは現場作業を飛躍的に改善させられる。しかし、悪意を持った人が使ったら…。機密情報などがネットを通じて拡散すれば抑えることが難しい。被害の及ぶ範囲は従来の比ではない。
 「ITツールに限らず、人は常に道具に使われるのではなく、使いこなす立場にいなければ」。技術だけでなくモラルも含め、次代を担う現場管理者をどう育てるか。近藤さんは日々考えている。

【駆け出しのころ】東鉄工業取締役常務執行役員土木本部長・井上和男氏


 ◇現場と人よく見てまとめ上げる◇

 都内で土木会社(とび工事)をやっていた叔父から、小さいころに東京タワーや橋梁の鉄骨組み立て工事などの話をよく聞かされていました。自然に土木の道に入ったという感じです。大学では鉄道工学の研究室に所属していたこともあり、就職担当の教授に東鉄工業を勧められました。入社する時に知ったのですが、実は叔父の会社が東鉄工業の協力会社をしていたんです。これも縁かなと思い入社しました。
 昭和49(1974)年に入社した五十数人の同期と、代々木オリンピック村で10日間ほど研修を行いました。その時に配属先の希望を聞かれ、「出身の千葉以外どこでもいいです」と答えたのですが、配属先は千葉支店でした。
 最初の現場は線路と高速道路を立体交差化する工事で、仮線を敷設してから鉄道橋を造る仕事でした。新たに始まる現場だったので、測量から実務を始めることができました。測量に明け暮れた3カ月。ここで機器の取り扱いや校正、水準測量、平板測量、カーブセッテングなど測量に関する一通りのことを経験しました。測量は誤差の調整が大切だということも学びました。満鉄帰りの大先輩にみっちり仕込まれました。
 次に住宅公団の下水本管敷設工事へ移りました。レベル、トランシット、カメラ、A1図面を抱えて一日中現場に出ていました。朝、現場でその日やる仕事の打ち合わせを行い、作業員と一緒に作業をしたり、施工図を描いたりという毎日でした。所長と主任が他の現場も掛け持ちしていたため、現場管理は発注者の監督さんが教えてくれました。「仕事は自分で覚え、自分で判断する」という習慣が付いたのはこのころからです。
 体を動かすことが好きだったので、掘削や杭打ち、山留め、溶接・溶断、鉄筋・型枠組み、バックホウやダンプの操作と何でも自分から手を出しました。現場では協力会社の社長や職長、作業員など誰とでもよく話をし、多くのことを覚えました。次第に現場で同じ作業をしていても、無駄に動く人、無駄なく動く人が分かってきます。現場と人をよく見る習慣が自然と身に付いてきました。この仕事は、現場と人をよく見て、誰とも何でも話をすることが大切なんです。
 オーケストラの指揮者は作曲者の意思を追求し、適材適所で音を使い分けて完成度を高めていきます。同じように施工者は、工事の目的を理解した上で現場と人をよく見て、適材適所で材・工・機を投入し、安全や品質、施工力、技術力などの向上を図り、工事全体をまとめ上げていきます。若い人たちにはその力を養ってほしいと思っています。
 (いのうえ・かずお)1974年東海大工学部土木工学科卒、東鉄工業入社。東京支店副支店長、東京土木支店副支店長兼土木部長兼積算部長、執行役員東京土木支店長、同横浜支店長、常務執行役員埼玉支店長などを経て13年6月から現職。千葉県出身、64歳。

20代後半、力自慢で作業員と共に現場で汗を流していた

【サークル】長谷工グループ・着付クラブ


 ◇「美しい所作学び、しぐさまで美しく」◇

 26年ほど前に着物好きが集まる同好会としてスタートし、その後、会社公認の部に昇格。現在は長谷工グループ各社の女性社員約13人で活動中だ。「着物を美しく装うことにより、日本の素晴らしい文化を継承していきたい」という先生の教えの下、毎月、着付けや着装した際の立ち居振る舞いなどを楽しみながら学んでいる。
 浴衣の着付けから始めた初心者も、振り袖、留め袖などの着装だけでなく、自分で着ることのできない人に着付けて上げられるようにもなる。代表の宮坂典子さん(広報IR部広報室)は「美しい所作を学ぶことで、しぐさまで美しい女性を目指しています」と笑みをこぼす。
 仕事帰りに浴衣を着て神楽坂のほおずき市に繰り出すのが年に一度の恒例行事。このほかグループ社員を対象にしたイベント「ゆかたで盆踊り大会」を会社と共催で開いている。今年は7月31日に開催予定で約35人の参加を見込んでいる。
 女性社員が少なく、着物を持っていない人が多いため、着付けを始めたいと思う部員がなかなか増えないのが悩み。宮坂さんは「イベントを通じて部員を増やしたい。着付けをすることで、自然と立ち居振る舞いが美しくなれる。着物は日本の伝統文化として大切なものだと思っています」。