2015年6月18日木曜日

【東北の現場から】矢本石巻道路新天王橋上部工(宮城県石巻市)

工事が大詰めを迎えた新天王橋上部工
 ◇現場溶接で橋桁を軽量化◇

 三陸沿岸道路・矢本石巻道路「新天王橋」(宮城県石巻市)の上部工が近く連結し、工事が大詰めを迎える。矢本石巻道路の4車線化に伴い、旧北上川をまたぐ橋長430メートルの橋梁の拡幅を行うもので、地盤が軟弱なため地盤改良を入念に実施するとともに橋桁を徹底的に軽量化するなどの措置を講じながら工事を進めている。上部工は川田工業が担当。連結後は壁高欄などの仕上げを行い、10月の完成を目指す。
 新天王橋は下部工を戸田建設、上部工を川田工業が担当。下部工は今春までに施工を終え、上部工の進ちょく率は16日時点で6割強となっている。橋梁形式は5径間連続鋼床版箱桁橋。橋長430メートルのうち右岸側の約半分が旧北上川の真上を通過する。幅は10メートル。川田工業は工場製作、輸送、架設を担当。昨年9月に四国の工場で桁の製作に着手。現地での架設は10月からスタートした。
 旧北上川の真上に当たる部分は、送り出し工法で構築する。中央のP3橋脚から右岸に向かい、段階的に橋桁を送り出す。送り出し作業は2月、4月、5月の3回に分けて実施した。橋桁は現在、5メートル程度高い位置にあり、来週中に所定位置まで降下させ、橋桁を連結する予定になっている。

 ◇軟弱地盤に対応し施工工夫◇

 現場周辺は地盤が特に軟弱で、橋脚のスパンも72~96メートルと長いため、施工する上で工夫が求められた。念入りな地盤改良に加えて、構造物を安定させるため最長76メートルの杭を地中深くに打ち込んだ。橋桁も徹底的に軽量化を図った。鋼床版を採用するとともに、ボルトの数を削減するため、総延長約2220メートルに及ぶ継ぎ目を現場溶接で施工した。溶接作業は寒風吹きすさぶ橋の上部で作業員が真冬に行った。
 川田工業の長谷川豊所長は「作業前に雪をどけて乾燥させるのに手間どった」だけでなく、川沿いの現場付近は西からの強風にあおられる日が多く、「飛散による事故がないよう特に留意しながら作業を進めた」と振り返る。矢本石巻道路は、宮城県東松島市川下(鳴瀬奥松島インターチェンジ〈IC〉)から石巻市桃生町太田(桃生豊里IC)に至る延長26・5キロの自動車専用道路。東北地方整備局が渋滞解消を図るための4車線化工事のほか、石巻河南~河北間に石巻北IC(仮称)を設置する工事などを進めている。

橋桁はまもなく連結する予定
今秋には、新天王橋の真横を並走する国道45号天王橋の架け替え工事もスタートする。東北整備局仙台河川国道事務所の才川厚生建設監督官は「石巻北ICの設置と4車線化が完成すれば、石巻赤十字病院への救急搬送が大幅に効率化される」と整備効果を説明する。石巻北ICは石巻河南ICの北側約2キロ地点に設置され、インターを降りてすぐ病院に乗り入れられるようになる。
 4車線道路の開通目標は16年度。東松島から石巻にかけての交通渋滞が解消され、仙台から宮城県北部などへのアクセス性が格段に向上、沿岸被災地の円滑な復興と経済振興に期待がかかる。

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