2015年6月22日月曜日

【回転窓】「山」を知る

 「鏡をツブすな」。主人公(石原裕次郎)の父・源三がトンネルの切羽が崩れる中、危険を顧みず、丸太を持って崩壊を止めようと切羽に向かっていく。映画「黒部の太陽」の1シーンだ▼トンネル工事は今、NATMが全盛で、在来の「矢板工法」に比べると、安全性が格段に高まっている。それでも自然が相手なだけに、油断をすれば、「湧水」や「肌落ち」「盤ぶくれ」などのトラブルが襲い掛かる▼日本トンネル専門工事業協会(野崎正和会長)が、技術の伝承を目的に矢板工法の施工法やその経験談をまとめた冊子「トンネル技術・技能の伝承その2/トンネル掘削技術」を作成した▼ロックボルトや吹き付けコンクリートがない時代に、先達が複雑な日本の地山を掘削するためにどのような技術や技能を駆使したのかが記載されている。その中には、鍛冶や木材加工の技術を駆使して支保工をつくる「斧指(よきさし)」という職種も紹介されている。今はもうない職種という▼「黒部の太陽」では、切羽が崩れる前に誰かが「山が鳴いている」と叫ぶ。この冊子を通じて、若い技術者に「山」をもっと知ってほしい。


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