技術革新で現場管理のあり方も激変する |
現場で新しいことをやろうとすると、昔は職人たちから嫌な顔をされた。情報化施工などでIT関連の技術を導入するのにも、理解してもらうのに一苦労だったが、最近は職人側の拒否反応が薄れてきた。ゼネコンの建築技術者として長年、数多くの現場を見てきた近藤太一さん(仮名)はそう実感する。
現場管理の効率化の一環でiPadなどのタブレット型携帯端末を職長に持たせても、すぐに慣れて日常作業で活用している。現場管理システムの高度化が急速に進む中で、職人側の順応性も高まっていると感じる。
「アラフィフ(50歳前後)のわれわれガラケー世代と違い、20~30代の職人はほとんどがスマートフォンを使いこなす。パソコンなどITツールが幼いころから身近にあるため、最新のシステムなども違和感なく受け入れるのでは」
IT分野の技術革新は目覚ましい。携帯端末も多機能・高性能化が進み、オフィスのパソコンと同じようなことを手元でできるようになっている。現場を離れて本社の会議などに出ていても、携帯端末から現場の様子を見て容易に指示を出せる。現場の技能者だけでなく、管理するゼネコン側の技術者不足も深刻化する中で、施工管理のIT化が今後さらに加速することは間違いない。
近藤さんは所長として工事現場のかじ取りを任されるようになった。最近の人手不足には悩まされる。担当する現場からかなり遠方の業者にも声を掛け、人をかき集めている。
「昔は同業他社の色が濃い協力会社を使うことには多少なりとも抵抗感があったが、今はそんなことを言っている余裕はない。この先、少子高齢化がさらに進めば、工事量が減ったとしても、この人材不足感が当たり前になるかもしれない」
危機意識を強めるゼネコン各社にとっては、現場の省力化が共通の課題だ。ITツールをさまざまな場面に組み込み、いかに効果的に使いこなすか。近藤さんも、従来の管理手法にとらわれず、新技術を積極的に取り込みながら次世代の管理システムを模索する毎日だが、従来のシステムを一気に変革することには不安も感じる。
便利なITツールが次々と開発される一方で、情報セキュリティーなどの安全対策が後手に回っていると思うからだ。
最新の情報管理システムを導入しているはずの国家機関や、一流企業でも、不正アクセスや情報漏えいなどの事故が目立つ。こうした状況を目の当たりにすると、発注者から職人まで、多種多様な人たちが関わり、さまざまな情報が集まる現場をインターネットを通じて一元管理することには大きなリスクを感じる。
必要な所に適切に使えば、ITツールは現場作業を飛躍的に改善させられる。しかし、悪意を持った人が使ったら…。機密情報などがネットを通じて拡散すれば抑えることが難しい。被害の及ぶ範囲は従来の比ではない。
「ITツールに限らず、人は常に道具に使われるのではなく、使いこなす立場にいなければ」。技術だけでなくモラルも含め、次代を担う現場管理者をどう育てるか。近藤さんは日々考えている。
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