2015年6月20日土曜日

【技術と情熱で国際貢献】ネパールとインド結ぶ山岳道路が完成

山肌を縫うように整備された道路
4月の大地震で大きな被害を受けたネパール。中国とインドに挟まれ、国土の約8割が山岳地帯というこの国では、陸路が物流と経済発展の生命線といえる。そのネパールで今年3月、首都カトマンズと南のインド国境を結ぶ延長160キロの「シンズリ道路」が日本の無償資金協力で完成した。標高差が1000メートルもある山岳道路で、1996年に着工し、安藤ハザマが全区間の施工を手掛けた。内戦や動乱をくぐり抜けて約20年の歳月をかけ、総勢450万人が関わったプロジェクトを紹介する。

 ◇延長160kmのシンズリ道路、安藤ハザマ20年かけ建設◇

カトマンズから南の平野地帯タライを経てインドにアクセスする道路は従来、カトマンズから西に抜けてプリチビ道路を南下するルートしかなかった。このためネパール政府は、60年代に東に抜けるルートを計画したが、山越えなどの技術的な難しさから頓挫。その後、ネパール政府からの要請を受けて日本が86~88年にプロジェクトのフィージビリティー調査(FS)を行ったが、無償資金協力の枠組みに合致せず、ネパール側の財政上の問題もあって実現には至らなかった。
 ネパール側からの要請は強く、92年からはFS結果の見直しを目的としたアフターケア調査を実施。93年に洪水でプリチビ道路が閉鎖され、カトマンズ盆地が20日間孤立する災害に見舞われたのを機にシンズリ道路の重要性があらためて認識され、96年の着工に至った。
 ルートは北西からドリケル、ネパールトック、クルコット、シンズリバザール、バルディバスに至る160キロ。うち、バルディバス~シンズリバザール間38キロは既存道路の改修、シンズリバザール~ドリケル間122キロは原野を切り開いた未舗装道路や林道のため、新たに道路を建設することにした。設計速度は30キロ。

第3工区を担当した猪狩哲夫プロジェクトマネジャー
工事は国際協力機構(JICA)が発注し、ネパールの公共インフラ交通省道路局と第1~4工区に分けて契約。第1工区(シンズリバザール~バルディバス間37キロ)、第4工区(ドリケル~ネパールトック間50キロ)、第2工区(クルコット~シンズリバザール間36キロ)、第3工区(クルコット~ネパールトック間37キロ)の順で進めた。
 最初に第1工区の橋梁と河川沿いの堤防付き道路構造物(コーズウェイ)を構築。次に第4工区の新設道路50キロを建設した。その後、全区間新設となる第2工区に着手。マハバラット山脈を横断する難しい工事で、10年の工期を要した。最後の第3工区はスンコシ川沿いの険しい山岳地帯に新しい道路を通した。

 ◇移動時間が半減、経済効果に大きな期待◇

 カトマンズ~東タライ間は従来ルートで340キロ、9時間かかっていたが、シンズリ道路を使うと190キロ、5時間と大幅に短縮。約17億ルピーの経済効果をもたらすと期待されている。
 無償資金の総額は270億円で、JICAが実施した道路インフラ案件の無償資金協力事業としては過去最大という。
 全工区に関わり、第3工区でプロジェクトマネジャーを務めた安藤ハザマの猪狩哲夫氏は「完成した道路が使われ、農業の発展や地域経済の活性化が進むことに期待している」と話している。

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