民間信用調査会社の帝国データバンクは、全国約2万4000社を対象に「従業員の健康管理に対する企業の意識調査」を実施した。健康第一は誰もが望んでいることだが、仕事がたて込んでくると「あと1時間」「もう少し」と自分を追い込むことも少なくない。企業にとって、従業員の健康を維持し、元気に働ける環境づくりを進めることは、以前に比べ経営課題の中でも重要性が増しているのではないだろうか。
調査結果によると、アンケートに答えた1万0664社(回答率45・2%)のうち、「従業員の健康保持・増進策を実施している」と回答した割合は84・2%。具体策として「定期健康診断の実施」が90%を超えて最も多く、保健指導などが続く。職場での禁煙状況は「完全分煙」が55・2%と最多で、「全面禁煙」は23・7%。4社に1社は職場を全面禁煙していることになり、業種別で「不動産」は全面禁煙の割合が40%を超える。愛煙家には耳の痛い話だが、回答企業の中には「健康診断の結果が良好な社員と非喫煙者には報奨金を支給している」ところもある。
健康を害する要因になるとされる「働き過ぎ」については、過去1年間で月間の時間外・休日労働が100時間を超えた従業員がいたかどうかを聞いた。調査結果によると、「いた」と回答した企業の割合は12・5%で、1000社を超える企業が過重労働となる従業員を抱えていた。過重労働の社員がいたケースを企業規模で見ると、大企業は21・7%、小規模企業は5・8%と約4倍の開きがあった。大企業の中でも従業員数が1000人を超えると、過重労働の割合は30%に迫る割合となる。業種別では、運輸・倉庫とサービスが20%を超え、建設は15・3%。産業界全体で人材不足が深刻化する中で、過重労働時間の問題は今後、ますます大きくなることが予想され、これにどう対処していくのか、企業にとって頭の痛い問題であることが浮き彫りになった。
2015年12月から、従業員が50人以上いる事業所では、ストレスチェックの実施が義務付けられる。健康管理の具体策として過半の企業が挙げた定期健康診断も、労働安全衛生法ですべての事業主に健康診断の実施義務、従業員に受診義務があるにもかかわらず、完全受診には至っていない。メンタルヘルスのケアにどう取り組むのか、対策を講じる上で不可欠な経費を同確保するのか、健康の維持・改善に関する従業員の意識を高めるかなど、課題を挙げればきりがない。従業員を大切にしているという姿勢を企業が社内外にどう示していくのか、注目する必要がありそうだ。
0 comments :
コメントを投稿