◇一つの事実でも解釈はさまざま◇
札幌市の函館本線桑園駅の近くに実家があり、小さいころは沿線から貨物操車場の蒸気機関車をよく見ていました。そうして鉄道が好きになり、土木の道を志望したのですが、大学では海岸工学の研究室に所属しました。
入社して最初に配属されたコンサルタント事業部では、いろいろなプロジェクトに関わる水理模型実験などを担当し、徹夜することも珍しくありませんでした。実験では、その経過を写真で記録していくのですが、ある日、実験を終えると1枚も撮影できていなかったことがありました。カメラにフィルムを入れ忘れていたのです。これには焦りました。何とかやり直しができる実験だったために助かりましたが、この時に、何事も確認することが重要だと痛感させられました。
入社4年目には九州支店工事部へ異動し、消波ブロックの製作など施工監理に携わりました。最初は「台付け」などの現場用語に戸惑い、職人さんから何か聞かれても答えられずに苦労しました。
続いて海外コンサルタント事業部に移り、タイ、ドミニカ、ソロモン諸島、インドネシアなどでの仕事を担当しました。当時の上司は、私が作成した英文の資料を読み、例えば「これはどういうつもりで書いている?」と聞いてくれた上で、「だったらこうだよな」と丁寧に添削してくれる方でした。ある意味で厳しかったのですが、この指導はとてもありがたかったです。
海外では現地の技術者と協力して一緒に仕事をします。私たちが仕事を終えて帰国する際、空港に見送りに来てくれた人たちが涙ぐむのを見て、こちらも目頭を熱くしたものです。今でも思い出すと胸がジーンとなります。このように国内外のコンサルタント事業や工事など、いろいろなバリエーションの仕事を若い時期に経験させてもらえたのは大変に貴重でした。
普段から何事も前向きに捉えるよう心掛けています。例えば「優柔不断」と言うのか、それとも「思慮深い」と言うのかでは大きく異なります。つまり事実は一つでも、解釈はさまざまであり、それなら前向きに捉えた方がよいと思うからです。
それと、人に頼んだ仕事の成果が想定と違った場合にも、自分の頼み方が悪かったと考えるようにしています。伝えたつもりでも伝わっていないことはあります。言葉だけではなく、できるだけ絵にするなど具体的に示すことが必要です。若い人たちは、分からないことがあればすぐに聞いてきてほしい。そんな聞ける雰囲気だけはつくっておきたいと思っています。
(はんざわ・みのる)1980年東北大大学院修了、日本テトラポッド(現不動テトラ)入社。応用水理研究所課長、技術企画部研究部長、執行役員ブロック環境事業本部副本部長兼総合技術研究所長などを経て15年4月から現職。札幌市出身、59歳。
海外で調査設計業務に携わっていた時の1枚(左端が本人) =1985年12月、タイ・バンコク港で |
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