2015年9月30日水曜日

【サッカーとスタジアム】ホームスタジアムの屋根とトイレの状況は…

日立台、日本一の臨場感だと思ってるけど屋根が・・・ないに等しい(©ブログ管理人)
Jリーグは、2016シーズンのクラブライセンス交付の決定に合わせて、ホームスタジアムのトイレ数と屋根カバー率の規定充足状況を公表した。

 トイレ数は、セレッソ大阪の本拠地「ヤンマースタジアム長居」が目標未達。屋根カバー率はJ1で柏レイソルの「日立柏サッカー場」、湘南ベルマーレの「Shonan BMWスタジアム平塚」など4カ所、J2では大宮アルディージャの「NACK5スタジアム」、ジュビロ磐田の「ヤマハスタジアム」など7カ所が未充足となった。
 
 トイレ数と屋根カバー率の両方で規定が未充足だったのは、清水エスパルスの「IAIスタジアム日本平」、サンフレッチェ広島の「エディオンスタジアム広島」、モンテディオ山形の「NDソフトスタジアム山形」、名古屋グランパスの「パロマ瑞穂スタジアム」など7カ所だった。

 Jリーグ参加には、プロクラブとして満たさなければならない資格がある。施設では入場可能人数(J1=1万5000人以上、J2=1万人以上)、トイレ設置数(観客1000人当たり洋式5台以上、男性用小便器8台以上)、屋根カバー率(観客席すべて、あるいは観客席の3分の1以上)などが具体的な規定値になる。

 規定値を満たせなかったクラブは、対応策か構想を年末までにJリーグに提出する。ブログ管理人が後押しする某チームの場合、屋根がほとんどないことはサポーターにとって長年に渡る悩みの種。ただ、屋根カバー率の未充足は毎年恒例で、この先、いつ屋根が設置されるかは「神のみぞ知る、まさに都市伝説」とのささやきがサポーターの間で流れているとかいないとか…。

 10月10日に竣工イベント開催が予定されているガンバ大阪の新本拠地や、浦和レッズの埼玉スタジアムのような立派な専用スタジアムがあったらもちろんうれしいし、チームやサポーターの誇りにもなるだろう。ただ、Jリーグの本拠地は、ほぼすべてが自治体など公的機関が保有する公共施設。チームやサポーターが望んでも「はい、そうですね」と突然屋根が掛かり、トイレが洋式化されるわけではない。ましてや、自前でスタジアムを持つチームは、財政難で施設充実に投資できる予算が限られ、現状を維持しながら少しずつ前に進む、というのが悲しく寂しい実態だ。

 Jリーグ、そして各クラブやサポーターにとって、スタジアム規定は解決したいが簡単には対処できない、エベレストよりも高く、マリアナ海溝よりも深い問題。なにか良い知恵はないですかね。ちなみに前述した某チームは「チームの強化に全力を傾ける」ため、支出配分は施設改修<強化費が基本方針。およそ30億円の年間予算の7割近くを現場に投下しているので、屋根を掛ける予算は…、無理ですねどう考えても。

【回転窓】山の再生に必要なのは

 一時は2割を切るまでに下がっていた日本の木材自給率が、上昇傾向にあるそうだ。林野庁の集計では2014年の自給率は27年ぶりに3割台を回復したようだという▼1950年代の90%台には遠く及ばないが、最低だった2000年の18・15%に比べれば大幅な上昇。世界有数の森林大国としてはまだまだ不満の残る数字だが、まずは朗報といってよいだろう▼ただし、木材自給率は国内の木材供給量に占める国産材の割合。全体量や輸入量によって数字は大きく変わるので、ぬか喜びは禁物だ。近年の自給率上昇は、中国などの輸入急増に伴う国際価格の上昇や円安で、国産材の需要が相対的に高まっただけとの指摘もある▼確かに国内の木材供給量全体は縮小傾向で、国産材の供給量は横ばいが続く。大事なのは率より量。もっと国産材を使う量を増やさなければ日本の山の再生は難しい▼建設業界では最近、大型木造建築や国産材の型枠、木質バイオマス発電などのニュースが目立つ。これらを息の長い取り組みにできるかどうか。もう一つは適正価格。せっかくの国産材を買いたたくようでは将来はない。

【またまたアジア大規模プロジェクト】大和ハウスら3社が越ホーチミン市で大型開発事業

ミッドタウンプロジェクトの完成イメージ(第2期分含む)
 大和ハウス工業、野村不動産、住友林業は、ベトナム・ホーチミン市で、現地の大手デベロッパーとの共同事業として、総戸数2100戸に上る大規模住宅開発「(仮称)ミッドタウンプロジェクト」に着手する。17年初めに着工予定の第1期開発では、分譲マンション5棟(総延べ約18万平方メートル)を建設する。設計と施工は現地企業が担当する予定。

 建設地は、ホーチミン市7区にあるベトナム最大級の高級住宅街「フーミーフン」エリアの一画。同エリアでは日系企業初の開発事業となる。現地デベロッパーのフーミーフン社と連携し、現地企業の経営層やベトナム在住の外国人をターゲットとした高級分譲マンションを開発する。

 第1期開発の敷地面積は約2万8000平方メートル。RC造のマンション5棟で構成し、総戸数は約1100戸を予定している。住戸の専有面積は85~120平方メートル程度で、入居者専用のジム、プール、子ども用プレーグラウンドなどの共用施設を配置する。19年下期の竣工を目指す。総投資額は約270億円。第2期開発の詳細、着手時期などは決まっていない。

【提携紙ピックアップ】セイ・ズン(越)=交通運輸大学がアスファルト舗装の国際ワークショップ開く


 ◇京都大学と共催、日本人研究者も講演◇

 交通運輸大学は9月23日、日本の京都大学と共にアスファルト舗装に関する国際ワークショップを開いた。開会に当たり、グエン・グオック・ドン交通運輸副大臣は「ベトナム交通運輸省は、毎年数百km規模の舗装改善工事を進めている。その過程で、経済性や技術、環境、資源の有効利用などに配慮した舗装マネジメントシステムを活用している」とあいさつした。

 ワークショップでは、土木研究所の久保和幸氏ら日本の研究者がわだち掘れの日本とベトナムの違いや、道路品質を向上させるための日本の知識や経験を紹介した=写真。

 さらに、京大の教授らは、日本で広く使われている「京都モデル」と呼ばれる舗装マネジメントシステムについて説明し、「京都モデルをベトナムにどう導入するか」や「ベトナムで道路管理のPDCAサイクルをどう定着させるか」といった話題を提供した。 (9月28日)

 セイ・ズンのHPはこちらから

【提携紙ピックアップ】建設経済新聞(韓国)=環境商品協定で関税撤廃を警戒

 韓国政府が世界貿易機関(WTO)加盟各国と交渉を進めている環境商品協定が、韓国企業にとっては毒になるかもしれないとの指摘が出ている。

 環境商品協定は、環境保護に寄与する商品の貿易促進のために、各国が提示した商品の関税を撤廃するのが骨子。17カ国が提示した10分野約650商品について、環境面の信頼性と参加国の支援度合いを基に無関税製品を選定する。

 これらの製品が韓国に無関税で流入すれば、国内の関連企業に深刻な被害を与えると憂慮されており、業界は特に中国と日本の商品の流入を「最悪のケース」と見る。

 チャン・ユンソク議員は、「来年の韓・中FTA(自由貿易協定)発効を控えた中で、協定から除外された商品が今回の協定には20個余り入っており、被害が憂慮される」と説明した。この重複商品には、発電機部品や板ガラス、断熱材、石油化学製品などが含まれる。(9月18日付)

 建設経済新聞のHPはこちらから

2015年9月29日火曜日

【回転窓】ここが腕の見せ所

NASAが新たに公開した火星の画像
(©NASA/JPL-Caltech/Univ. of Arizona
米航空宇宙局(NASA)が先週末、「火星に関する重要な科学的発見」について、日本時間29日午前0時すぎに特別記者会見を開くと発表した。この新聞が読者のお手元に届くころには、何を発見したのか分かっているはず▼NASAが会見をアナウンスした後、インターネットの掲示板や交流サイト(SNS)にはいろいろなうわさが飛び交った。ウイットに富んだ書き込みを競い合うのが妙に面白く、事前の話題作りを念頭に置いたNASAの広報戦略はさすが、と感心させられた▼情報通信技術(ICT)が日進月歩で高度化し、いつでもどこでも多種多様な情報が得られる昨今。テレビや新聞、雑誌などの報道機関も電子メディアをどう活用するかが生き残っていく上で非常に大きな課題になっている▼最新ニュースはスマートフォンで確認という方も多かろう。米国では、老舗といわれる新聞社がネットメディアの勢いに押され、経営戦略の見直しを余儀なくされているという▼じりじりと追い詰められ、否が応でも変化を迫られる-。日本の、しかも専門紙という立場でも、対岸の火事では済まされない。

【大規模再開発、田町で始動】TGMM芝浦プロジェクト(東京都港区)が本体着工

再開発の完成イメージ
東京ガス、三井不動産、三菱地所は、東京都港区のJR田町駅東口で総延べ約30万平方メートル規模の大規模開発「(仮称)TGMM芝浦プロジェクト」=完成イメージ=の本体工事に10月1日に着手する。28日に現地で起工式を行った。

 設計は三菱地所設計と日建設計のJV、外装デザインは米国のコーン・ペダーセン・フォックス・アソシエイツが担当。計画する3棟のうち、A棟とホテル棟の施工は大成建設、B棟の1期工事となる地下部のスマートエネルギーセンター(地域冷暖房施設)の施工は清水建設が担当する。いずれも18年春の完成を目指す。

 建設地は、東京ガスが港区との土地交換で取得した田町駅東口に至近の敷地(芝浦3の1の20ほか、敷地面積約2万7370平方メートル)。計画によると、敷地の南西部にA棟(地下2階地上31階建て延べ約13万2600平方メートル)、北西部にホテル棟(地下2階地上9階建て延べ約1万6360平方メートル)、北東部にB棟(地下2階地上36階建て延べ約15万平方メートル)を建設する。いずれも構造はS一部SRC造。A棟とB棟は低層部に店舗、それ以外を事務所とする。

 B棟は、1期工事としてスマートエネルギーセンターを先行して整備。同センターには、熱と電気の供給施設としてコージェネレーションシステム(発電出力5100キロワット)や各種冷凍機(冷水供給能力計7000冷凍トン)を配備する。2期工事で計画している地上部の着工時期、施工者は未定だが、19年内の完成を予定している。


【技を魅せる】全建総連が全国青年技能競技大会開く/女性4人含む73人参加

金賞に輝いた村林さん。真剣な眼差しで作業に没頭する
 全建総連は22~24日の3日間、長野県松本市で第31回「全国青年技能競技大会」を開いた。各地から選ばれた女性4人を含む73人が参加。四方転び踏み台を6時間で製作する課題に取り組んだ。

けんせつ小町特別賞の門馬さん
 金賞(厚生労働大臣賞、国土交通大臣賞、長野県知事賞、松本市長賞)には村林成一さん(三重建労)が選ばれた。日本建設業連合会(日建連)の協力を得て創設し、女性の最上位選手を対象とする「けんせつ小町特別賞」は門馬菜々さん(長野県建設労連)に贈られた。

 このほか、銀賞、銅賞の受賞者は次の通り。(敬称略、カッコ内は所属先)
 ▽銀賞(林野庁長官賞、中央職業能力開発協会長賞)=氏平達也(東京都連)▽同(厚生労働省職業能力開発局長賞、国土交通省住宅局長賞)=持田真宏(島根県連)▽銅賞(長野県建設業協会長賞)=坂西陽河(建設埼玉)▽同(長野県建築士会長賞)=千葉和也(宮城県連)▽同(長野県職業能力開発協会長賞)=山本秀康(山形県連)。

【もう10年ですか…】首都高速会社が10周年でロゴとキャッチコピー作成

 首都高速道路会社は、10月1日で民営化10周年を迎えるに当たり、記念のロゴとキャッチコピーを作成した=写真。社内公募によって選ばれたキャッチコピーは「この10年を次の10年へ、そして未来へ」。

 ロゴは首都高速道路で結ばれる1都3県のアルファベットの頭文字を使って道路ネットワークを表現。中央の「10」の数字の白い点線は、道路の白線を表している。

 10月1日からホームページ上に10周年のスペシャルサイトを開設し、同社の歩みや取り組み事例などを紹介する。このほか、10周年の記念イベントを兼ねて同17、18の両日には横浜市鶴見区の大黒パーキングエリアで「首都高 会社設立10周年記念×女川町復興祈念女川さんま祭りin大黒PA」を行う。

【記者手帖】旅館でもおもてなしを


 先日、休暇を利用して福島県を訪ねた。歌人の斎藤茂吉が愛したといわれる福島市の高湯温泉や会津若松近くの東山温泉に投宿し、良質な湯と地酒、地の食材をふんだんに使った料理の数々を堪能。「福島のおもてなしは満腹になって満足してもらうこと」と話す旅館の方の笑顔にも癒された◆「おもてなし」をアピールして勝ち取った2020年東京五輪の開催決定を機に、訪日外国人が増加している。そのため、今後観光客が集中するとみられる首都圏や関西圏では宿泊施設の不足が見込まれ、新規投資が必要になる一方、それ以外の地域では供給過剰が起こるとの指摘もある◆特に地方に多い旅館は、多言語に未対応であったり、海外の旅行業者への売り込みが不足していたりするため、外国人観光客の利用が少ない傾向にあるという。海外から日本に行きたくても、泊まる場所がない-。そんなことになれば、せっかくのインバウンド効果の足を引っ張りかねない◆新規投資も重要だが、外国の方に日本のおもてなしを味わってもらうためにも、旅館や地方に観光客を誘導する方策を考える必要があるだろう。

【今回のテーマは安全にこだわる理由】毎週火曜日掲載-『建設業「命」の現場』


 「復興のためにせっかく来てもらっていて、けがをするようではばかばかしい。建設現場は危険を伴わざるを得ないが、工夫すれば安全に作業できる。最終的には、ルールをどう分からせて、守らせるかに尽きる」。宮城県女川町の復興工事を担う鹿島・オオバJVで、派遣職員の立場から安全管理を担当している原吉憲はそう話す

続きはこちら

2015年9月28日月曜日

【おめでとー】東京駅にお姉さんができる

ドイツ南西部にあるヘッセン州フランクフルト市の「フランクフルト中央駅」と東京駅が「姉妹駅」になる。ともに開業から100年以上の歴史を持ち、駅舎は歴史的建造物として高い評価を受ける。

 両駅は、共通点が多く、ドイツ鉄道からの提案で姉妹駅としての関係を築き、交流を深めていくことになった。9月30日にフランクフルト市で式典を行い、正式に「姉妹関係」になるという。

 東京駅の開業は1914年12月20日で、建物の設計者は辰野金吾。日本銀行本店(1896年)、大阪市中央公会堂(1918年、実施設計)、松本健次郎邸(1911年、現西日本工業倶楽部会館)など手掛けた。フランクフルト中央駅は1888年8月18日開業。設計者はハノーバー市庁舎などの作品があるヘルマン・エッゲルト。

 JR東日本は、ドイツ鉄道とともに歴史ある両駅の交流を深めていく。

【回転窓】海外事業でのシーズとニーズ

 マーケティング用語に〈シーズ〉〈ニーズ〉というのがある。シーズを顧客のニーズに合うようにすることが大切などと言われる▼シーズは企業が保有する技術やノウハウのことで、まだ世に出ていないビジネスの種を指す。ニーズはご存じの通り消費者が求めているもの、つまり需要。企業が保有する技術などを市場のニーズに合わせて改良し製品化する。それによって新しい価値を提供し、新たな市場を作るというのがシーズ志向の企業らしい▼先日、建設関連会社の営業の方と話をした際、海外で技術や工法、素材などを売り込むにはシーズとニーズが重要になると言っていた。その国が求めているニーズを把握し、保有する技術・工法をどう組み合わせて提案ができるかが採用のポイントになるという▼日本の建設関連会社には国内で蓄積した技術やノウハウがあり、海外で商売する種(シーズ)はある。ただ、その国のニーズに合っていなければ、日本で評価を得たとしても、採用されることはない▼国内の建設関連企業の海外進出が進むが、その成功の鍵はシーズとニーズのバランスにあるのかもしれない。

【凜】清水建設人事部ダイバーシティ推進室長・西岡真帆さん


 ◇「無理」「できない」の声でより燃える◇

 土木技術者として現場や技術支援の部署を経て、今年6月に現職へ。「現場を知っていることが強み。上司や部下などいろんな目線で考えられるし、男女を問わず具体的に働き掛けることもできる。積極的に多くの人たちとコミュニケーションしていきたい」と抱負を語る。現在、女性の活躍推進が大きなテーマだが、「男性が圧倒的に多い会社。男性の意識が変われば社風も変わる」と男性の意識改革に力を注ぐ。

 「無理だ」「できない」という声が多いほど燃える性格。「現場では早出・残業がセットになっている。この発想を変えたい。現場の時短を考えない限り、建設業に時短はない」と言い切る。「建設業の固定されたイメージとは違う面を発信していきたい」とも。

 今年の夏、内閣府男女共同参画局や日本建設業連合会(日建連)が女子学生を対象にした見学会を数多く企画した。自身も日建連けんせつ小町委員会のメンバーとして現場見学会に参加した。「私は父が携わったダム現場を見て土木に目覚めた。小さいころに少しでも現場に触れることが大切だと思う」。

 「コンクリート打設が夢にまで出る」というほどの土木屋。「現場の所長をやりたかった」と本音を漏らすが、「後輩が所長になる時が必ず来る。まだ先になるのは分かっているけど、その日が早く来てほしいし、それ(女性所長)が普通になればもっと面白くなる」と笑顔で語る。

 (にしおか・まほ)

【中堅世代】それぞれの建設業・111

地元で災害が発生すればいち早く駆け付ける
◇厳しくても地元で生き抜く◇

 「来年は何人の学生を採用できるのか」-。

 若くして地場ゼネコンの社長に就いた下畑和也さん(仮名)。地域のインフラの整備や維持管理を担いながら、雇用に貢献し、災害が発生すればいち早く重機とオペレーターを手配して現場に向かう。

 「建設業は、地域になくてはならない産業だ」。自分ではそう信じているが、入社してくれるのは、地元志向の特に強い学生に限られてきている。「地域の老舗だと思ってきたが、知名度は低いな」。

 県立大学から建設会社を志望する学生は、まず大手ゼネコンを候補に挙げる。「地域で働き、家族を養ってもらうにしても相応の給与水準が必要だ。大手と比較されたら、地場は厳しいさ」。

 地元で働きたいと考える学生に、地域に貢献していることや、仕事のやりがいを説き、大学と建設系学科のある高校から、土木と建築それぞれ1人以上の技術系新卒者を毎年確保してきた。しかし、採用が来年で途絶えてしまうのではないかと不安が募る。

 今期は経営環境が厳しい。新卒採用だけでなく現役社員への給与の支払いにも不安がないとは言い切れない。東日本大震災以降、自治体からの工事発注が活発だった。民間建築工事もそこそこ受注してきた。だが、今期は様相が一変。懐刀の部下が行った調査によると、地域一帯の公共投資は前年度より20%減少。県の工事は4割近くも落ち込んでいる。

 もともと建設投資に占める公共工事の割合が全国平均を上回る地域。公共工事が地域経済に与える影響が大きいだけに、事態は深刻だ。地元の自治体が整備してきた大型インフラが完成し、これからはその予算が別の工事に回ると期待していたら、他の分野に充てられ、投資的経費は落ち込んだ。「地域に必要な建設会社の絶対数が減ったらどうなるのか、分かってもらえているのだろうか」。

 「ダンピングが再開したようだ…」。最近、同業者の間ではそんな話もささやかれる。下畑さんの会社では、赤字決算を何とか回避しようと、さまざまな手だてを講じている。全国規模で事業を行っているゼネコンとの関係を強化し、元請工事の減少分を下請工事で補う。量だけはふんだんにあるインフラの維持修繕の工事にどう対応していくか、部下と熱心に議論もしている。

 「発注者にも意見を言いたい」。下畑さんは団体活動の中で、ある自治体に改正公共工事品質確保促進法に定められた事項への対応を尋ねた。担当者から返ってきた言葉は「そういうのもあるんだね」だった。

 「法律の内容なんて周知されていない。法律に頼るだけでは会社は安泰にならない」と思う。それでも、商工会など経済界の活動で意見を表明する機会は増えている。そうした場で、建設業の必要性を訴え、課題の解決を粘り強く求めていきたいという。

 来春、数年ぶりに女性技術者が入社する。下畑さんは今、親交のある県立大学の教授から、建設会社の役割や未来についての講義を行うよう頼まれている。「この地に、こういう会社があって、こんな先輩がいる」。大学生たちへのそんなアピールを地道に続けようと思っている。

【サークル】LIXIL ランニングクラブ

LIXILだけに、みんなで〝Lサイン

 ◇モットーは「ランニングの後に楽しくお酒を飲む!!」◇

 2000年ごろに当時の有志で駅伝大会に出場したことをきっかけに発足した。その後のランニングブームを追い風にメンバーが増加、6年前には会社公認のサークルとして認定され、活動を続けている。

 現在は約60人が所属し、「ランニングの後に楽しくお酒を飲む」ことをモットーにしている。

 毎月、皇居練習会を行い、年4回ほど各地域の駅伝大会に出場する。個人の活動では、つくばマラソンや東京マラソンに多くのメンバーが参加している。年末の忘年ランと懇親会では、年間を通して目標タイムを達成した人、初めてフルマラソンを完走できた人などにMVP表彰を行い、士気を高め合う。

 10月には山梨・勝沼のフルーツマラソンに20人近くで参加するほか、11月にはつくばフルマラソンにも出場する。毎年、初フルマラソンに挑戦するメンバーが増えている。通常のマラソンでは飽き足らずに100キロマラソン、トレールランニング、トライアスロンなどに挑戦するメンバーも増えてきた。

 タイム短縮など目標を高く掲げて活動しているメンバーも多いが、走力に関係なくこれからも楽しいサークルとして継続していきたいという。

【駆け出しのころ】竹中工務店執行役員技術本部長・谷口元氏


 ◇自ら課題を見つけることに期待◇

 竹中工務店に入社したのは、大学の博士課程で研究した数値解析手法の一種である有限要素法を、建築構造物の解析に応用して安全性や合理化の追求に役立てたいと考えたからです。

 有限要素法の歴史をたどると、1960~70年代は確立期、80~90年代が発展期、そして2000年以降は成熟期と言えます。私が米国に留学していた80年代初めは発展期に当たり、いろいろな産業分野に応用しようと研究が行われていたころでした。

 入社して最初の1年間は神戸の寮に他の新入社員と共に入り、会社では研修として設計部、技術部、作業所を回りました。設計部では大学での研究成果を適用できると意気込んでいたのですが、結局は何もできませんでした。

 技術研究所を志望していた自分が現場で施工管理を行うとは思っていなかったため、作業所での数カ月間はとても印象に残っています。それはホテルの建築工事で、私はおそらく扱いづらい新人だったのではないかと思います。現場はそれまでとは全く異なる世界であり、戸惑いもありましたが、貴重な経験をさせていただきました。

 2年目から技術研究所に所属となります。研究員時代には、主にRC構造物の有限要素法による解析や原子力発電所建屋の地震応答解析、鉄骨構造物の数値解析などの研究を行いました。そういった意味では、会社に入って10年目ごろまでに自分で目指していた方向性はおおむね実現できた気がします。しかし、研究的な検討とは異なり、実務の設計業務支援では短期間に成果を求められます。プロジェクトによっては納期に十分なアウトプットを出せず、設計者に迷惑を掛けてしまったこともありました。

 解析プログラムを使う場合、以前はその中身がどうなっているのかを詳細に把握していました。使い方を少し間違えると異なった結果が出てくるもので、中身を把握することでそうしたプログラムの性質を知ることもできました。今はハードウエアの進歩などにより便利に使えるようになった一方で、エンジニアにとってはブラックボックスのようになっているのではないかと少し不安を感じています。

 与えられた課題を解決するのが得意な人は多いのですが、自分で課題を見付けたり、指摘したりするのは非常に難しいことです。私たちが考えていることでも、若い人たちの発想では違うかもしれません。当たり前の課題ではなく、こちらが「おっ」と驚くような課題を出してもらえるのはうれしいものです。これからもそんな指摘や提案を期待しています。

 (たにぐち・はじめ)1979年東大大学院修士課程建築学科修了、83年米アクロン大で博士号(建設工学)取得。84年竹中工務店に入社し、技術研究所主任研究員、環境ビジネスプロデュース本部長、執行役員技術本部長兼技術研究所長などを経て、15年3月から現職。大阪府出身、60歳。

建築現場での一枚。
大学での研究を構造物の解析に生かしたいと入社した

2015年9月25日金曜日

【回転窓】自己責任と規律

 大型連休は車で移動する人が増え、交通事故の発生件数も普段より多くなる傾向がある。シルバーウイーク中も各地で事故が発生していた▼日本に限らず、急速な経済成長で車の利用が増える新興国でも交通事故の多発が深刻な社会問題という。安全に対する考え方は国によって異なるが、建設会社の幹部から、米国とドイツの交通ルールを引き合いに、国民性の違いを聞いたことを思い出した▼米国は車で右折する際に赤信号でも運転手の判断で曲がれるそうだ。事故は運転手の過失だ。ドイツは高速道路の走行速度を原則無制限としながら、必要な区間には速度規制を定め、違反は厳しく取り締まる▼つまり米国は自己責任の文化、ドイツは規律の文化という。日本はその中間で、自己責任と規律を求める文化とか。加えて、日本人の特筆すべきところは他人を思いやる気持ちが強いことだそうだ▼ルールが整備されても、守る側の意識がしっかりしていなければ意味をなさない。日本は規範意識を育てる道徳教育にあらためて力を入れ始めた。事故は多くの人を不幸にする。各国に道徳教育が広がることを願う。

【日本初の分譲マンションが建て替え】宮益坂ビル(東京都渋谷区)、16年2月に解体着手

東京都渋谷区にある宮益坂ビルディング(右端)。
完成は1953年と半世紀以上の歴史を持つ
築60年を超える日本初の分譲マンション「宮益坂ビルディング」(東京都渋谷区)が、来年から建て替え工事を行うことが分かった。権利変換計画の認可を経て、16年2月に既存建物の解体工事に着手し、17年1月の本体着工、20年5月末の竣工を目指す。設計は日建ハウジングシステムが担当。施工者は決まっていないが、既存建物の解体工事と新築本体工事を一括で発注する予定だ。

 宮益坂ビルディングの所在地は渋谷2の19の4(敷地面積1317平方メートル)。渋谷駅から東側に延びる宮益坂の坂下付近に位置し、南隣に渋谷ヒカリエがある。

 東京都建設局が建設した既存建物は1953年に完成した。民間開発の物件も含めて日本で初めて供給された分譲マンションとして知られる。建物規模は地下1階地上11階建てで、低層部から高層部にかけて店舗、事務所、住宅が配置されている。

 区分所有者らは、マンション建て替え円滑化法を活用した建て替え事業の実施に向け、13年8月に「宮益坂ビルディング建替組合」(ウレマン・フレッド理事長)の設立認可を取得した。組合には、事業協力者、参加組合員として旭化成不動産レジデンスが参画している。

 計画によると、建て替え後の規模はRC造地下1階地上15階建て延べ1万4994平方メートルで、高さは約58メートル(最高高さ約62メートル)。1階を店舗(6戸)、2~4階を事務所(25戸)、5階以上を住宅(153戸)とする。

【土いじりって楽しいなー】大阪府左官工組が大阪市で上方左官まつり

職人さんの指導で土壁塗りに挑戦!! 上手にできたかなぁ?
大阪府左官工業組合(邑智保則理事長)は20、21の2日間、大阪市港区のORC200オーク広場で「上方左官まつり」を開いた。左官工事の魅力やものづくりの楽しさを市民にアピールする初の取り組みで、期間中は多くの家族連れが光る泥団子づくりや壁塗り体験などを楽しんだ。

 このイベントは、体験を通じて、高度に洗練された左官の技術・技能や土壁・しっくいの素晴らしさを知ってもらうことで、よりよい生活スタイルの実現や居住環境の改善・向上を図るとともに、若年労働者の確保・育成に向け、ものづくりの魅力や楽しさ、やりがいなどを伝える目的で開催。

泥をこねこね、団子づくり~!!
初日の開会式であいさつした邑智理事長は「土が持つ高断熱性を生かしたミニかまどや、イタリア磨きを応用した光る泥団子、しっくいの抗菌性や珪藻土の消臭性を活用した手形・フラワーポットの製作を通じて左官の技術に親しんでほしい。このまつりを毎年続けていきたい」と話した。

 多くの来場者でにぎわった会場内では、熟練の左官職人による壁塗りの実演やミニかまどで炊いたご飯の試食などを通じて、日本の伝統技能をアピールしたほか、光る泥団子や壁塗り体験などに夢中になる家族連れや、砂場で一心不乱に遊ぶ子どもたちの姿が見られた。

2015年9月24日木曜日

【サッカーで国際貢献】JICA、JFA、Jリーグが連携協定を締結

(左から)村井満Jリーグチェアマン、田中明彦JICA理事長、大仁邦彌JFA会長、北澤豪JFA理事
国際協力機構(JICA)は、スポーツを通じた国際貢献を推進するため、日本サッカー協会(JFA)、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)と連携協定を締結した。サッカーを通じ、開発途上国の地域振興や健康増進、人材育成などに取り組む。日本人指導者の派遣、外国人指導者の研修受け入れ、国際大会の運営支援のほか、JリーグとJICA国内機関との地域連携、2020年東京五輪・パラリンピックを見据えた3者連携なども進める。

 JICAは、スポーツを通じた国際協力をこれまでも展開してきた。JFAとJリーグもアジア地域を中心に開発途上国・地域の支援に熱心で、3者はこれまでにもJFAの指導者をJICAのボランティアとして開発途上国・地域に派遣したり、JリーグがJICAの国際貢献プログラムを活用して開発途上国・地域にサッカー用品を寄贈したりなど、さまざまな取り組みを行ってきた。

 連携協定の締結を受け、まずは「ラオスで行うサッカー教室への指導者派遣」や「ボスニアにおけるスポーツを通じた平和構築支援」、「JICAが日本で行う研修の参加者とJリーグとの交流イベント」などを実施。Jリーグの試合会場でJICAのボランティア募集情報を発信する試みも行う。

 国際サッカー連盟(FIFA)には、200を超える国と地域が加盟する。開発途上国・地域でもサッカー人気は高く、子どもから大人まで多くの人に愛されている。JICAとJFA、Jリーグは協定締結を機に連携を一層強め、スポーツを通じた国際貢献に注力。各国・地域の発展に寄与する考えだ。

【回転窓】シリア難民と安全保障

 「アレッポの石鹸」を愛用している。オリーブと月桂樹のオイルだけで作られていて、汚れはしっかり落とすが、洗った後も肌が突っ張らない。乾燥肌には持ってこいの自然由来の製品だ▼生産地は、内戦が続くシリア北部のアレッポ。西部をアサド政権軍が、東部を反体制派が支配していて、先日も反体制派のロケット弾による攻撃で多くの市民が犠牲になった▼大規模な反政府運動が起きて以降、情勢悪化に歯止めが掛からず、既に400万人を超える人々がシリアを脱出して欧州などへ。欧州連合(EU)加盟国は対応に苦慮しているようだが、難民として祖国を捨てざるを得ない人々の思いはいかばかりか▼「アレッポの石鹸」は、1000年以上前から特産品として輸出されてきた。製造方法は昔ながらの釜だきで、1~2年も熟成させるが、見た目は武骨で飾り気がない。生産するシリアの人々も、多くは伝統文化を大切にする素朴な人たちであろう▼こうした人々に救いの手を差しのべることこそ、世界の安全保障につながるのではなかろうか。集団的自衛権をちらつかせ、武力を抑止力とするよりも-。

【みんなで守って快適道路】相模原市の道路不具合通報アプリが好評


 相模原市が4月に本格運用を開始した道路の欠損部分などの不具合を市民が通報できるスマートフォン用アプリ「パッ!撮るん。」による通報が8月末で254件を数えた。このうち実際に補修などの対応が完了したのは124件。市民と協力して市内の道路の安全・安心を守る取り組みが軌道に乗り始めている。

 「パッ!撮るん。」は、スマホに搭載されたカメラやGPS(全地球測位システム)の機能を活用し、道路の破損状況などをメールで知らせるシステム。市民が日常、道路を使用する中で目にした路面やガードレールなど施設の不具合をその場で市に連絡。連絡を受けた担当部局が確認し、補修などの迅速な対応に役立てる。アプリは、公募型プロポーザルで選定されたアーバングラフィック(相模原市淵野辺)と市が共同で開発した。

 アプリは市のホームページから無料でダウンロードできる。利用方法はアプリを起動して危険箇所を撮影。GPSで示された通報箇所所を確認してメールで送信する。ダウンロード数は8月末時点で累計1568件。同種のシステムは千葉市が先行して「ちばレポ」を運用しているが、全国的にも導入例は少ないという。

 通報内容では「車道に段差がある」「車道に穴が開いている」「歩道に穴が開いている」「照明灯が切れている」「カーブミラーが壊れている」などが多いという。担当する都市建設局土木部路政課では、国道に関する通報で国が管理するものについては(国道16号、20号など)関東地方整備局相武国道事務所に補修を依頼。緑道や公園に関する通報は市の公園課に対応を引き継ぐ。

 従来の電話による通報に比べ、破損箇所が画像で確認できることやGPSで場所の特定ができることなど、作業効率が格段に上がったという。市は所管する道路の維持管理に役立てるため、引き続き広報やリーフレット配布などで市民へのPRを強化する考えだ。

【難工事に挑む】リニア品川駅新設、リスク回避で工区・工程分割発注

品川駅新設工事の施工位置図
JR東海は、リニア中央新幹線(東京・品川~名古屋間)の東京側のターミナル駅となる品川駅(港区港南)の建設プロジェクトを、工区・工程を分割して発注する。営業中の東海道新幹線直下の大規模工事で、段取りの複雑さや建設コストの高騰など、さまざまなリスクを勘案した上で、分割発注が合理的と判断。初弾工事として、2分割した工区(南・北)のうち、北工区の土留め壁構築と掘削工の施工者を清水建設・名工建設・三井住友建設JVに決めた。

 品川ターミナル駅の施工者については指名見積もり方式で選定。今回は対象の工事エリア(長さ約450メートル×幅約60メートル)を、南工区(長さ約300メートル)、北工区(同約150メートル)に分けた上で、東京駅寄りの北工区の土留め壁構築と掘削工(地下約10メートル)を先行して発注した。清水JVとの契約金額は非公表。工期は21年2月10日までの約5年半。

 既設駅舎の直下に開削工法で建設する品川ターミナル駅は、開業の27年までの工期を要する。敷地面積は約3・5ヘクタール。地上からホーム階までの深さは約40メートル。

 計画では、新幹線駅を支える形で地下に構築するため、段階的に工事を進める。まず新駅両側に山留め壁を構築した後、東海道新幹線を通常運行させながら躯体部分の受け替え工事を行う。並行して重機で土砂を掘削・搬出しながら新駅の地下構造物を上から下に順次構築していく。構造物の完成後、掘り起こした部分の地盤を埋め戻す。


リニア新幹線品川駅の施工フロー
10年以上の工期を要し、完成までに想定されるさまざまな工事上のリスクをどう見込むかなど、JR東海と建設会社の間では契約に向けた協議に相当な時間をかけた。

 同社の柘植康英社長は17日の定例記者会見で「北工区については、全工程一括ではなく、工程の前半部分を一区切りとして契約を締結することが合理的と判断した」と説明。品川、名古屋の両ターミナル駅や南アルプストンネルなど難易度が高く、長期間にわたる工事については「経済情勢の変化や災害の発生、建設資材の高騰、用地取得の遅れ、工事の難航など、さまざまな困難な事態が想定される。そうした事象が発生した場合には、必要に応じて工事ペースを調整するなど、健全経営と安定配当を堅持しながら工事を完遂する」との見解を示した。

 品川ターミナル駅の北工区で残る構造物受け替え工事、掘削・区体構築・設備工事については今後、別途発注する。発注方法(一括・分割)は未定。施工者の選定手続き中の南工区については、発注方法を含めて協議を進めている。

2015年9月18日金曜日

【回転窓】人材育成の中核に

新しい富士教育訓練センターの完成イメージ
 建設産業で課題とされる担い手の確保・育成。この産業が将来にわたって持続していく上で、現場で働く技能労働者の処遇改善と人材の育成は欠かせない要素だ▼16日に建て替え工事が始まった富士教育訓練センター(静岡県富士宮市)は、2大要素の一つ、人材育成で中核的役割を果たす施設として大きな期待を背負う。今回の建て替え事業は、2年前に太田昭宏国土交通相が現地を視察し、老朽化した施設の解消に言及したことで大きく動き始めた▼建設業界団体や関係機関から建て替え資金を募り、ようやく着工にこぎ着けた。業界を挙げたプロジェクトといってよいだろう▼本年度に本格運用が始まった「担い手3法」は、建設投資が長期にわたり低迷する中で厳しい価格競争のしわ寄せを受けた現場の労働者を、中長期的に確保・育成していかなければならないという官民の強い意志の中から生まれた。「富士」の建て替えはまさにその「象徴的な事業」と位置付けることができる▼「富士」を中心として全国で担い手を確保・育成する体制を構築していく。今回の建て替え工事をそのキックオフとしたい。

【港は大切だよ】りんかい日産建設、宮崎県日向市で小学生招き見学会

見学を終えて記念撮影。みんな、港の役割、分かった?
 りんかい日産建設は14日、宮崎県日向市で建設が進められている細島港のケーソン製作工事現場で小学生を対象とした現場見学会を開いた。市立細島小学校の5、6年生29人が参加し、普段は見ることができない防波堤をつくる現場の雰囲気を体感し、充実した一日を過ごした。

 見学会は、九州地方整備局発注の「細島港(外港地区)防波堤(南沖)ケーソン製作工事(第2次)」の現場で実施。ケーソン製作現場を見学することで港の役割や大切さを地元の小学生に知ってもらうのが狙い。

 見学会では、フローティングドック上の製作中のケーソンを担当者から説明を受けながら見学。続いて、クレーンの試乗も行われ、実際にクレーンを動かした子どもたちは目を輝かせていた。同工事は防波堤の本体工(ケーソン製作)を施工する。工期は16年1月29日まで。

【気付かないかもしれないけど、スッゴイぞ】話題の技術/TOTOのウォシュレット洗浄水「バルーンジェット技術」

バルーンジェット技術を使った吐水イメージ
TOTOが温水洗浄便座「ウォシュレット」に導入している「バルーンジェット技術」。少ない水量でも高い洗浄効果を発揮し、多量の水で洗っているような使い心地にさせるのが特色だ。日本流体力学会(福西祐会長)の14年度学会賞(技術賞)を受賞。今やウォシュレットになくてはならない節水技術になっている。

 バルーンジェット技術が使われているのは、ウォシュレットで水を噴射するノズル。ノズル先端に小部屋を設け、ここを水で満たした状態と空気で満たした状態を交互に作り出すことで吐水速度を調整できるようにした。

 これによって、ノズルから先に出る遅い水に、後から出る速い水が追い付き、空中でぶつかることで水玉ができる。皮膚に当たる瞬間に大きな水玉となり、高い洗浄力を発揮。同時に、実際は少量の水でも多量の水で洗っているような感覚を与える。
吐水技術の概要図
この技術を開発するまで主流だったのは、限られた水量で十分な洗浄力と洗浄感を確保する「ワンダーウェーブ洗浄」(99年開発)と呼ばれる技術。水流を周期的に加速する脈動ポンプを使うことで、1秒間に70発以上の水玉を連射する。しかし脈動ポンプは高コストで、高級シリーズを中心に搭載するにとどまっていた。

 バルーンジェット技術は、脈動ポンプのような機械的な部品を必要としないため、コストを削減しながらワンダーウエーブ洗浄に近い性能を発揮する。同社の試算では、ワンダーウエーブ洗浄が使われる以前のウォシュレットと比較して、1回当たりの使用水量を40%程度に抑えることができ、年間消費電力量に換算すると約65%の削減になるという。

 バルーンジェット技術の開発を主導した商品研究部流体・機構研究グループの橋本博氏は「ワンダーウェーブのような洗浄力と洗浄感を保ちつつ、低コストで一般家庭などにも普及できるような製品を目指した」と開発のきっかけを説明する。

 小部屋を空気と水で満たして速度調整を行う仕組みはすぐに思いついたが、「細かい理屈や原理の検証に苦労した」と振り返る。「実際に商品化するに当たっては、万が一のことがあってはいけないので、小部屋の形状の工夫や、長期間の使用でも耐え得る性能の確保には特に力を入れた」。

 現在、バルーンジェット技術は、ボリュームゾーンのほぼすべてのウォシュレットに採用されている。

2015年9月17日木曜日

【速報】JR東海「リニア新幹線・品川ターミナル駅北区工」/土留め壁構築・掘削工は清水建設JVに

 JR東海は17日、リニア中央新幹線(東京・品川~名古屋間)のうち、東京側のターミナル駅になる品川駅(港区港南)新設工事の一部の施工者を清水建設・名工建設・三井住友建設JVに決めた。契約金額は非公表。2分割した工区(南、北)のうち、北工区の土留め壁構築と掘削工を担当する。工期は21年2月10日まで。

 品川ターミナル駅は、既存の東海道新幹線品川駅直下に開削工法で整備する計画。敷地面積は約3・5ヘクタール。地上からホーム階までの深さは約40メートルとしている。

 新駅は、東海道新幹線の既存駅を支える形で地下に構築するため、段階的に工事を進める。まず新駅両側に山留め壁を構築した後、東海道新幹線を通常運行させながら躯体部分の受け替え工事を行う。並行して重機で土砂を掘削・搬出しながら新駅の地下構造物を上から下に順次構築していく。構造物の完成後、掘り起こした部分の地盤を埋め戻す。

 品川ターミナル駅の施工者は、指名見積もり方式で選定。今回は対象の工事エリア(長さ約450×幅約60メートル)を、南工区(長さ約300メートル)、北工区(同約150メートル)に分けた上で、北工区の土留め壁構築・掘削工事を先行発注した。

 同工区で残る構造物受け替え工事や掘削・躯体構築・設備工事は今後、発注方法を含めて協議している。

 リニア中央新幹線関連の本体工事は8月、初弾案件の「中央新幹線南アルプストンネル新設(山梨工区)」の施工者が大成建設・佐藤工業・錢高組JVに決まっている。

【ロンドン史上最大の再開発】バタシー発電所再開発3期工事、ブイグUKが設計・施工/契約額は1850億円超

フランク・ゲイリー氏設計の「プロスペクトプレース」完成イメージ
 英国の不動産開発会社、バタシーパワーステーションデベロップメント社(BPSDC)は、フランスの建設大手ブイグの英国法人(ブイグUK)をバタシー発電所再開発第3期開発の設計・施工契約候補者に選んだ。契約額は10億ポンド(約1850億円)を超え、英国で過去最大規模の建設工事契約になる。16年初めに着工する。

 西側の第1期開発(住宅・オフィス)、発電所を複合施設に改修する第2期開発は現在工事が進んでいる。第3期開発は、地下鉄新駅に近い敷地の南側に位置し、プロジェクトの玄関口にあたるエリアが対象。総戸数1300戸の集合住宅2棟と、店舗やレストランが並ぶ250メートルの遊歩道が整備される。

ノーマン・フォスター氏が設計した「バタシー・ルーフ・ガーデンズ」の完成イメージ
 新駅と発電所のある敷地中心部を結ぶ遊歩道「エレクトリック通り」の西側にはノーマン・フォスター氏が設計した「バタシールーフガーデンズ」を建設する。住宅やホテルのほか、屋上にはロンドン最大の屋上庭園ができる。東側の「プロスペクトプレース」は、フランク・ゲーリー氏の設計。彫刻作品のようなファサードが印象的な5棟の建物と、コミュニティーセンターや子供向け公園を建設する。

 BPSDCのロブ・ティンクネルCEOは、「3期工事の施工者が決まり、プロジェクトは大きなマイルストーンを迎えた。着工すると、工事中のエリアは500万平方フィートに拡大する」とコメントした。

 ブイグUKは、16年第一四半期に3期エリアの北半分で工事を始め、19年に完成させる。南側エリアは18年に着工し、地下鉄延伸工事の完了に合わせて20年の完成を目指す。


 プロジェクトの1期工事は13年7月にスタート。発電所建物は19年に開業する。全体完了は2025年の予定。


【バタシー発電所跡地開発】

再開発事業の全体完成イメージ。
発電所のシンボルである4本の煙突やアールデコ調の外観を維持しながら商業施設や住宅が入る建物に生まれ変わる
 英ロンドンの中心部にあり、1983年に運転を停止した発電所跡地で進む同国史上最大規模の再開発プロジェクト。老朽化した発電所の施設を修復して複合施設として再生するとともに、その周辺に4000戸の住宅や三つのホテル、総延べ26万平方メートルのオフィスビルなどを建設する。13年夏に第1期工事に着手し、16~25年にかかて段階的に各施設・建物を開業していく。

 開発主体はマレーシアの政府系不動産会社などで、事業進行はBPSDCが担当。マスタープランを建築家のラファエル・ヴィニオリ氏が手掛け、各建物の設計にも世界的に著名な建築家を起用している。全体が完成すれば個性的な外観の建物が調和して配置された、〝現代建築の見本市〟 ともいえる街になる。

【ひと】国土交通省官房技術調査課長・五道仁美氏


 ◇技術適用にスピード感◇

 公共工事で目下の最重要テーマとなった生産性の向上、改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)の運用指針の浸透に加え、技術開発の促進でもかじ取りを担う。

 「生産年齢人口が減少していくこの時期に1人当たりの生産性を上げる」ことで、「太田昭宏国交相が言われる新3K(給料、休日、希望)を現場の人たちが享受できるようにしていきたい」と語る。

 本年度は改正公共工事品確法の「運用元年」に当たる。「現場でしっかり運用していくことが今年の課題」。改定した設計変更ガイドラインなどを直轄工事で適切に適用していくことで、「出てきた課題やポイントを地域発注者協議会を通じて都道府県や市町村に伝えていく」と発注者支援に意欲を燃やす。

 インフラの老朽化対策やメンテナンスが喫緊の課題となる中、技術開発の重要性もこれまで以上に増している。「スピード感を持って現場に適用されていくことが重要だ」とし、「それがひいては生産性の向上や適正利潤の確保につながる」と語る。

 (ごどう・ひとみ)京大大学院工学研究科修了、86年建設省(現国土交通省)入省。水管理・国土保全局海岸室長、関東地方整備局企画部長を経て7月から現職。趣味は野球観戦とテニス。「体を動かすことが好き」と最近は富士登山にも挑戦した。静岡県出身、53歳。

【見ないとね、やっぱり】日建連中国支部が徳山高専の生徒招き見学会


 日本建設業連合会(日建連)中国支部(木村普支部長)は15日、広島駅南口Bブロック第一種市街地再開発事業の現場見学会を開いた。訪れたのは徳山工業高等専門学校土木建築工学科の生徒と先生50人。施工を担当する前田建設の足立有希、都甲豊両建築課長から事業の概要について説明を受けた後、完成すれば中四国地方で最も高い建物となる建設現場で最先端の技術や工法に触れた。

 現場見学に先立ち、日建連中国支部の岡田和夫事務局長は「建設業は、苦しいこともあるがやりがいと達成感がある。まさに地図に残る仕事。楽しさや魅力を感じていただき、多くの人に入職してほしい」と呼び掛けた。

 同事業は、広島駅南口Bブロック市街地再開発組合による再開発事業で、設計はアール・アイ・エー、施工を前田建設の担当で12年12月に着工。規模はRCおよびS一部SRC造地下2階地上52階建て延べ12万5473平方メートル。再開発ビルは高層の西棟と10階建ての東棟で構成し、東棟はすでに利用を開始している。

 西棟では、広島で初めて100ニュートン/平方ミリの超強高度コンクリートを1階柱に採用したほか、11階と12階の間に中間免震工法を取り入れ地震にも強い構造としている。また、12階以上は躯体のプレキャスト化により1週間で1フロアを施工することで工期を短縮。自社開発のTPMs(トータル・プロセス・マネジメント・システム)などにより施工の各段階の情報を一元的に管理し、あらゆる施工状況を「見える化」する安全で効率的な作業環境の中、高品質・高精度の確保を図っている。

【回転窓】空き家の活用に期待

 子どものころ、「秘密基地」で遊んだ記憶をお持ちの方は多かろう。空き家などに勝手に入り込み、放課後に集まる。ちょっとした冒険のような気分を味わうことができた▼不法侵入になることや危険性を考えると昔のようにはいかないのだろう。とはいえ、人口減少で都市の「隙間」は確実に増えている。地方創生が叫ばれる中、空き家を移住促進の受け皿に活用しようという動きも進む▼空き家が増えると、倒壊の恐れや犯罪などトラブルの発生が懸念される。新しい人を呼び込めれば、そうしたマイナスをプラスにできる。宮城県川崎町では、有効活用できる空き家を探そうと新たな取り組みを始めた▼町が把握していない空き家情報を伝えれば、商品券を交付するという。空き家のことは住んでいる人が一番知っているはず-。そんなアイデアが出発点という。残念ながら情報提供はまだゼロだが、地域住民が空き家に目を向けるきっかけになるかもしれない▼秘密基地とはいかないだろうが、観光交流や地域活動の拠点などに使う手もある。空き家イコール負の遺産というレッテルの払しょくを期待したい。

【豪雨災害から1週間】堤防決壊の現場を写真で振り返る

 関東地方と東北地方を襲った豪雨から1週間。堤防決壊で浸水被害が出た茨城県常総市や宮城県大崎市では、官民を挙げて懸命の復旧作業が続いた。9月10~14日の被災地の状況を写真で振り返る。

記録的な豪雨で鬼怒川左岸の堤防が10日午後0時50分ころ決壊。三坂町の破堤部を望む。
濁流の爪痕は依然残ったまま(本紙撮影、14日、茨城県常総市)

破堤部は鹿島と大成建設が11日から復旧作業に入った
(本紙撮影、14日、茨城県常総市)

鬼怒川の堤防決壊は66年ぶり。浸水範囲は40平方キロに及んだ
(関東地方整備局提供、10日、茨城県常総市)

10日朝に河川が最初にあふれた若宮戸では、突貫で復旧が進む
(本紙撮影、14日、茨城県常総市)

地元建設会社による水道の復旧作業
(本紙撮影、14日、茨城県常総市)

冠水した道路に行く手を阻まれる
(本紙撮影、12日、茨城県常総市)

宮城県大崎市では渋井川の堤防が決壊。付近を流れる水路での排水作業
(本紙撮影、14日、宮城県大崎市)

被災地の情報が集まる東北整備局の災害対策室
(本紙撮影、11日、宮城県仙台市)

破堤部に土砂を搬入するダンプトラック。他県の現場からも急きょ車両を調達した
(本紙撮影、14日、茨城県常総市)
鬼怒川の堤防が決壊した三坂町の応急復旧
(関東地方整備局提供、11日、茨城県常総市)

関東地方整備局が土木学会や学識者などと設置した「鬼怒川堤防調査委員会」の現地調査
(関東地方整備局提供、13日、茨城県常総市)

日本埋立浚渫協会の会員企業による東京湾の漂流物撤去作業
(関東地方整備局提供、12日)

2015年9月16日水曜日

【たまに帰ってくる、ちょっと一息】中秋の名月とスーパームーン

まーるい月はやっぱり美しい…
9月も半ばになり、何となく秋の気配が感じられるようになった今日この頃。暑すぎる夏が過ぎたら雨模様が続き、残暑が実感できぬまま、あっという間に「空気がすっかり入れ替わったのー」と思っているのは、ブログ管理人だけではないはずだ。

 来週はいつの間にか「シルバーウィーク」と命名されていた中型(?)連休。その連休が明けた27日の日曜日と28日の月曜日は、月にまつわるお楽しみがやってくる。
 
 まず27日は「中秋の名月」。旧暦8月15日前後に登るまん丸の月は、空気が澄む秋の夜空と相まって非常に美しい、と昔から言われてきたそう。ススキに月見団子は欠かせないアイテム。少し肌寒い縁側でお茶を飲みながら名月を愛でる風流なひととき…。なんだか日本を感じるなぁー、と想像してみる。

 さて、名月の翌日は、横文字でお月様イベント。月と地球が最接近していつもより大きくて光り輝く「スーパームーン」が28日にやってくる。月が最大になる時間(午前11時50分頃)、日本は昼間なのが残念。だが、それでも月が見える場所で晴れていたら、その日の夜はいつもより〝おっきな月〟が全国で見られるという。

 スーパームーンを題材にした写真を何度か見たことがあるが、本当に綺麗ものばかり。最近の携帯電話やスマホのカメラは性能が良くなっているので、「センスと腕には自信がある」という方は、スーパームーンを題材に、ぜひ撮影してはいかが?

【勇姿を目に焼き付けろ】津軽ダム工事務所が「目屋ダム」見学会/湖底に沈む前のラストチャンス

 

1960年に完成し、半世紀以上にわたって青森県中西部を流れる岩木川下流の洪水被害軽減、かんがい用水の確保、水力発電に貢献してきた「目屋ダム」(青森県西目屋村)で、9月26日に見学会が開かれる。

 今回の見学会は、ダムファンにとって外せないイベント。今度の冬から試験湛水を開始する津軽ダムが、目屋ダムの役割を引き継ぎ、目屋ダムは「9月末で役割を終える」(東北整備局津軽ダム工事事務所)のがその理由だ。目屋ダムを見学できるのは、今回がラストチャンス。見学会は9月26日、午前と午後の2回行われ、それぞれ40人が参加できる。

 参加は無料だが、受け付けは先着順。電話(0172-85-3005)かFAX(0172-85-3008、様式自由)で。締め切りは24日までだが、定員になり次第受け付けを終了する。

 見学コースは、「津軽ダム展望所~同管理庁舎~同天端~目屋ダム天端」で、所要時間が約2時間。集合後に紙飛行機を折り、目屋ダムの天端から飛ばすイベントもある。紙飛行機には、津軽ダムへの「期待の言葉」と目屋ダムへの「感謝の言葉」を綴ってもらうそうだ。

 津軽ダム工事事務所のHPによると、目屋ダムは1953年8月に本体着工し、約7年の歳月掛けて1960年3月に完成した。青森県が管理する重力式コンクリートダムで、堤高58メートル、堤頂長170メートル、堤体積11万8000立方メートル、総貯水容量3900万立方メートルの規模。ダム湖は美山湖の名称で親しまれ、湖と周囲の山々が織りなす自然美が有名だ。

 津軽ダムの完成した後、目屋ダムはダム湖に沈んでしまう。半世紀以上にわたり自然に溶け込み、人知れず暮らしを守る役割を果たしてきたダムの勇姿を目に焼き付けてみては…。

【回転窓】災害復旧、どうぞご安全に

堤防決壊で冠水した関東鉄道常総線の線路
(9月12日午後撮影)
 記録的な豪雨で鬼怒川の堤防が決壊した2日後の12日午前。大きな被害に見舞われた茨城県常総市内を取材していた時、冠水で不通となった鉄道の線路を歩く年配のご夫婦に会った。浸水した家には帰れず、何かしらの情報を集めようと二人で歩き始めたのだという▼ご夫婦が住む地域に泥水が流れ込んできたのは午後7時過ぎ。堤防が決壊してからかなりの時間がたっているが、ご主人は「田んぼにたまった水が一気に流れ出たんだ」と話していた▼洪水は、何の前触れもなく突然襲ってくる地震とは異なる。「どこまで水が来ているのか情報もなく、『断水しています』『避難して下さい』だけでは逃げようがない」と奥さん。タオルで隠した唇が震えているように見えた▼自分たちの家に近づくこともできない状況で周りから「復旧へ」と言われてもすぐには考えが及ばない被災者もおられよう。だが、まずは安全を確保し、生活再建への一歩を踏み出すためにもインフラの復旧が急がれる▼先週の大雨で洪水被害が発生した茨城、宮城などの被災地では、きょうも多くの人が復旧工事に携わる。どうぞご安全に。

【建築好きの人必見!!!】建築家・郭茂林の映画上映/9月17日に都内で


 東京都港区の台北駐日経済文化代表処台湾文化センターで17日、ドキュメンタリー映画「空を拓く~建築家・郭茂林という男」が上映される。主催は台北駐日経済文化代表処。監督は酒井充子氏。出演は郭茂林、李登輝(元総統)、呉家禄、藤森照信、大室康一、鍾鏡輝、黄南淵、謝宗哲ほか。上映時間は午後2時から。無料(当日の入場も可)。定員80人。当日は講談師・一龍斎貞花による郭茂林の語り、郭茂林の業績を伝える記念展示会も併せて行われる。

 郭茂林は、日本と台湾で高層ビルの建設や都市計画に尽力した台湾出身の建築家。東京帝国大学で学び、KMG(Kaku Morin Group)設計事務所を創設した。日本初の高層ビルである「霞が関ビル」(1968年完成)の建築チームのリーダーを務め、その後は浜松町の「世界貿易センタービル」、新宿の「京王プラザ」、池袋の「サンシャイン60」などの建設に関わった。母国の台湾では台北駅前にある超高層ビル「新光三越ビル」を自ら設計した。

 映画では、霞が関ビル建設チームの当時の関係者や、台湾での設計事務所の関係者などからの回顧談をはじめ、2012年春に92歳で亡くなるまでの仕事ぶりや人柄などを当時の映像も合わせて紹介する。

 HPは、映画の紹介以外に郭茂林の足跡、酒井監督のインタビュー、建築家・安藤忠雄氏のコメントなど盛りだくさんな内容になっている。興味のある方はぜひアクセスを。

【苦節25年】西富久地区再開発(東京都新宿区)が完成

「富久クロス」は住機能を中心に超高層棟と中低層棟で構成
◇住民主導のまちづくり結実◇

 東京都新宿区の西富久地区で建設が進められていた再開発ビル「富久クロス」が完成した。特定業務代行者として施工を担当した戸田建設・五洋建設JVが、事業主体の西富久地区市街地再開発組合に同ビルを18日付で引き渡す予定。総合コーディネーターはまちづくり研究所、コンサルタントは都市設計連合、実施設計・監理を久米設計(設計協力・戸田建設)が担当。参加組合員として野村不動産、三井不動産レジデンシャル、積水ハウス、阪急不動産が事業に参画している。

 同地区では、地価が急騰したバブル期に地上げなどで無秩序な土地売買が行われた。虫食い状態になっていた街並みを住民主導で再生しようと地元住民らによる勉強会が1990年に発足し、街づくりの検討が本格化した。25年の歳月を経て地域のコミュニティー再生を核とした再開発ビルが竣工を迎えることになる。

 再開発ビルの規模はRC一部S造地下2階地上55階塔屋2階建て延べ13万8962平方メートル。高さ約191メートルの超高層の分譲タワー棟(コンフォートタワー)には1084戸の住宅を設け、ラウンジやブックカフェ、キッズルーム、フィットネス・リラクゼーションルーム、防音ルームなど、居住者向けのアメニティー機能が入る。

一戸建て風のペントハウスが立ち並ぶ低層部
 中低層棟(7階建て、138戸)は中層の賃貸住宅(グリーンレジデンス)のほか、一戸建て風のペントハウス(ペントテラス)で構成。2階レベルに人工地盤を設け、その上にペントテラスの街並みが広がる。施設内には大型スーパーなどの店舗のほか、認定こども園やクリニックなども併設する。

 地震災害時に居住者の生活継続計画(LCP)を支援する世界初の防災システムを導入。「災害に負けないレジリエントな街づくり」をコンセプトに、センサー類など最新のモニタリング技術を積極活用し、ライフラインやエレベーターなど建物設備の管理機能を強化。設備機能を迅速に復旧させる。住民にも被災状況や経年劣化で生じた異常など建物設備の診断情報を配信し、安全・安心な居住環境を提供する。