2015年9月10日木曜日

【地域を守る、それが建設業】湘南建協が「箱根見守り隊」結成/火山活動活発化で一致団結

 大涌谷の火山活動活発化で、一部区域への立ち入りが依然制限されている箱根(神奈川県箱根町)。周辺の1市3町(小田原、箱根、湯河原、真鶴)の地域建設会社で構成する湘南建設業協会(川久保暉勇会長)が「箱根見守り隊」を結成し、県の要請に応じて通行止め措置などに対応するとともに、非常時に備えて会員間の連携体制を整えている。10月には降灰を想定した除去訓練も行うという。川久保会長は「未経験の事態に、協会として可能な備えを万全にしたい」と話し、見守り隊の活動を強化する方針だ。

6月に発足した「箱根見守り隊」のメンバー
箱根一帯は、4月下旬から火山性地震が目立ちはじめ、気象庁は現地調査を経て5月6日に噴火警戒レベルを2に引き上げ、箱根町は一部地域の住民に避難指示を発令。同時に火口周辺への立ち入りを禁止した。警戒レベルは6月30日に3に上昇。箱根町は、7月3日に大涌谷近辺の想定火口域周辺を警戒区域に定め、立ち入りを制限した。警戒区域は8月24日に変更されたものの、現地は今も厳重な警戒が続いている。

 箱根見守り隊は、6月3日に結成式が行われ、活動を本格的に開始した。「火山活動が予断を許さなかった」。川久保会長は結成当時をそう振り返る。協会は、神奈川県県西土木事務所小田原土木センターと災害協定を締結しており、警戒レベルが2に引き上げられたのを受け、関係機関からの対応要請に備える必要があると判断。非常時には箱根地区以外の会員の応援も欠かせなくなるとみて、同地区以外を含む全会員に5月7日、会長名で協力要請を通知した。箱根地区の会員企業は即座に、保有重機の用途や台数、対応可能な人員をあらためて把握した。

 仮に水蒸気噴火が起きた場合でも、噴石などの影響は、立ち入り規制エリアにとどまると予想されているが、「箱根地区の安全確保に万全を期す」との県の方針も踏まえて見守り隊を発足。道路災害への対応などに乗りだした。道路管理関係機関などと災害対応で連携する方針を確認済みで、国土交通省の横浜国道事務所、県の小田原土木センター、箱根町、神奈川県警小田原警察署と、見守り隊の構成会社による打ち合わせ会などで情報の周知や非常時の対応などについて協議を行っている。

通行止め作業を行う隊員
見守り隊はこれまでに、県道の通行止め措置や現地調査を実施した。協会として防じんマスクを購入し、活動時に着用するロゴの入った安全ジャケットを用意。緊急対応などに従事する車両に貼るマグネット式のステッカーも作っている。

 現状は、警戒体制を敷くにとどまるが、風評被害を恐れる観光業者など地元関係者の意向を踏まえ、常時のパトロールといった人目に触れる大々的な活動は控えている。川久保会長は「地元は風評被害を心配している。地域にとってマイナスになる活動は逆効果。大騒ぎしないよう配慮している」と語る。

 そこで協会では、万が一の事態を想定し、携帯電話を使った情報伝達訓練を8月28日に実施。山間部が多い地域だけに通話がつながりにくいエリアや、各社の担当者に対する情報周知の時間を入念に確認した。

 今後は、10月2日に降灰の除去訓練を行う。協会は県の小田原土木センターと共に、噴火対応のノウハウがある他県の関係機関とコンタクトを取り、必要な対応を会員レベルで勉強してきた。ただ、広範囲にわたる降灰があった場合、建設会社だけでなく道路管理者側にとっても未経験の災害になってしまう。

 降灰は、水分を含むと撤去するのが難しくなる。訓練では、ロードスイーパー、散水車、除雪車などを使用し、降灰の量ごとに撤去の課題や作業性をチェックする。川久保会長は「大噴火は別だが、火山灰が降ればわれわれがやるしかない。経験のない初めての災害に、協会として備え、犠牲者は出さないようにしたい」と決意を語る。

 訓練には当初、鹿児島市が業務を委託している道路降灰除去協会の担当者を講師に招く予定だったが、鹿児島・桜島の火山活動が活発化して現地で対応に追われていることから、協会の森谷賢一専務理事を中心に効果的な訓練の内容を練っている状況だ。

「結束してこの街を守る」と川久保会長
改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)の本格運用や社会保険未加入対策の強化といった建設関係の政策は進展しているものの、15年度の地元向けの発注工事は減っているという。

 「仕事が少なければ、人を雇い続けられず、重機も維持していけなくなる」と先行きを不安視する会員企業も少なくない。それでも、「この街を結束して守りたい。できることは、やっておこう」(川久保会長)というのが、地元で長く仕事をしてきた会員企業に共通する思いだ。

 協会は見守り隊を軸に会員の連携をさらに密にし、非常時の対応と地域の安全・安心の確保に貢献していく構えだ。

0 comments :

コメントを投稿