2017年3月29日水曜日

【日建連、女性活躍推進でアンケート】女性技術者、活躍広がるも課題浮き彫りに

 ◇働きやすい現場環境づくりが急務◇

 建設業界への女性進出の現状は|。日建連が会員企業を対象に実施している女性の活躍推進に関するアンケートでは、現場監督をはじめとした技術系職種で女性社員の採用が増加傾向にあることが分かったが、さらなる女性進出を阻むさまざまな課題も浮き彫りにされた。特に現場では、女性専用トイレの設置のルール化や出産・子育てを支援する制度の整備が万全でなく、女性が働きやすい環境づくりが急務となっている。

 □女性技術者、1年で2割増□

 日建連が直近で公表しているのは、15年度版のアンケート(日建連会員企業139社のうち回答企業96社、調査期間16年3~4月)。日建連けんせつ小町委員会の所属企業31社を通じ、協力会社(回答企業321社、調査期間15年11月~16年1月)を対象とした女性技能者に関するアンケートも実施した。14年度版のアンケートと結果を比較し、女性の活躍推進に向けた取り組みの1年間の進展状況を分析している。

ゼネコンの技術系女性社員の採用機運は近年、大きく高まっている。日建連会員企業へのアンケートによると、1社当たりの技術系女性社員の人数は平均で35・2人(14年度は29・2人)、女性の現場監督の人数は平均で6・4人(同5・4人)にそれぞれ2割程度増加した。全体に占める女性の割合は、技術系社員で約2・8%、現場監督で約1・4%だった。

 国交省と日建連ら建設業団体が共同で14年8月に策定した「もっと女性が活躍できる建設業行動計画」では、「女性技術者・技能者の5年以内の倍増」を目指すことを明確化した。日建連の会員企業のほとんどが将来的に女性技術者の採用増を見込んでおり、女性技術者を5年以内に倍増させる意向を示している企業も11社から25社に増加している。

 企業側が採用増に意欲的でも、そもそも就労希望者が増えなければ将来的な女性の定着は図られない。そこで各社では、女性の職場として建設業界をアピールする取り組みも活発化している。業界内の女性の活躍に関するコンテンツを広報誌などに掲載している企業は23社(同17社)、ホームページで紹介している企業は40社(同20社)に上る。自社の協力会社組織などを通じ、女性技能者の入職促進に取り組んでいる企業も9社(同2社)と大幅に増加した。

 □時差出勤など制度充実を□

 ただ、女性が働きやすい現場環境の整備は道半ばと言える。現場事務所に何らかの形で女性専用のトイレを設置している企業の割合は1年間で61%から64%に微増したが、そのルールを徹底している企業は6社にとどまる。現場によってはルール化している企業は20社、特にルール化していないが設置している現場がある企業は35社と過半数を占めるが、設置している現場がほとんど無いと答えた企業が34社もあるのが現状だ。

 トイレのほかに女性専用として整備すべき設備としては、回答が多かった順に、「更衣室」が77社、「休憩室」が55社、「化粧洗面台」が34社、「シャワー室」が20社。特に「更衣室」と回答する企業の割合は8割を超えており、トイレとともに整備促進の必要性が高まっている。

 出産や子育てを支援するための社内制度も、さらなる充実が求められる。支援制度の導入企業は71社に上っているが、そのうち現場配属の女性技術者に時差出勤を認めている企業は12社と少数派だ。

 自社の現場に従事する女性技能者を対象として、時差出勤や早期帰宅の制度を積極的に活用するよう指導している企業は2社、活用を許可している企業は30社だった。

 男性中心の社内で長く働き続けるには、女性社員に対する継続的なサポート体制も不可欠だ。出産・育児やキャリアパスに関する本人の相談を受けたり、働き方に関する上司の意識改革に取り組んだりと何らかの形で社内研修を実施している企業は19社を数える。直属の上司以外にも悩みを相談できるよう、社内外に相談窓口を設置している企業は39社。中には、社員だけでなく、その家族や派遣社員、協力会社の社員の相談を受け付ける企業もある。

 今後、子育てをきっかけに退職した女性技術者の再雇用制度を導入する動きも広まりそうだ。慣例として認めている企業も含めると再雇用を実施しているのは27社。将来的に実施する予定があると回答した企業は20社に上った。

 □協力会社は元請支援に期待□

 一方、女性技能者の雇用環境も改善が必要だ。日建連けんせつ小町委員会所属企業の協力会社に対するアンケートによると、技能労働者のうち女性の割合は約1・9%。軽作業員(女性比率60・0%)、CADオペレーター(同40・0%)、建具工(同21・8%)など女性の割合が10%を超えた職種もあれば、のり面工、石工、溶接工、潜かん工、板金工、ガラス工などの職種は回答企業で一人も女性がおらず、職種によって女性の入職に差があることが分かった。

 今後の雇用に関しては、専門工事業者の間で積極的な姿勢と消極的な姿勢が拮抗(きっこう)している。建設業界の担い手不足などを背景に、積極的な雇用を検討している企業は139社だったが、それを上回る149社が女性の雇用に消極的と回答した。

 消極的な理由を「女性を受け入れる現場環境が整備されていない」とした企業は38社。「力仕事なので女性には無理」「危険を伴う職種なので難しい」といった理由を上回っており、女性の雇用促進には現場環境の改善が不可欠であることが明らかになった。
元請のゼネコンに期待する取り組みについてのアンケートでは、女性専用トイレの設置など現場環境の整備を進めてほしいと回答した企業が108社で最も多かった。雇い入れ時の助成や優遇措置、出産・育児に配慮した休暇制度や柔軟な勤務形態への理解を求める意見も目立った。

 ゼネコンの間では、協力会社が女性技能者を雇用・育成することを支援しようとする動きもある。日建連会員企業のうち、実際に支援策を講じているのは6社(14年度は1社)、支援を検討しているのは32社(同15社)に増えた。女性技能者を自社現場で研修させたり、協力会社の代表者が集まる会合でダイバーシティー(人材の多様性)の取り組みを報告したりして、女性が働きやすい環境づくりと積極的な情報発信に取り組んでいる。

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