◇福島復興全力、地元建設業に期待◇
復興が新たなステージに入った16年度。東北の被災地では、インフラ整備や住宅建設・まちづくりが着実に進展する一方、全国では急激に伸びている観光需要の取り込みが思うように進まないなど課題も少なくない。福島第1原発事故の影響で遅れが目立つ福島の復興加速も大きな課題だ。「復興・創生期間」の2年目に向けた政府の取り組みや展望について、今村雅弘復興相に話を聞いた。
--被災地の現状をどう見る。
「ガスや水道などの生活インフラの復旧はほぼ完了した。道路や防潮堤の整備、宅地の造成や区画整理もかなりピッチが上がってきている。インフラの復旧当初は用地買収などの工事の準備に時間がかかったが、着工以降のペースは非常に速かった。例えば、道路整備は、国が三陸沿岸道路などの整備で初めて導入した新しいPPP方式(事業促進PPP)が準備の加速につながり、事業のピッチを上げてきた」
「災害公営住宅の工事は本年度末で8割、来春までに95%完了する。津波で被害を受けた沿岸地域での高台移転の工事も本年度末で7割、来春までに9割完了する。防潮堤の完成は4分の1程度にとどまるが、既に大部分が着工しているので、今後も順調に進んでいくだろう。震災直後の大変な混乱の中から、これまでご尽力いただいてきた関係者や地元の方々に改めて心から敬意を表する」
--今後の課題は。
「福島第1原発事故の影響で遅れている福島県の復興に全力を尽くす。引き続き原発の廃炉や原発周辺での放射性物質の除染に中長期的に対応していく。原発周辺の帰還困難区域で、県外などに避難されている住民の帰還を受け入れられる復興拠点の形成にも腰を据えて取り組む。そのために政府は、復興拠点の形成を支援する国の対策を盛り込んだ福島復興再生特別措置法改正案を今国会に提出した」
--復興拠点の形成で配慮することは。
「帰還された住民が生活や仕事を行えるように医療・教育機能の導入や商業施設の整備などを進めることが不可欠だ。避難されている住民に対し、帰還を判断する材料として、どのようなふるさとになっていくのかという復興拠点の将来像をできるだけ早く『見える化』し、帰ってきていただけるように働き掛けていきたい。国としては、インフラ整備や除染など福島の復興の加速に向けてできる限りの支援を講じる。被災地以外の企業の新規立地も経団連に呼び掛けていく」
--被災地ではさまざまな産業で復興を担う人手が不足している。
「特に岩手県の水産業が深刻な状況だ。当面は全国を対象に被災地で働き手を確保するための優遇策を講じていく。同時に、全国的に人口減少や少子高齢化が進む中、限られた人材をどう有効に活用するかが大事だ。例えば、小規模な事業者同士が連携したり、工場を統廃合して近代化したりして、効率的に収益が上がる事業構造をつくっていくことが大事だ。それにはIT(情報技術)の活用も有効だろう」
--復興拠点の形成では建設業の担い手確保が不可欠だ。
「復興拠点の形成は、避難している住民の方々に帰還してもらうために時間との勝負になる。そのため、できるだけ地元の建設業のノウハウを活用することが大事だ。なぜなら地元のことは地元の業者の方々が一番よく分かっているからだ。いざとなれば、担い手の確保に迅速に対応していただけるのではないか。地元の建設業の方々には非常に期待している」
--東日本大震災の教訓を今後の災害対応にどう生かしていく。
「東日本大震災の教訓は、昨年の熊本地震や鳥取地震などの災害対応でかなり生かされているように感じる。複数の自治体の連携による災害対応はその一つだ。ただ、これからもどんな災害が起きるか分からないので、今の仕組みで本当にスムーズに対応できるのかどうかを総点検しておく必要がある。防災・減災についても、ハード・ソフト両面で日頃の取り組みを考えておくべきだろう」。
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