尿酸値が上がってしまい、食生活を変えざるを得ない。思うように食べられない中で着目したのが「もやし」。そこからもやしの素晴らしさに目覚め、栽培セットを持参しながら旅をする-。椎名誠さんの小説『モヤシ』のストーリーだ▼いつでも手軽に食べられるもやしは食卓には欠かせない。お気に入りは、カレーマヨネーズあえ。ゆでる、掛ける、混ぜる。たった三つの動作で、うまいつまみに仕上がる▼出会った中では、青森県大鰐町の「大鰐温泉もやし」が特においしかった。シャキシャキとした歯ごたえで、風味も良い。温泉熱を利用した土耕栽培で、全工程を温泉水だけ使って育てるそうだ。値段は少々高いが満足の味わいだった▼そのもやしが危機的状態にある。原料の種子や人件費が上昇する一方で、小売価格は05年比で約10%下落。廃業する生産者も多いという。もやし生産者協会は「生産者の窮状にご理解を!」と題した声明を発表。適正価格での取引への理解を求めている▼無くなるぐらいなら、少々の値上げはやむを得まい。こうした構図は多くの産業に共通する。買い手の側の一手が試されている。
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