北海道を代表する空の玄関口・新千歳空港(千歳市)。近年は格安航空会社(LCC)の就航による国内線の旅客数増加に加え、韓国や台湾、中国などアジア圏からの訪日外国人旅行者(インバウンド)を中心に北海道観光の人気が上昇。空港利用者の大幅増加を背景に機能拡張が急務となっている。観光振興の追い風を受け、官民連携で国際線ターミナル地域の再編・再整備事業を推進し、2020年東京五輪までの事業完了を目指す。
□インバウンド急増で機能拡張□
3000メートルの滑走路2本で運用している新千歳空港の16年度旅客数は国内1882万人、国際272万人の計2155万人。東日本大震災の影響を受けた11年度以降は右肩上がりで増加し、特に国際線の旅客数が急増している。
国際線の旅客ターミナルビル(S一部RC造地下1階地上4階建て延べ約6・1万平方メートル)は10年3月に供用を開始した。駐機場(スポット)6カ所、旅客搭乗橋設備(PBB)8基、チェックインカウンター47ブースなどを備え、ピーク時には1時間当たり530人以上の旅客に対応できる。
多くの旅客で混み合う国際線ターミナル |
旅客や航空機の処理能力が飽和状態に近い状況を踏まえ、国は空港機能の拡張に迅速に対応する必要があると判断。国土交通省東京航空局と北海道開発局札幌開発建設部は16年度から、国際線ターミナル地域の再編事業に乗りだした。
同事業では国際線エプロンの拡張(3スポット増)や南側誘導路の新設(延長1・7キロ)、取り付け誘導路や構内道路、GSE(空港用地上支援機器)置き場の整備、CIQ(税関・入管・検疫)施設の機能拡充などを実施する。
国際線の混雑する時間帯でも駐機できるようにスポット数を十分確保するとともに、新たな誘導路を国際線エプロン南側に整備。国際線の航空機がエプロンから滑走路へ移動する際、国内線の到着・出発機との交錯によって発生していた誘導路の混雑を解消する。国際線スポットから滑走路までの移動距離も従来ルートより約1・5キロ短縮し、空港の利便性向上や航空機の慢性的な遅延緩和を図る。
工事が進む国際線ターミナル増築エリア付近 |
地域再編事業と連動し、国際線旅客ターミナルビルの施設再整備も動きだした。施設を管理・運営する新千歳空港ターミナルビルディングは事業費約650億円(官庁エリアを除く)を投じ、既存ビルの南側にS一部RC造地下1階地上4階(一部8階)建て延べ8万3500平方メートル規模の施設を増築し、既存ビルの改修も行う。
□2020年東京五輪までの事業完了めざす□
主な工事内容は出発・到着ロビーの拡張、テロ対策などセキュリティー機能強化、免税店といった商業施設の拡充、ターミナルビル直結ホテル(4~8階部分、対象面積2万0500平方メートル)の新設、出国・入国エリアの施設機能強化(国の担当)など。チェックインカウンターは現在の47ブースから74ブースに、保安検査レーンは4レーンから9レーンに増設。PBBは8基から17基に、出発・到着荷さばき搬送設備は各2基から各5基にそれぞれ増やす。
再整備後の完成イメージ(中央手前が増築部) |
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