2018年1月24日水曜日

【回転窓】希代の論客を悼む

〈未来は予測できないからクライシスやデインジャーに満ちているのです。それでは消費者も企業家も将来について確率的な計算ができない。そこで公共事業や教育なども含めた公共活動が必要になるのです〉▼今から4年前、元東京大学教授で評論家の西部邁氏が藤井聡京都大学大学院教授との対談で語った言葉である(本紙2014年10月27日付)。だから〈公共事業や公共活動を無視していると未来をまったく予測できなくなる〉とも▼1990年代後半に公共事業バッシングの風が吹き荒れる中、大衆社会論を展開していた西部氏は土木学会誌に寄稿。先に紹介した土木学会創立100周年記念の対談シリーズ「築土構木の思想」でも公共事業の必要性などについて持論を述べた。その本質を突く指摘の数々を聞き、取材の時間がたつのがとても早く感じたのを覚えている▼21日に西部氏の死去が報じられた。保守派の論客として知られ、評論活動だけでなくテレビの討論番組にも出演。鋭い批判が注目を集めた▼〈公共活動〉がなぜ欠かせないか。こうした大切なことを分かりやすく解説してくれた希代の論客を悼む。

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