2018年1月15日月曜日

【中堅世代】それぞれの建設業・188

各社の安全衛生担当者が取り組む課題は確実に増えている
 ◇見えない所で現場の安全支える◇

 建設業界の安全衛生関係の団体で働いている真中幹夫さん(仮名)。最近、会員のゼネコン各社で安全衛生を担当している人たちの超多忙を心配している。

 会員会社の担当者と現場の視察に出向くと、社内で発生した安全上のトラブルで急きょ帰社する参加者が出ることが頻繁にある。安全衛生の担当者が担う業務は確実に増えている。にもかかわらず、施工部門に比べると人員の配置は各社とも必ずしも手厚いとはいえないようだ。「みんな大丈夫かな…」。団体に集う仲間のことが気になる。

 現場のパトロールや支店の指導は頻度が増す一方。市場の活況で各社とも多くの手持ち工事を抱えるだけに、経験や知識が豊富でも体力の衰えてきた高齢の職人や、経験の浅い若手技能者にも働いてもらわなければならない。事故が起きやすい状況と向き合う場面は増えている。

 制度や規制の見直しも進む。安全帯の胴ベルト型からフルハーネス型への移行や、義務化された化学物質のリスクアセスメント、さらには現場のメンタルヘルス対策の充実など、担当者が新たに対応を迫られる事項は枚挙にいとまがない。

 「現場の施工を熟知していることが最低条件。その上で、法規制に関する知識、他の部署と調整をしたり、社内にルールを徹底したりするマネジメントの能力も不可欠」。団体に着任する前の自身の経験と、奮闘している仲間の姿から、安全衛生部門の担当者に求められるスキルを改めてそう認識した。

 新しい制度や規制を施工現場で運用するに当たって、安全の重要性を痛感している現場担当者の多くは素直に受け入れてくれる。しかし、安全に配慮した生産工程が構築される裏側では、各社の安全衛生担当者が汗をかいている。そうしたことをもっと多くの人に知ってもらいたいとも思う。

 労働安全衛生法の改正によって、一定の有害性を持つ化学物質を扱う塗装や接着などの作業を行う際は、リスクアセスメントと併せてリスクのレベルに応じた安全衛生対策を講じることが義務付けられた。この新たな規制を現場でどう運用するか。多くのゼネコンの安全衛生担当者が頭を悩ませたが、各社の担当者間などで情報交換が進み、条件をクリアした運用方法が浸透した。

 フルハーネス型安全帯の着用を義務化する新規制では、安全帯の構造規格を改正するための検討などが行われている。新しい安全帯を適切に普及させるためにも、各社の担当者間での情報交換を促す必要があると考えている。

 「(安全衛生担当者は)もう少し日の目を見てもいいのでは」。外部の人からそう言われることもあるが、「安全部門が前面に出ることなく生産活動が続いていく環境の方が望ましい」と思う。だからこそ、業界の安全文化の醸成に懸命に取り組む各社の担当者の負担を少しでも減らしたい。これからも、そこに役立つ組織運営に努めるつもりだ。

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