2018年1月25日木曜日

【回転窓】情報を発信する者の責任

小説家は元来うそつきだが、書いたことには責任を持たなければならない-。東京メトロが先日開いた地下鉄開通90周年の記念講演会で、作家の浅田次郎さんが、自身が考える小説家のあり方をそう話していた▼作家の想像から生み出される小説の世界は現実ではない。ただ、その世界観を構築する上では、背景にあるものや関連する事象を調べ尽くし、「誠実なうそを組み上げる」といった過程が重要になる▼地下鉄を題材とした浅田作品では、地下鉄の歴史から地下鉄が社会・経済や市民に与えた影響までを深く考察しながらストーリーが展開する。史実には残っていないが、作家自身が小説で描いた出来事がどこかで起こっていたと確信しているからこそ、読者も共感を覚えるのだろう▼日々の出来事がネットですぐさま世界中に発信される昨今、事実と異なるうその情報も拡散する。米国では大統領が就任1年を機に、うそだったと見なした報道を「フェイクニュース大賞」として発表。メディアとの対立が深まっている▼立場は違っても、社会に影響を与える情報の発信者にはその内容への責任が等しく求められよう。

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