2019年12月2日月曜日

【駆け出しのころ】協和エクシオ取締役常務執行役員財務部長・樋口秀男氏

 ◇批判におくせず前進を◇

 就職活動では電機メーカー関係を中心に回っていましたが、厳しい時期でなかなか内定がもらえませんでした。10月半ばごろに大学の就職部にあった掲示板に協和電設(現協和エクシオ)の学校推薦枠の張り紙を見つけ、縁あって入社することができました。

 当時の日本電信電話公社(現NTT)からの仕事を中心に行っていたこともあり、安定している会社だという印象を受けました。しかし、入社から4年目ごろになると民営化前の電電公社が投資を控えた影響により、会社の業績が急激に悪化。余剰人員は外部の自動車工場や、新規分野の端末(電話機)販売の営業などに回されました。

 当然、事務系の管理部門も人員縮小が進められました。人事部にいた私はタイミング的に他部署に異動する時期でもあったので、回されるのなら端末販売の方がいいかなと覚悟していました。当時の上司から伝えられた異動先は経理部。経理部への異動が周囲も納得するように、商法や会計など経理に必要な知識を必死で勉強しろとげきを飛ばされ、自分もその期待に応えようと勉強しました。

 努力のかいもあり、社内では「経理のことは樋口に聞け」と言われるほどになりました。上司にはっきりと聞いたことはありませんが、経理分野の適性と合わせて、私の将来のことも考えてくれたのだとありがたく思っています。

 経理部では監査法人の会計士や国税局の調査部など、専門的な方々と対等に議論することに面白みを感じました。会計ルールなど決まった枠組みの中でも、自分の意見や考え方を主張できます。経験を積んでいろんな知識を身に付ければ、上司にも会計上こうするべきだと進言でき、他では得難い経験をさせてもらいました。

 監査法人から旧態依然とした伝票会計を採用し続けていることを指摘され、自社で会計システムを作ることになりました。最初はどう取り組めばいいかも分からず、大変苦労しました。プレッシャーとストレスで十二指腸かいようを患いながらも、何とか完成させることができました。

 新入社員には、批判する側ではなく、批判される「与党の仕事」をするようにとよく話します。批判を受けないような変革は既にどこかで行われています。批判を受ける中で人間は成長できるのだから、批判におくせず、前へ進んでもらいたいです。

 難しい時代に入っており、今のままでは会社も生き残れないかもしれません。自己の能力の限界を超えることができなくなり、組織全体が無能化するという「ピーターの法則」を反面教師としながら、どんな立場になっても、新しい仕事への意欲を常に持ち続けてほしいと思います。

入社16年目ころに撮影した息子さんたちとの一枚。
休日に子どもたちと遊ぶことが仕事の活力にもなっていた
(ひぐち・ひでお)1980年立教大学経済学部卒、協和電設入社。執行役員東海支店長や常務執行役員財務部長(現任)などを経て2019年6月から現職。東京都出身、63歳。

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