2019年12月20日金曜日

【1号棟は改修、残る2棟はVRでデジタル保存】広島県、旧陸軍被服支廠(広島市南区)の活用方針決定

 第2次大戦中に軍服などを製造していた「旧広島陸軍被服支廠(ししょう)」(広島市南区)を管理する広島県が、建物の活用方針をまとめた。

 震度6強以上の地震で倒壊や崩壊する危険性が高いことを踏まえ、県は現存する3棟のうち1号棟だけを保存。残る2棟は解体した上、VR(仮想現実)を使ってデジタル保存する考え。2020、21年度に保存へ向けた改修工事などに着手する予定だ。

 県がまとめた活用方針には▽爆心地に最も近い1号棟を保存する▽3棟並んだ景観をVR技術で精密にデジタル保存する▽保存する1号棟と解体する2、3号棟の跡地は安全対策とともに国や市と連携し活用を検討する-の3点を明示した。

 20、21年度に1号棟の屋根と壁面補強を行う改修工事に着手。22年度までに残る2棟の解体撤去に入る予定だ。デジタル保存を除き事業費約8億円と試算している。

 旧被服支廠は原爆の爆心地から2・7キロの地点にあり、1913年に完成。戦時中は軍服や軍靴の製造所として稼働し45年8月の原爆投下で被害を受けた。戦後は運送会社が倉庫として利用していたが、老朽化が懸念されるため解体も視野に県が施設の在り方を検討。地元の市民団体が「物言わぬ被爆者」として保存を要望していた。

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