2019年12月11日水曜日

【工場探訪】住友大阪セメント栃木工場「災害廃棄物処理で地域貢献」

 住友大阪セメントにとって栃木県佐野市にある栃木工場は、セメントの一大需要地である首都圏に近接する重要な生産拠点。高品質なセメントを安定的に製造し供給するという役割に加え、原燃料として受け入れている廃棄物を処理し続けるという使命も負っている。

 リサイクル率は国内にあるセメント工場でもトップクラス。10月の台風19号では地元の佐野市で発生した災害廃棄物を大量に受け入れ、早期の復旧・復興実現を下支えしている。

 栃木工場は1938年に操業を開始した。現在は約100人の従業員が働く。セメントの主原料の石灰石は市内の唐沢鉱山で採掘し、世界に1台だけという空気圧送輸送機(カプセルライナー)で、約3キロの離れた工場に搬入している。企業活動や家庭で排出された廃棄物や副産物も受け入れ、原燃料として使用している。

 栃木工場でセメント1トンを製造するのに使うリサイクル原燃料は679キロ(2017年度実績)と、国内にあるセメント工場の平均値(約500キロ)を大きく上回る。09年4月に稼働したバイオマス発電設備(定格出力2万5000キロワット)は木質チップなどを燃料に発電。セメントの製造に必要な電力をすべて賄っている。石炭などの化石燃料の使用量を削減して二酸化炭素(CO2)の発生量を抑え、地球温暖化防止に寄与するという役割を果たしている。

 セメント製造で不可欠な燃焼炉(ロータリーキルン)は、燃焼温度が1450度にも達する。超高温での処理は燃えかすがほとんど出ず、有害物を無害化できるという特徴もある。台風19号の襲来後は、佐野市内から浸水した畳や倒壊した家屋の木材といった災害廃棄物を受け入れ、燃焼処理している。

 受け入れた災害廃棄物は、燃焼効率を上げるために同社グループ会社の泉工業(栃木県佐野市、中塚誠代表取締役)で「1次破砕」を行い、細かくして栃木工場に運んで利用する。細かく砕いた家具は木材チップとなりバイオマス発電の燃料に使用する。畳は栃木工場に持ち運んだ後に「2次破砕」を行う必要があり、処理後にセメントの製造過程の熱エネルギーに使われる。

 畳は処理の手間が掛かることから受け入れと処理が追いつかないという。処理スピードが遅いと、畳などは発酵し臭いが発生してしまうため作業環境が悪くなる。こういった現状から泉工業の中塚代表取締役は「いかに早く処理するかが課題だ。処理スピードを上げていち早く次の災害廃棄物を受け入れたい。作業環境も改善していきたい」と力を込める。

 同工場の大橋博工場長は「今後は、ほかの市からの受け入れを検討したい。セメント業界での取り組みを理解してもらい、当社は微力ながらも地元に根付く会社として貢献したい」と話している。

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