2019年12月17日火曜日

【経営改革に力尽くす】五十嵐久也氏(芝浦工大理事長、三井住友建設元社長)が死去

 芝浦工業大学理事長で三井住友建設の社長を務めた五十嵐久也(いがらし・ひさや)氏が10日に死去した。79歳だった。葬儀は近親者で済ませた。後日「芝浦工業大学葬」を開く予定。

 北海道出身。1964年に芝浦工大建築学科を卒業した後、鹿島へ入社。現場施工部門に26年、管理部門は8年、営業・支店経営部門に8年在籍し、建築施工や営業のエキスパートとして活躍した。2002年常務横浜支店長、05年顧問を最後に退職。大和証券エスエムビーシープリンシパル・インベストメンツ顧問を経て06年6月、三井住友建設の社長に就任した。

 旧三井建設と旧住友建設の合併から3年が経過した時点での社長就任に当たり、「顧客や社会から信頼を得る会社になる」との方針を掲げ、同時に「社員の気持ちを一方向に結集したい」との考えから社内融和にも力を注いだ。

 経営改革にも辣腕(らつわん)をふるった。営業部門を独立させ顧客に対しより細やかな営業を展開。建築、土木の両営業本部に事業戦略部門を設け、新たなビジネスモデルを模索した。自社の強みである超高層マンションやプレストレストコンクリート(PC)橋梁の技術にも磨きをかけた。

 社員には「もう1%の努力」を求めつつ、収益が上がれば処遇を改善し見える形で還元した。10年4月に則久芳行社長へバトンタッチする際、「困難を乗り越える体制はできた」と笑顔で語ったのが印象に残る。

 五十嵐氏は教育者としても功績を残した。社長退任後の同6月に母校の芝浦工大の理事長に就任。17年4月には悲願だった建築学部の新設を実現した。社会ニーズが多様化する中で専門特化するだけでなく、広範囲の知識を備えた世界に通用する人材の育成を掲げ、工学部建築工学科など既存の建築やデザイン関連2学科1領域を、1学部1学科3コースに再編・統合した。五十嵐氏は大学創立100周年を迎える27年に「理工系私学のトップになる」と意気込んでいた。

 毎年、年末に記者懇親会を開くなど広報活動にも熱心だった。「大学も企業も広報の力がないとこれからは生きていけない」という持論から、情報発信に力を注いだ。取材に訪れた記者にねぎらいの言葉を掛け、分け隔てなく対応する思いやりのある人だった。

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