2019年12月12日木曜日

【ひと】川島組(茨城県土浦市)・川島一男代表取締役「曳き家『名工』の誇りを胸に」

 「私たちにしかできないことをしている」という誇りを胸に、仕事を続けてきた。曳き家工事のプロとして「現代の名工」に選ばれたことを「人生最大の喜び」と話す。曳き家工事は建物の構造によって施工方法を見極める。技術と経験が求められる仕事だ。1棟の移動に約2カ月を費やす難しい仕事をやり遂げた時の達成感は大きい。

 職人4人を率いる会社の代表。70歳を超えた今も現場で陣頭指揮を執り職人らに指示を送る。少数精鋭の陣容は「きちんと目の行き届くくらいが最も仕事を進めやすい」からだ。

 今でも印象に残っているのは、東日本大震災による地盤の液状化で傾いてしまった飲食店を移動させた時のことだという。田んぼを埋め立てた土地にあった倒壊寸前の建物を、新しい基礎の上に降ろした。大切な建物を曳き家の技術で守った喜びは「職人冥利(みょうり)に尽きる」。

 若手に入職を促す一環で高校生の職場体験も積極的に受け入れる。建物を移動させた時の達成感を通じて「特殊な仕事の面白さを感じてほしい」と願いを込める。

 (かわしま・かずお)18歳で父親が率いていた曳き家工事の仕事に就く。この秋、卓越した技能者に贈られる厚生労働省の「現代の名工」に。茨城県土浦市出身、71歳。

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