2016年3月10日木曜日

【現場探訪】キトラ古墳周辺地区体験学習館新築工事(奈良県明日香村)

軒の深い屋根が特徴の本館。公園と連続する地下構造物の別館
 1983年に彩色壁画が発見され、2000年には国の特別史跡に指定された奈良県明日香村のキトラ古墳。貴重な壁画を保管・展示し、古墳に関する資料や模型を見学できる博物館・体験学習施設が、キトラ古墳の隣接地に完成した。施工を担当した鉄建の折田新吾所長は「国宝級の壁画を保管するため、良好な保存環境が求められた」と強調し、「高い水密性の確保など品質管理に細心の注意を払った」と振り返る。

 ◇施工は鉄建、水密性確保し良好な保存環境に◇

 建設地は明日香村阿部山72の4(敷地面積約5万8389平方メートル)。キトラ古墳に隣接し、国営飛鳥歴史公園内に位置する。工事は国土交通省近畿地方整備局国営飛鳥歴史公園事務所が「キトラ古墳周辺地区体験学習館新築工事」として発注した。工期は14年1月29日~16年2月29日。設計を宮本忠長建築設計事務所、監理を都市企画設計コンサルタント、施工を鉄建がそれぞれ担当した。

 建物は、キトラ古墳を保存・管理する屋内展示施設の本館と、体験学習と施設管理の拠点となる別館で構成する。本館はSRC造地下1階地上1階建て延べ1970平方メートル、別館はRC造地下1階建て489平方メートルの規模。本館と別館は道路の下をくぐる地下通路でつながっている。

 明日香村の景観条例に基づき計画・デザインされており、外観は軒の深い勾配屋根が印象的な平屋の建物が1棟だけあるように見える。

 地下が工事の中心になったことから、鉄建の折田所長は「建築だけでなく土木の工事でもあった。建築、土木のさまざまな工法を用いながら施工に当たった」と振り返る。さらに「良好な保存環境を構築するため、構造物には高い水密性が要求された」と語る。

透明型枠でコンクリートの充てん状況を確認
 本館の工事では、まず地面を約9メートル掘り下げて、地下階の建設を進めた。透明な型枠を採用し、生コンクリートの充てん状況を確認しながら打設。湿潤性に優れるマットで養生するなどの方法を取り入れ、水密性や耐久性に優れたコンクリート構造物を実現した。

 地下構造物となる別館は、大空間を構築できるアンボンド工法を天井スラブに採用した。

 PC(プレストレスト・コンクリート)工法の一つで製品の精度・品質が高い上、スラブがたわみにくく、梁・柱を少なくできる。地面の高さとなる屋根には芝を敷き詰め、飛鳥歴史公園との連続性が生まれている。

 施設の名称は公募によって「キトラ古墳壁画体験館四神(しじん)の館」に決まった。

 無事故・無災害で竣工を迎えた折田所長は「苦労もあったが、一般の利用者に使ってもらっても恥ずかしくない施設が完成したと自負している。今秋のオープンが楽しみだ」と喜びを語った。

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