ICTツールへの受け止めを開くために現場を回る努力を惜しまない |
◇技術者の実感を最優先に◇
建設現場の業務効率化を支援するICT(情報通信技術)ツールを企業に提供する営業担当として働く林友貴さん(仮名)は、コロナ禍を経て、自分の役割をより強く認識するようになった。クラウド環境を利用してデータをやりとりし、生産性を向上させる取り組みに対する意識が、建設現場でも高まっていることを、ひしひしと感じている。
大学で建築を学んだが、違う業界に就職した。自ら選んだ道だったものの、就職先と水が合わず、転職先を探して目を向けた先が建設業界だった。派遣会社に入り、CADオペレーターとして勤務してから、現場での施工管理を経験した。名の知れたゼネコンの現場で働く機会にも巡り会えた。
「天候によって仕事が影響を受けて大変だったが、周りにかわいがってもらい、不満も無く仕事をしていた」と振り返る。だが、派遣の仕事を続けるかどうか迷いもあった。転職サイトに登録していて、たまたま目にとまったのが建設現場向けアプリなどを提供する今の会社だった。
「現場では紙でのやりとりが当たり前だった。そのことに疑問を抱いたことはなかった」と林さんは言う。だから、タブレット端末やスマートフォンから入力すればデータが整い、報告書がまとまることに正直驚いた。
ICTツールを手にしてみれば、手書きでは不便なことばかりだ。パソコンから入力するにもかかわらず、紙に印刷して手渡しして、それをきちんと整理しておかなければ必要な時に参照できない。「そもそも書類整理の仕事なんてモチベーションが上がらない」。それは偽らざる感想だ。
林さんは今、導入を検討する企業でシステムを説明したり、採用された現場で操作方法を教えたりするため、全国各地を回っている。コロナ禍でリモートワークや遠隔からの業務支援などのニーズが一気に高まり、問い合わせは増えた。ただ、ニューノーマル(新常態)が即座に浸透するとは思っていない。「ICTツールに慣れている人ばかりではない」ことも痛感している。
林さんが大事にするのは「スモールスタート」と「並走」の姿勢だ。「(ICTツールの扱いに)慣れている人が上手に使いこなし業務が効率化されれば、周りも関心を持つようになる。『これを使えば楽だよ』という評判の飛び火が一番うれしい」と林さん。
営業で回る今も、現場の技術者が一番忙しいと感じている。「現場の効率化のためにツールがあるが、そのために技術者がストレスを感じることもあると思う。ICTツールを使いこなすために現場の人が時間を取られるのはおかしい」。
だからこそ、操作性や利便性、機能を高めていく努力が欠かせない。「あくまで主役は現場の技術者。ツールは道具でしかない。現場で働いたことがある自分だからこそ、本当に役に立つ提案をしていきたい」。そうした軸がぶれないよう現場の声を拾い続ける。
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