2022年3月23日水曜日

【回転窓】メタボリズムの可能性

  中銀カプセルタワービル 4月に解体着手--。17日付の本紙1面に掲載した記事の見出しだ。建て替えかカプセル交換かで議論が繰り返されてきたが、ついにこの時が来たかと寂しさを覚える方も多かろう▼東京・銀座の端に位置する集合住宅(1972年竣工)は、2本の塔に140戸の取り外し可能なカプセル(部屋)が付いている。生物が代謝を繰り返しながら成長するようにカプセルは必要に応じて交換できる仕組みだ▼住戸の大きさは幅2・5メートル×奥行き4・0メートル×高さ2・5メートル。自分好みに空間をカスタマイズできる。60年代に展開された建築運動「メタボリズム」の実践作品で、建築家・黒川紀章氏(1934~2007年)の代表作として知られる▼「メタボリズムの建築は実体そのものより関係を重視する」と黒川氏は冊子『21世紀への遺言』(92年発行)に記した。実物の存在よりもメタボリズムの考え方や思想の継続、発展に重きを置いていたのだろう▼外されるカプセルは美術館への寄贈や宿泊施設での再活用が計画されている。場所を変えても共生し成長するメタボリズムの可能性を信じ続けたい。

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