2022年3月24日木曜日

【供用から半世紀、抜本対策必要に】首都高羽田トンネル(東京都大田区)、中床版の大規模更新が急務


  首都高速道路会社は23日、大規模更新を計画する東京都大田区の「羽田トンネル」で劣化状況などを報道機関に初めて公開した。1964年に供用を開始して50年以上が経過するトンネルは、躯体に浸透する海水が原因でコンクリートの中床版などが腐食。抜本的な性能回復が求められる中、上下線で1日当たり計10万台に上る通過交通に配慮しながら、更新事業をどう進めていくかが課題となっている。

 羽田トンネルは1号羽田線に整備された首都高初の海底トンネル。延長約300メートル、幅20・3~36・2メートル、高さ7・4~11・7メートルの規模。トンネル形式は横浜から東京方面に向かって開削、ケーソン、沈埋の3タイプで構成している。

 供用を始めて約20年となる1983年、同社は沈埋トンネルの剥落防止対策に着手。その後も天井板の撤去や塩害対策などを実施している。躯体同士を連結する継ぎ目に止水板を施しているが、各所で漏水が発生している。

 初公開したのは損傷が著しいダクト部。天井と車道の境に位置する高さ約1メートルの空間は、火災時に煙を逃がす通気口として利用されている。ダクト内はしみ出した海水が影響し、多くの箇所で中床版の亀裂や剥離が目立つ。開削からケーソンに切り替わる上り線部では1分間で最大約10リットルもの海水が流れ込んでくるという。

 トンネル躯体の損傷が全面的に拡大している状況を踏まえ、同社は補修を繰り返すなど対応に当たっている。だが抜本的に性能が回復しておらず、ダクトの床版を造り替えるなどの対策が急務となっている。

 大規模更新工事の期間中はトンネルの片側1車線が使用できなくなる。付近を流れる海老取川の両岸に架かる「羽田可動橋の一部を再利用したり、恒設の橋梁を新たに架けたり」(首都高速会社担当者)して大量の通過交通に支障を来さないよう工夫する考え。

 同社は昨年12月、有識者委員会を設置し大規模更新・修繕などを技術的に検討している。今後は有識者による約1年間の議論を経て、2024年度中の事業化を目指している。

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