2022年3月25日金曜日

【臨海副都心の発展をリード】ヴィーナスフォート(東京都江東区)が3月27日閉館

開業初年度は約1900万人が来場したヴィーナスフォート(森ビル提供)

  東京・台場にある商業施設「ヴィーナスフォート」が27日に閉館する。来場者の「体験」に着目した施設コンセプトに基づき、中世ヨーロッパの街並みを再現。1999年の開業以降、幅広い世代の人気を得た。臨海副都心エリアに人を呼び込む土台を作り、年間5580万人が訪れる一大観光拠点に押し上げた。施設運営を担う森ビルは跡地で再開発プロジェクトを計画する。街に新たな魅力を生み出そうとしている。ヴィーナスフォートが果たした役割とは-。

 複合エリア「パレットタウン」内の施設として99年に開業したヴィーナスフォート。敷地は東京都が開催を目指していた「世界都市博覧会」(95年中止決定)の会場予定地。敷地の暫定利用者として森ビル、トヨタ自動車らが選定され、開発を進めることになった。

 都市博中止などの経緯もあり、開発当時の計画地周辺はほぼ更地の状態だった。東京臨海高速鉄道りんかい線の全線開業前で、交通手段も新交通臨海線ゆりかもめに限られるなど交通アクセスも悪かった。就業者以外の来街者は少なく「突き抜けたインパクトがないと集客が非常に難しい状況」(森ビル)だった。テナントの誘致も難航していた。

 施設計画に当たっては、既存の商業施設と差別化し、足を運んでもらえるようにすることが最重要課題。そこで着目したのがモノを売るだけではなく「体験」を提供するという発想だ。施設の内装やサービスに工夫を凝らした「テーマパーク型ショッピングモール」というコンセプトを打ち出し、これまでにない商業施設を目指した。

施設内は中世ヨーロッパの街並みを再現した(森ビル提供)

 完成した施設は、イタリアや南フランスなど中世ヨーロッパを再現した街並みに店舗がずらりと並ぶ構成にした。ランドマークとなる噴水広場や教会広場も整備した。20代~30代前半の若い女性をメインターゲットに設定。「女性誌へのヒアリングを通じて『非日常感』を重視する傾向が強いことが分かり、海外をテーマにすることを決めた」(森ビル)。

 空を模した天井部には、時間に合わせて照明演出が変化する「スカイプログラム」を日本で初めて採用した。朝から夜にかけて1時間ごとに空模様が変化していき、屋内に居ながらも歩いて楽しい空間になるよう工夫を凝らした。

 施設は大きな反響を呼び、開業初年度には約1900万人が来場。当初予測の1200万人を大きく上回った。ヴィーナスフォートを起爆剤に周辺開発も加速し「アクアシティお台場」(2000年開業)や「ダイバーシティ東京プラザ」(12年開業)といった大規模商業施設が次々オープン。臨海副都心エリアは国内外から人々を引き付ける観光エリアに成長していった。

 森ビルらはパレットトタウンの再開発計画を進めており、昨年7月にヴィーナスフォートを含む一帯の施設を22年8月までに閉館すると発表した。跡地の一部にはトヨタグループの東和不動産(名古屋市中村区、山村知秀社長)がスポーツ観戦などが可能な多目的アリーナを整備する予定だ。森ビルが建設する施設の計画は未定だが、「臨海副都心の今後の新たなにぎわい創出に寄与する施設を検討していきたい」としている。

 臨海副都心の商業施設として人の流れを作り出したヴィーナスフォート。今後は新たな形でエリアの発展を支えていくことになるだろう。

 ■ヴィーナスフォート■

 ▷所在地=東京都江東区青海1の3の15

 ▷建物規模=S造3階建て延べ6万9158㎡

 ▷設計=森ビル、日本設計、エスインターナショナルアーキテクツ

 ▷内装施工=丹青社、乃村工芸社、内田洋行、西武百貨店

 ▷施工=戸田建設

 ▷竣工=1999年7月

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