据え付けが完了した左岸側の放流管 |
九州地方整備局立野ダム工事事務所は、工事が最盛期を迎えている立野ダムの建設現場(熊本県南阿蘇村立野ほか)で常用洪水吐き放流管の設置作業の様子を報道関係者に17日に公開した。効率的に施工を進めるため、堤体コンクリートの打設と並行して仮設構台上で放流管を組み立てた後、堤体内に引き込む「横引き施工」を採用。重さ約200トンの巨大な放流管を、油圧ジャッキで押しながらレール上をゆっくりと移動させ堤体内に据え付けた。
立野ダムの本体工事はブロック分けして堤体のコンクリートを打設するという複雑で手間のかかる柱状打設工法で施工している。一般的なダム放流管の据え付けは堤体内で鋼材を組み立てた後、コンクリートを打設するが、同ダムでは据え付けのための打設休止期間を減らすため、横引き施工を採用した。
同ダムは常用洪水吐きを下段に1カ所、上段に2カ所設ける。下段の放流管は一般的な工法で施工を終えており、上段の放流管2条を横引き施工で設置する。放流管は鋼製矩形断面溶接管。水を取り込みやすいよう上流側が広いラッパ状の形で寸法は呑口部が幅5メートル×高さ8・93メートル、吐口部が幅5メートル×高さ5メートル、長さは10メートル。
放流管の製作据え付け工事はIHIインフラシステムが担当。仮設構台には日綜産業の構台システム「マルチアングル工法」が採用されている。
同日の作業は午前9時ごろに開始。上流側に設けた仮設構台から仮橋とレールを使用して左岸側の放流管を下流方向に約26メートル移動させ、堤体内に押し込んだ。順調に作業が進んだため、当初の予定の半分の3時間程度で据え付けをほぼ完了した。
右岸側の放流管も近日中に据え付ける。据え付けた放流管はコンクリートで巻き立て、堤体の高さが一定に達したら流木などを捕捉するスクリーンで覆う。
横引き施工により本体コンクリート打設の待ち時間が3カ月ほど短縮され、型枠やアンカーの設置などの作業の輻輳(ふくそう)が減るため安全に効率よく作業ができるという。同事務所の岩元隆太郎工事課長は「DX(デジタルトランスフォーメーション)も活用しながら効率的に良いものを造っていく」と話した。
同ダムは国直轄では初となる流水型(洪水調節専用)で型式は曲線重力式コンクリートダム。堤高87メートル、堤頂長197メートル、堤体積約40万立方メートル、総貯水容量約1010万立方メートル。本体工事は西松建設・安藤ハザマ・青木あすなろ建設JVが担当。2022年度末までに本体コンクリート打設を完了する予定。
0 comments :
コメントを投稿