2022年3月1日火曜日

【駆け出しのころ】建設技術研究所代表取締役専務執行役員・西村達也氏

  ◇基礎力を高め自ら考える◇

 河川一筋のように見えますが、第1志望だった岩盤力学系の研究室が定員オーバーで入れず、水理工学を選んだのが実情です。担当の先生は怖かったですが、学びながら河川への関心が強まりました。

 大学時代に取り組んだ研究を少しでも生かせればと思い、当社に入社後は河川関係の部署に配属され、主に事業の上流側の計画づくりを中心にして業務に携わってきました。入社3年目ごろから担当した鶴見川の総合治水は最近の「流域治水」に通じる先駆け的な取り組みで、十数年ほど関わりました。

 流域の自治体など関係者らで構成する協議会を中心に、水害を抑制する計画・目標などを議論しながら施策を進めます。関係者が多いこともあり、会議資料の修正に直前まで追われることもしばしば。建設省(現国土交通省)の出先事務所の方々と頻繁に打ち合わせし、夜遅くまでFAXでやりとりしながら資料を仕上げたのもいい思い出です。

 同じ川の仕事に長く携わると、川の歴史や過去の取り組みなどの理解度が深まります。発注者側の担当者は数年で他部署に異動されるため、新任の方にこれまでの経緯を分かりやすく伝え、時には治水対策などをこちらから提案できるようになりました。

 複数の業務を抱え、なかなか休む間もない忙しい日々でしたが、特につらいと思うことはありません。入社5、6年目ごろに担当することになった、大学の先生との水制工の研究はさすがに大変でした。他の仕事もしながら、研究し論文を出すため、日々のスケジュール調整は業務が重なると苦労しました。7、8年ほど携わり、水制工を検討するプログラムの作成などに時間もかかりましたが、研究成果は対策工の検討業務など将来の仕事につながります。

 大阪、中部など東京本社以外の支社に転勤すると、もちろんその土地、川のことはよく知りません。これまでとまったく違う環境の仕事では、自身の基本的な技術力が問われます。水制工の研究は、河川技術者としての基礎的な力も高めてくれました。

 2000年ころから2年ほど関わった、河道計画検討の手引を作成する業務も思い出深い仕事です。手引では、それぞれ特徴が異なる川のこと全てを網羅はできません。それでも読み手により良い形で伝わるよう、多くの方々の意見を踏まえながら丁寧に作り込みました。

 みんなで意見を出し合いながら一から検討し、成果が残る仕事は面白く、やりがいもあります。こうした仕事をしていくうちに、業界で一番と言われるぐらいの河川技術者になりたいと思い、何事にも逃げずに最後まで頑張ってきました。若手には基礎を固め、受け身でなく、疑問に感じたことを自ら考えながら成長してほしいと思います。

入社7年目、北欧視察で訪れたストックホルムで

 (企画・営業本部長、にしむら・たつや)1985年埼玉大学大学院工学研究科修了、建設技術研究所入社。東京本社副本社長、東北支社長、企画・営業本部長(現任)などを経て2021年4月から現職。鳥取県出身、62歳。

0 コメント :

コメントを投稿