2017年6月13日火曜日

【記者手帖】建物のにおいと記憶

地方都市の市場に共通の「におい」を感じる。乾物や生鮮食品、総菜、古い建物などが混じり合い、年月を重ねた市場が発する独特のにおい。そんな市場の多くが建て替えの時期を迎えている。那覇市の第一牧志公設市場もその一つだ◆戦後の闇市から発展し、現在の建物は1972年に建てられた。色鮮やかな魚など地元の食材が並んだ市場内を歩くだけでも楽しく、学生のころから沖縄本島を訪れた際には必ず立ち寄る。市民の台所であり観光名所としても人気だが、建物の老朽化が著しく、建て替えるため2年後に解体が始まる◆思い出のある建物が取り壊されるのは少し惜しい気もするが、イベントスペースなども設けられる新しい市場が地元の人や観光客に喜ばれる施設になればいい。建て替え中も近隣に仮設店舗を設けて営業は続け、新市場は22年度に現在地でオープンする◆現市場から仮設店舗、新市場と移っていくと「におい」はどう変わるのだろう。それを確認するためにも残る2年間、今の市場のにおいをしっかりと記憶しておきたいと思っている。(松)

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