2017年6月30日金曜日

【労災ゼロに向けた取り組みは?】日建連・竹中康一安全対策本部長に聞く


 ◇きめ細かい管理で労災減めざす◇

 東京オリンピック・パラリンピック関連工事の本格化や都市部の民間開発による工事量増加に伴い新規入職者が増加している。その一方で労働災害の発生件数の増加も懸念される。

 事故が起こることにより、作業員本人のみならず家族や仲間が悲しみと苦しみを抱え、担い手確保の面でも大きなマイナスとなる。安全管理を徹底し、労働災害を無くすことは建設業界の命題とも言えるだろう。

 日本建設業連合会(日建連)の竹中康一安全対策本部長に、事故を無くすための安全活動方針を聞いた。

 ――建設業の労働災害の発生状況は。

 2016年の全産業での労働災害死亡事故発生件数は2年連続で1000人を下回りました。そのうち建設業の死亡者数は294人です。2015年より10%減少しており長年の目標であった300人以下を達成しました。

 ひとえに皆が安全活動を誠実に取り組んだ結果だと感じています。一方、日本建設業連合会(日建連)会員の死亡者数は土木関連16人、建築関連14人の合計30人で昨年より一人減少しました。

 災害の種類の内訳は、機械による災害が12人、墜落災害が9人となっております。特に昨年の4月には新名神高速道路の建設現場で橋桁落下事故が発生し、多数の死傷者を出す重大事故となりました。

 労働災害には至りませんでしたが、博多の地下鉄工事で大規模な道路陥没事故が発生しました。いずれの事故も一歩間違えば第三者を巻き添えにした事故になっていてもおかしくなく、大変重く受け止めています。

 ――東北復興事業での安全活動は。

 毎年国土交通省との意見交換会を実施していますが、昨年の意見交換会の直前にトンネルでの事故が立て続けに発生しました。そのため東北地方整備局から事故防止の要請がありました。それを受け、6月の災害防止対策特別活動や10月の粉じん傷害防止対策推進強化月間で特に東北地区のトンネル現場を重点的に点検しました。

 伊藤寛治安全対策本部安全委員会委員長も三陸国道工事事務所の現場を巡回するとともに、永井浩泰所長に先駆的なトンネル工事の事故防止例と、安全に対する事務所の取り組みを伺い粉じん傷害防止対策推進強化月間リーフレットで紹介するなど、全国的な水平展開をしました。

 リーフレットには、坑内粉じん傷害防止自主点検表も盛り込み、それぞれの現場の安全意識向上を図りました。本年は東北地方整備局の2017年度工事事故防止対策方針に基づき、東北支部を中心に特定現場点検を実施する予定です。

 ――本年度の安全週間での安全対策本部の取り組みは。

 〝組織で進める安全管理 みんなで取り組む安全活動 未来につなげよう安全文化〟をスローガンに全国安全週間が展開されます。この全国安全週間は1928年に始まって以来、一度も中断されることなく続けられ、90回目を迎えます。

 残念ながら今年は全産業での死傷・死亡災害が昨年度と比較して増加しております。第三次産業での他店舗展開企業などに安全担当者が不在で安全活動が低調になっていることが原因と想定されます。このような状況を踏まえ、さらなる労働災害の抑制を目的に本スローガンを決定したと聞いています。

 日建連では労働災害の撲滅を目指して、全国安全週間の準備期間である6月1日~30日を2017年度災害防止対策特別活動月間と定めました。墜落災害と重機災害の防止をメインテーマに会員各社の全国の作業所を対象として災害防止活動を実施しています。

 加えて「災害防止対策活動」と題したリーフレットを3万部ほど用意し、会員各社に配布するなどして本活動の趣旨徹底を図っています。また、日建連の支部と連携して安全委員会委員によるパトロールを土木14現場、建築8現場の計22現場巡回しています。

 ――本年度の安全対策本部の活動方針は。

 日建連の安全対策活動の基本は建設工事の施工に伴う安全・衛生の確保、建設工事に起因する公衆災害・労働災害の防止、快適な労働環境の構築に向けての現場点検の実施、優良作業所の表彰、講習会の開催、教育資料の作成を効果的に推進していくことです。

 工事量が高まり現場経験の浅い労働者の増加が懸念されていますが、新規入職者教育の徹底、作業手順書の周知会励行などきめ細やかな安全管理が浸透するように会員企業に働きかけていきます。

 東京オリンピック・パラリンピックの大会施設工事も本格化します。わたしも当大会の施設安全衛生対策協議会委員の一員として、快適で安全な建設工事のモデルとなるように安全衛生対策を徹底していきたいと思います。

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