2017年12月11日月曜日

【中堅世代】それぞれの建設業・186

担い手確保に向けた取り組みが本格化している
 ◇お金と時間惜しめば人は育たない◇

 東日本大震災からの復興や2020年東京五輪の開催決定などで建設業の事業環境は一変。ゼネコン各社は首都圏を中心に、施工体制を維持できる上限まで手持ち工事を増やし、フル稼働している。

 そうした建設現場の最前線に職人を送り込む専門工事業が担い手の確保に苦労している。四国でとび工事会社を営む井口大志さん(仮名)は、「例年5~6人、多い時は7~8人採用してきたが、今年は1人しか採れなかった」とこぼす。

 専門工事業者は元請のゼネコンに比べてネームバリューが低い。建設業に付きまとうマイナスイメージの3K(きつい・汚い・危険)も重なり、人がなかなか集まらないのが実情だ。今は多くの産業が人手不足。労働条件をてんびんに掛けられ、異業種に引き抜かれるケースも少なくない。

 井口さんの会社が手掛ける現場で働く下請の職人が、昨年、今年と1人ずつ辞めていった。職人の多くは日給制。仕事がある時は稼げるが、連休や盆・正月で休みが増える5、8、1月は稼ぎが極端に落ちる。「収入の不安定さを家族が心配し、製造業の会社に移った」という。

 待遇や労働環境を改善しないと、人は入ってこないというのが業界の共通認識。担い手確保に向けた取り組みの一つが「働き方改革」だ。社会保険加入、月給制への移行、週休2日の確保など、他産業では当たり前とされる環境の整備が本格化しており、国の施策も後押しする。

 井口さんの会社では、幹部が手分けして工業高校などを回り、就職指導の担当教員にPRする。ただ、せっかく採用できても、3年以内に辞められると、出身校からの推薦が得られなくなる。「3年間は大事にするが、丁寧に扱い過ぎると職人として物にならない」とも。入社年次が同じメンバーでつくる同期会に毎年5万円を支給している。同期の絆を深めてもらうのが狙いだ。「旅行に行こうが、ゴルフをしようが構わない。金と時間を惜しむと人は育たない」。

 協力会社が3年前、新入社員の出身校のラグビー部にボールを20個寄付した。1個5000円で全部で10万円。その効果もあったのか、次の年から1人ずつ入社が続くようになったという。

 同業者が集まるとよく話題になるのが、建設現場で働く人が事件を起こした時の新聞やテレビの報道。一般の会社員と異なり、「建設作業員」や「土木作業員」と表現される。「業界全体に対するネガティブな印象を与える。本当にやめてほしい」と意見が一致する。

 地元の警察署で、「警察は上下関係が厳しいから、若い人は入ってこないのでは」と聞くと、「応募が山ほどある」と言われた。警察を舞台にしたテレビドラマや漫画が多く、それに影響されて就職を希望する人が多いという。「建設業もそうしたイメージ戦略が必要だ。正々堂々、胸を張って土木、建築をやりたいと言える環境にしないといけない」。

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