◇体脂肪率平均以下や禁煙にも◇
首都圏で鉄道関連の杭打ち工事を手掛ける春日基礎(東京都豊島区)の齋藤貢司社長は、職人の健康を人一倍大切に考えている。年齢上昇に伴う疾病リスクの増大は否めない。そうした中でも現場作業を滞らせないよう、健康状態や禁煙に対応した手当を毎月の給料に上乗せし、健康維持や意識の醸成に役立てる。数年前に始めた取り組みの成果で禁煙者も増え、職人の意識も変わり始めている。
ヘビースモーカーだった社員の職人が心筋梗塞になったことをきっかけに齋藤社長は、「病気になれば当然本人は辛いし、家族も心配。会社にとっても現場が滞るなどの影響が出る。何とかしないと」という思いから効果的な対策を摸索した。
「仕事をするためには体が基本。健康を維持している社員に待遇で報いよう」というアイデアが浮かび、体脂肪率が平均値以下で、もともとたばこを吸わない人と自己申告で禁煙した時に手当を支給することにした。健康を維持しながら、社会にも貢献できるとして、献血時に調べる健康状態に応じた手当も用意した。
特に禁煙手当を始めてからは、たばこをやめる社員が増加するなどの効果も出ている。「医学的にはどうか分からないが、10年後、20年後と長い目で効果を見定めていきたい」と齋藤社長。中小企業向け格付けを連続で取得するなど、良好な財務内容をバックボーンに、健康に対する手当の支給はしばらく続けていきたいという。
同社は来年1月に設立50周年を迎える。社員は現在36人。齋藤社長と事務、機材担当などを除いた31人が技能工として働き、常に6~7班がどこかの現場で杭打ち工事に携わっている。
前期6億80百万円だった売上高は、連続立体交差や首都圏での相互乗り入れといった大型鉄道工事に伴い、次の決算では9億円に伸びる見込みだ。
毎年の定期採用で同社に入る新入社員は、加盟する全国基礎工事業団体連合会(全基連)や建設機械メーカーが催す外部講習会を経て現場に配属。見習いとして働きながら道具や機械の名前を覚えながら、OJT方式で現場での作業を習得していく。仕事を一通り覚えるのに現状では7~8年かかっているが、「本音を言えば、この期間をもう少し短くしたい」(齋藤社長)。
技能工は基本的に自宅から現場に出向き、仕事が終わればそのまま帰宅する直行直帰のスタイルだが、月に1度は池袋の本社に全員が集まり、安全施工のための会議を開く。全基連や建設業労働災害防止協会(建災防)から提供されるイラスト入りの事故事例集などを見ながら、どうすれば事故を防げるかを全員でディスカッションする。
仕事に必要な各種資格の取得費用はすべて会社持ち。今後、「2級土木技術検定の取得を必須とし、1級土木を職長になる条件にしようと思っている」と齋藤社長。現場でゼネコンの技術者とできるだけ対等な立場で話をするためにも、資格取得が重要になると考えている。
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