2017年12月26日火曜日

【記者手帖】治水工事が結んだ縁

鹿児島県などが進める鹿児島城(鶴丸城、鹿児島市)の大手門「御楼門」の復元に使う樹齢300年を超す岐阜県産ケヤキが10月、同県から贈られた。両県では宝暦治水を縁に姉妹県盟約を結んでおり、木材確保が課題となっていることを知った岐阜県側が官民のプロジェクトで提供した◆宝暦治水は木曽川、長良川、揖斐川の木曽三川の治水工事。江戸幕府が薩摩藩に命じた難工事で、約1000人の藩士が従事し、着工から約1年半後の1755年春に完了。同藩は八十数人に及ぶ犠牲者を出し、現在の金額で300億円以上の多額の出費を強いられたという◆工事で完成した堤防により洪水に苦しむことが少なくなった岐阜県では、薩摩藩士を「薩摩義士」と呼んで感謝した。海津市には工事の総奉行を務め工事完了後に自害したとされる家老の平田靱負を祭る治水神社が建てられ、命日には慰霊祭も行われる◆治水事業が結んだ縁で城下町鹿児島のシンボルだった御楼門がよみがえる。義士たちも心待ちにしているのではないか。新たな御楼門は20年3月の完成を予定している。(松)

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