工芸の世界で、東の芸大(東京芸術大学)に対して西の「京芸」と呼ばれる京都市立芸術大学で学んだ人は独創的な作品を生み出すといわれる▼そうした校風に影響を与えたのが陶芸家の富本憲吉。京芸で陶芸を指導した富本は東京芸大の建築学科出身で、卒業後は清水組(現清水建設)に入社したが、建築だけでは飽きたらず、陶芸家に転身した▼建築を学んだだけに優れた意匠家でもあった富本は「模様から模様をつくらず」を信条とし、過去の伝統的な作品の模様を使うことをせず、独創性を追求。時間を見つけては野に足を運び、スケッチを繰り返す中でデザインを練り上げた▼作品のオリジナリティーが問われるのは、アイデアと知恵を売り物にする建築設計事務所も同じ。丹下健三氏は生前、「多くの人々と会い、多くのものを見なさい」と所員に外に出るよう諭していたそうだ▼建築設計各社が、ICT(情報通信技術)や人工知能(AI)を業務に活用してクリエーティブな時間を創出する取り組みに本腰を入れている。本来の仕事である知的生産に力を振り向ける環境をどうつくるか。これも知恵比べである。
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