2018年2月2日金曜日

【街なか型と郊外型を比較検討】モンテディオ新スタジアム、整備実現へモデルスタディー取りまとめ

 アビームコンサルティングは、サッカーJリーグ・モンテディオ山形の新本拠地となるスタジアム整備でモデルスタディーをまとめた。Jリーグのクラブライセンス基準を満たすサッカースタジアムを街なかと郊外に新設するケースを想定。スタジアムが備える機能と役割、周辺地域との連携、街づくりの方向性などを具体的に検証した。

 モンテディオ山形の新スタジアム整備では、昨年9月に地元企業らが出資し新スタジアム推進事業会社を設立。3月までに資本金を増資し、4月から基本計画の策定に着手する方針を明らかにしている。

 モデルスタディーは、全席屋根付きの1万5000人収容スタジアムを街なかに整備するケース(街なか型)と、可動式屋根を備えた2万人収容のスタジアムを郊外に整備するケース(郊外型)で建設費を試算。収益向上に向けた取り組み、街なか型と郊外型の収益構造の違いを検証し、事業スキームや経済効果なども推計した。

モデルスタディーで想定した街なか型スタジアムの外観イメージ
(経産省事業報告書より)
  街なか型のスタジアムは、施設が持つ広域的な集客力を生かし、「人を集めるための起爆剤としてスタジアムを位置付ける」とした。既存の市街地や施設、公共交通機関などと連携・連動した〝まちのトータルプロデュース〟を進めることで、にぎわいを再生しスタジアム整備の効果を波及させる。サッカーなどのスポーツに加え、ライブやコンベンションなど多目的に施設を使用し稼働率を向上。イベント広場に面したスタジアムの1階部分に商業、業務機能が入る複合施設とし、365日人が集う機能を持たせる。稼働率を高める方策として、天然芝のフィールド上に可動スクリーンと仮設舞台を設置する案などを提案している。

 一方、郊外型のスタジアムは「スポーツを通じてまちと暮らしの魅力づくりを進める」というコンセプトを設定。地方自治体の厳しい財政状況を背景に効率的な施設運営が求められている状況を踏まえ、低コストな整備と運営を前提条件にした。
モデルスタディーで想定した郊外型スタジアムの外観イメージ
(経産省事業報告書より)
既存の広場や公園の隣接地を候補地とし、プロスポーツ開催日以外にも来訪者があるよう、広場・公園や既存施設と融合した施設配置を行う。自動車でのアクセスを想定し広い駐車場を確保すると共に、地域交通の利便性向上を兼ねバスターミナル機能も配置する。冬場のスポーツニーズに対応しながら施設の稼働率を上げるため、フィールドを覆う屋根を設置。芝への日照確保などの観点から屋根は回転型開閉式とした。

 事業スキームでは、山形県の経済基盤などを踏まえ民間による建設費の調達は困難と推測。過大な投資を避け、持続可能な運営を実現するには設計・建設段階から民間事業者が参画し、スキームを深掘りする必要があると指摘した。持続可能なスタジアムの実現には建設コストの低減が不可欠だとし、1席当たりの建設コストは50万円以下に抑えることを想定した。
街なか型スタジアムのスタンド活用イメージ
(経産省事業報告書より)
モデルスタディーで挙げた条件を満たすスタジアムの総工費試算は、全席を覆う非可動屋根の街なか型で64・9億円(1席当たり43・3万円)。郊外型は可動式屋根で91・6億円(45・8万円)。全席を屋根で覆う非可動屋根の郊外型は64・4億円(32・2万円)とした。

 街なか型はメインスタンドだけを利用した興行開催設備を事前に備えることで、5000人規模のコンサートなどが芝を傷めずに開催でき、飲食店やビジターセンターなどの運営と併せて収益向上につながると提案。郊外型は可動屋根の設置によってシーズンオフのコンベンション利用やコンサート開催などが可能で、スパやフィットネス施設などのテナント収入と併せて収益確保を図るとしている。

 新スタジアムの経済効果は、スタジアム建設の新規需要(直接的投資)で約64・9億~91・6億円と推計。波及効果を含めた生産誘発効果は89・7億~129・7億円と見積もった。建設・運営による10年間の総需要はスタジアム関連支出、施設運営維持需要、サービス提供などを合計し214億~255・9億円を見込んでいる。
郊外型スタジアムの内部イメージ
(経産省事業報告書より)
モデルスタディーでは、興行収益の確保を考えた場合、主要な施設利用者であるモンテディオ山形の集客力を強化する必要があると指摘。クラブの集客力が高まれば広告料やテナント料のアップなどが見込め、収益全体の底上げにつながるとしている。

 このモデルスタディーは、経済産業省の16年度「魅力あるスタジアム・アリーナを核としたまちづくりに関する計画策定等事業」として実施し、報告書をまとめた。

0 コメント :

コメントを投稿