2018年2月19日月曜日

【中堅世代】それぞれの建設業・191

危機意識の持続が防災力の向上につながる
 ◇迷い消え信念を貫く覚悟◇

 地域を支える社会インフラを自らの手で守りたい-。中部圏の沿岸地域で生まれ育った堀田誠二さん(仮名)は、幼いころから巨大地震や津波といった自然災害の恐ろしさを聞かされてきた。年齢を重ねるにつれ、未知の災害への恐怖よりも、災害から故郷を守りたいという気持ちが強まった。

 将来は技術者としてインフラ関連の仕事に就こうと考え、大学では土木学科を専攻。その思いは、在学中に発生した東日本大震災によって揺るぎないものとなった。

 三陸を中心とした太平洋沿岸では、地震に伴う津波被害が繰り返し発生してきた。そうした過去からの経験を踏まえ、防波堤や防潮堤などのハード整備はもちろん、地震発生後の避難誘導や情報発信などソフト面の防災対策も積極的に進められた。

 にもかかわらず、岩手・宮城・福島の東北3県を中心に多くの人命が奪われ、建物や社会インフラは壊滅的な被害を受けた。1000年に1度ともいわれる巨大津波が相手とはいえ、これまでの人々の努力は何だったのか。むなしさを感じる一方で、自然が起こしたあまりに無慈悲な行為に対する怒りで体が震えた。

 大学卒業後は地元の中部圏を中心に鉄道事業を展開する会社に就職。子どものころから利用している鉄道の耐震改修などに携わる。東日本大震災後、中部から関西方面へと連なる南海トラフの大規模地震に対する危機感が一気に高まり、社内では構造物の耐震性能の強化が急ピッチで進められた。

 一方で、防災・減災対策が重点的に進められた東北沿岸部の惨事を目の当たりにすると、どこまで対策を施せばいいのかと不安も残る。会社側も無尽蔵には投資できず、ハード整備にも限界がある。

 自分の仕事に迷いを感じていた時、堀田さんは昨年から本社の管理部門に勤務。若手については職種を固定せず、さまざまな職場を経験させるという会社の育成方針に基づく異動だ。

 これまでの現場中心の仕事と異なり、鉄道を利用する人たちとの接点が多い職場に戸惑いながらも、これまでと違ったやりがいを感じている。ハード整備とは違った形で、利用者の安心・安全を確保するソフト面への関わりも深めたいと考えるようになった。

 東日本大震災から7年が過ぎ去ろうとする中、災害への危機意識の希薄化が進んでいるように感じる。大地震や豪雨、噴火、大雪など、さまざまな自然災害が頻発し、悪い意味で国民が「災害慣れ」していると思うことも。

 危機感を持続させ、継続的な防災対策の必要性を啓発する活動もインフラ関連企業が果たすべき重要な役割だと認識している。

 昨年結婚した堀田さんは、夏に父親となる予定。家族の将来を思い描いた時、迷いは消え去り、家族や故郷を災害から守り抜くという信念を貫く覚悟が定まった。まだ見ぬわが子のためにも、災害に強い社会づくりにまい進する。

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