JR東日本は、東京都港区の品川~田町駅間で山手、京浜東北両線の「(仮称)品川新駅」整備を進めている。
山手線に新駅が誕生するのは1971年開業の西日暮里駅以来、半世紀ぶりだ。暫定開業は2020年東京五輪の開催直前。国内外に「日本らしさ」をアピールする駅舎にしようと膜屋根や木材などを採用する。線路に囲まれた施工上の制約がある場所で、資機材の運搬などに工夫を凝らしながら作業に取り組んでいる。
◇2020年春の暫定開業めざす、新たな街も一体開発◇
新駅の建設地は品川駅北側に広がる品川車両基地跡地(東京都港区、約13ヘクタール)。「JR東日本が挑戦する新たな街づくりの目玉の一つ」(JR東日本総合企画本部品川・大規模開発部の山田眞左和担当部長)に位置付け、新駅整備と車両基地跡地の開発を一体的に推進している。跡地では新駅の整備と並行し、都市再生機構の施行で土地区画整理事業が行われている。
新駅の完成イメージ(提供JR東日本) |
新駅のシンボルとなるのは「折り紙」をモチーフとした大屋根(4000平方メートル)だ。厚さ0・8ミリの透過性が高い白い膜屋根を採用。それを支える鉄骨の小梁には集成材で仕上げを施し、「障子」から柔らかな光が差し込む様子を表現した。
デザインアーキテクトを担当した隈研吾氏は「20世紀の駅舎はコンクリートでできているが、これからは木が主役となる」と持論を展開。新駅の駅舎に木材を多用し、新時代にふさわしい姿を表現しようとしている。
木目柄のアルミパネル。 間近で見ても木材との違いが分かりにくい |
新駅に使用する木材の大半は、大屋根の小梁にあしらう集成材(福島県古殿町産)に充てる。小梁以外にも、内壁や柱などに木材を取り入れる。雨掛かりがある外壁部分は、木目柄のプリントを施したアルミパネルを取り付け、外観からも木材利用を印象付ける。
施工段階では、デザイン性の高い設計を形にする上で必要となる工夫や、敷地条件による制約などへの対応に、労苦を惜しまず作業を進めている。
折り紙のようにところどころ折り上げられる繊細なデザインの大屋根は、それを支える鉄骨の形状も複雑だ。JR東日本東京工事事務所品川工事区の藤井裕区長は「3次元(3D)の測量機器を使用することで、鉄骨を精度良く建てられた」と振り返る。
建設地は営業中の鉄道路線に囲まれているため、資機材の運搬に腐心しているという。昼間は敷地内を通る地下道を搬入・出路としているが、地下道を通せない大規模な資機材は、鉄道が営業を終了した夜間に国道15号(第一京浜)側から線路を渡って建設現場まで運び込んでいる。
線路上も架線による高さ制限があるため、「部材を極力小分けにした。積み方一つで高さが変わるため、トレーラーへの積載時も配置を綿密に計画している」と藤井区長。現場の最盛期(17年夏~18年春ごろ)に3台が稼働していた350トンの大型クレーンも複数の部品に分解して、夜間に運搬した。
このほか、工事の品質確保などを目的に溶接ロボットを導入した。施工条件の厳しい場所でもロボットが鉄骨の溶接作業を行うことで、安定的に品質を確保することができた。
幕屋根と小梁のモックアップ。 H鋼の窪みに集成材を装着する |
設計はJR東日本、JR東日本コンサルタンツ・ジェイアール東日本建築設計事務所JVが担当。駅舎のデザインアーキテクトは隈研吾建築都市設計事務所が務めた。施工は大林組・鉄建建設JVが手掛けている。
新駅と一体的に展開する車両基地跡地の開発では敷地を6街区に分け、総延べ床面積約100万平方メートルの施設群を整備する方針。山田担当部長(写真㊨)は「これからの国際社会に十分受け入れてもらえる街づくりをしたい」と語る。新駅との調和を図り、「新しい日本らしさを感じられる街にしていきたい」という。総事業費は約5000億円(新駅総工費除く)を見込む。
既に北側の1~4街区(約6・9ヘクタール)では総延べ85・5万平方メートル規模の施設群を開発する計画案を示している。19年度の着工、24年度の竣工・供用開始を目指す。
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