前田建設は25日、高機能繊維を活用した木造建築用集成材「AFRW」を、建築物の構造材として実用化する世界初のプロジェクトを帝人と共同実施すると発表した。
AFRWは帝人が15年に開発した炭素繊維などの高機能繊維で補強した集成材。鉄骨並みの強度を持ち、既に日本建築センターによる材料評定、国土交通大臣認定を取得している。実用初弾として帝人東京研究センター(東京都日野市)にオフィスを新設する。10月に着工し、本年度末の竣工を目指す。
前田建設は、木のぬくもりが作り出す快適性、木材利用の促進による林業や地域社会の活性化、地球温暖化防止への効果などの観点から建築材料としての木材に着目。帝人が開発した木の良さを残しながら鉄骨並みの強さを持ち、軽くて加工もしやすいAFRWの実用化に乗りだすことを決めた。
AFRWは、従来の集成材の両端部にアラミド繊維・炭素繊維強化複合材を張り合わせて製造する。木材の3倍以上の曲げ剛性(鉄骨並み)を持つ。梁を構築する場合には木材の使用量がこれまでの3分の1程度で済む。従来の集成材に比べ軽く、梁せい(断面積)を小さくできる。ロングスパンでの使用も可能になり、建物の意匠性も向上する。
初弾プロジェクトは、国土交通省の「17年度サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)」として実施。両社は来館者に「今までの枠を超えた強い木」を体験してもらうため、これまでの木造では難しかった居室空間を本体から宙に浮かせて5メートルもせり出すオーバーハングの事務所棟(RC一部木造平屋180平方メートル)を建設する。木のぬくもりや心地よさはそのままに、強度を生かして開放性に富んだ自由度の高い空間を創り出す。折半屋根の鉄骨造で建物を構築する場合に比べ建物過重は2~3割減るという。
両社は今後、実際の使用状況下での居住性やAFRWの接着安定性、振動時の耐久性の検証を7年にわたって行い、実践的な知見を蓄積するとともに、20年ごろに一般建築物への実用化を目指す。
政令指定都市を中心に木材使用の建物への容積率のかさ上げを検討する自治体が増えつつある。両社は市場の拡大が見込まれる都市型木造建築物に活用範囲を広げられるよう、研究開発を加速する。
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